(7月9日の記者会見での両者。舌戦も乱闘もなかったからこそ試合にかける思いが伝わってきた)
7月15日、DDTが大田区総合体育館でビッグマッチを開催する。初開催となる全席無料大会だ。チケット応募の条件となるのは映像配信サービスでありファンクラブ機能を兼ねるDDT UNIVERSEの会員であること(無料会員も可)。つまりファン層拡大を狙うとするイベントだ。生観戦は初めてという新規ファンもいるだろう。
そういう大会でメインを張るのは、DDTを代表して闘うということ。団体の頂点であるKO-D無差別級タイトルをかけ、王者・遠藤哲哉と竹下幸之介が対戦する。
遠藤は27歳、竹下は24歳。DDTの新時代を担うエース対決と言っていい。かつてはタッグ王座を保持していたこともある2人。竹下が王者だった2年前には後楽園ホールで60分フルタイムドローの激闘を展開している。同じ年の8月には両国国技館大会メインでの闘いもあった。
今回は両者ともさらに成長しての激突となる。実績では過去3度戴冠、最多防衛記録も持つ竹下が上回っているが、今回は遠藤がチャンピオンだ。
常に竹下の背中を追う形だった遠藤は、立場を変えての王座戦を「偶然ではなく必
然」と表現した。「俺がチャンピオンで竹下幸之介を迎え撃つというシチュエーションは、遅かれ早かれどこかでやる必要があった」とも。
感慨深い大事な闘いだからこそ、挑発や舌戦なしで当日に臨もうとしているようだ。7月9日の会見で、遠藤は言った。
「トーナメントで竹下が勝ち上がってきた時は、正直またコイツかと思ったんですが、今は心穏やかに過ごしてます。何回も試合してるけど、お互いまだ見せてない手があるはず。そこが勝負のポイントになる」
王座奪還を狙う竹下は、この対戦カードに絶対の自信を持っているという。曰く、竹下vs遠藤は世界に誇るカード。
「次元の違う闘いがしたい。プロレス界全体で見ても別格だなという試合をするつもりです」
激しさ、技巧、あるいは笑いも含め、ありとあらゆる面で一級品であることを示し続けてきたのが竹下だ。投げ技(ジャーマン)、飛び技(ファブル)、グラウンド(カバージョ2020)とフィニッシュも多彩。里村明衣子率いるセンダイガールズとの“男女対抗戦”ではプロレスの可能性を広げる闘いを見せた。
遠藤は遠藤で、これまでの王座戦線とは一味違う挑戦者との防衛戦を重ね、DDTに新たな刺激をもたらしている。直近の防衛は「プールプロレス」での高木三四郎戦だ。
共通するのは、ベルトの価値は選手が決めるという考え。竹下はDDTのトップ、実力ナンバー1が自分だというイメージが定着しているのを感じており、だからこそベルトという“形”を欲しているようだ。遠藤は竹下に勝つことで“チャンピオン・遠藤哲哉”の価値をさらに高めたいところ。挑戦者は竹下だが、遠藤にとって“竹下超え”は王者としての地位を固めるための重要な一歩だ。
下半期のDDTの“軸”を決めるタイトルマッチ。どちらが勝っても“これぞDDT”という闘いになるのは間違いない。
「飯伏幸太やケニー・オメガがいた頃はDDT見てたけど」
「男色ディーノなら知ってる」
そういう人にこそ、この一戦を見てほしい。
文・橋本宗洋