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(飯野と橋本はこの体格差。それでも堂々たる試合ぶりで橋本が勝利)

 DDTの6.24新木場1st RING大会は、全5試合すべてが男子選手と女子選手の対戦だった。竹下幸之介率いるDDTのユニットALL OUTとセンダイガールズプロレスリング(仙女)の“全面対抗戦”だ。

 第1試合が彰人vs助っ人参戦の旧姓・広田さくら。第2試合は勝俣瞬馬vsDASH・チサコのハードコアマッチ。さらに飯野勇貴vs橋本千紘、竹下幸之介vs里村明衣子と続く。休憩明けのメインイベントは、竹下&勝俣&飯野vs里村&橋本&チサコのKO-D6人タッグ選手権だった。チャンピオンは仙女組。3月21日のDDT後楽園ホール大会で、竹下&彰人&飯野に勝ち、戴冠している。

 “女子プロレス界の横綱”里村は海外で男子団体のベルトを巻き、日本でもDDTでシングルの頂点KO-D無差別級王座を奪取するという快挙を成し遂げた。飯伏幸太やケニー・オメガといった名前も並ぶ歴代王者リストに「里村明衣子」と刻まれたのだ。

 そうした流れの中で決まったのが、この対抗戦興行だった。試合結果を先に記すと、2勝2敗1分のイーブン。メインではALL OUTがベルト奪還に成功したが、休憩前のシングルマッチでは仙女が2勝1敗1分と勝ち越している。

 第1試合は彰人が勝ったが、内容は広田テイスト全開のコミカルマッチ。第2試合はハードコアスタイルに一日の長があるチサコが、イスやラダーを使った攻撃を立て続けに浴びせて3カウントを奪った。橋本は3月に続き飯野を必殺技オブライト(ジャーマンスープレックスホールド)で下した。158cm、84kgの橋本が178cm、120kgの飯野を投げ切ってしまうのだから驚くしかない。

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(竹下に強烈な蹴りを叩き込む里村)

 竹下vs里村のトップ対決は20分時間切れ引き分け。里村は場外テーブルへのデスバレーボムを決め、タイムアップ間際にはオリジナル技スコーピオライジングをヒットさせた。印象を言えば「まったくの互角」だった。

 第2試合からセミまで「休憩を挟んだとはいえ万全の状態でメインができるのか?」と思わせるほどのタフな内容。男女対決で女子選手が勝つ(男子が勝てない)という結果も不自然には感じなかった。チサコはハードコアというルールを活かし、橋本には絶対的な決め技があった。里村のキャリアと闘志、鋭い打撃は言うまでもない。

 もちろん、体格で劣る仙女勢が不利なのは間違いない。男子との闘いは、普段の試合とダメージの度合いがまるで違うという。にもかからわず、仙女勢はあくまで堂々としていた。“弱い者が必死で立ち向かう”という図式ではなかったのである。

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(チサコはハードコアマッチで勝俣に勝利)

 メインのタイトルマッチは、タッグ戦を得意とするチサコの機動力が発揮されたこともあり、最後の最後まで勝負の行方が読めない熱闘となった。勝ったのは竹下。里村に強烈な打撃を叩き込み、最後はジャーマンでALL OUTにベルトを取り戻した。

 大きいほう、パワーのあるほうが勝ったのだから当然といえば当然の結果なのだが、そう見えなかったのが印象深い。「竹下勝った、凄え!」と思わせるような内容だったのだ。「里村から大金星」。そんな雰囲気すらあった。

 それだけ仙女の選手たちが“強さ”を見せたし、ALL OUTのメンバーもナメた素振りをまったく見せなかった。あくまで真っ向からの全力勝負だったのだ。6人タッグ王座を奪われた3月、竹下はこう語っている。

「人として、哺乳類として向こうが強かった」

 さらに今回の試合前のコメントも紹介しよう。

「もう男vs女というレベルじゃない。単純にどっちが強いか、それだけです」

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(メインではALL OUTが王座奪還。ダメージの少ない彰人があえて出場せず、シングルで負けた飯野と勝俣の「悔しさ」をパワーにかえ)

 KO-Dシングル王座を獲得した時には「世の中の女性たち、もう我慢する時代は終わったんだよ! 私はこれから男でも女でも対等に勝負してやる」とメッセージを発した里村。しかし今回の試合を終えると「もう女だから男だからというのは取り払われてる」という言葉を残した。

 プロレスは時代を反映するスポーツ・エンターテインメントだ。現実の世の中を凝縮して見せる寓話のような面がある。この日、試合を行なった選手たちは、その力量で“男と女が対等に闘う→女も男もなく同じ土俵で競い合う”というドラマを描き出した。

 竹下曰く「これで勝ったとは思ってないし、どっちが強いかといったら、ちょっと分からない」。また興行全体について「今の世間と闘った。かなり勝負に出た数時間でした」とも。物心がつく前からのプロレスファンだという竹下は“プロレスというジャンルならこういう勝負ができる”と信じていたのだろう。

 「これがプロレスの可能性」だと竹下は言った。「次はもっといける」とは里村の言葉。新木場という小さな会場での闘いだったが、年間ベスト興行の一つに数えられるはずだ。

文・橋本宗洋

写真/DDTプロレスリング

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