いよいよ21日に投開票が行われる参院選。AbemaTVでは『アベマ選挙SP~民主主義オワコン危機(クライシス)~』と題する選挙特番を生放送、Twitterで募集した"ギリギリを攻める踏み込んだ質問"を番組MCの乙武洋匡氏らが政党幹部・政治家に投げかける試みを企画している。そこで今回、『AbemaPrime』番組レギュラーで、自身も選挙特番のMCを務めた経験のあるジャーナリストの堀潤氏に、「 #政治家に聞きたいギリギリな質問」の案を尋ねてみた。
献金をした人や団体から具体的にどういうお話をされて、そしてどう応えたのかを聞いてみたいですよね。政治資金収支報告書には、献金をした団体や個人などの名前やその額が記載されていて、調べようと思えば調べられます。それを元に、「当選おめでとうございます、まずお伺いします、直近の献金の一覧を用意しました、特に額の大きかったこの団体からは、ロビー活動の際にどういう要望を受けて、それにどう応えようとしたんですか?制度化できましたか?今後は、どういう人たちに支援してほしいですか」と。そういう話をするのはどうでしょうか。いわば"政治資金収支報告書から考える議員評価"。でも、公開されている情報に基づくものなので、ギリギリでもなんでもないんですけどね(笑)。
僕もテレビ番組で聞いてみたことがあります。例えばあるベテラン政治家の場合、旅館業などの業界団体からの政治献金があったことがわかりました。これに関連して、どのような働きかけや要請があり、そこにどう答えようとしたのかということで、「今、僕の手元に一覧があるんですけど、やっぱりインバウンド需要の高まりなどを受けて、リクエストがありましたか?」と。嫌な顔をされていましたけどね(笑)。
でも、これは不祥事を暴きたいというような目的ではなくて、政治家の活動には資金がどのくらい必要で、要望がどのように政策に結びついていくのか、ファクトを元にして当てていくことで、どのようにして政治というものが動いているのかを明らかにしたかった。業界団体の関係者はもちろん、一票を投じた有権者だって知りたいと思うでしょうし、政治家がちゃんと仕事をしているということがわかれば、自分たちと政治との近さだって感じてもらえるのではないかと思うからです。
僕たちは「民主主義」と聞くと、どこかキラキラしたものをイメージするかもしれないけれど、もとを正せば王様に一方的に管理され、上がりを持っていかれることが嫌だと感じていた商工業者などの市民による革命という側面があったはずです。議会を整備することで、きちんとした話し合いによって再分配、利益誘導を決めていこうぜ、と。
だから投票率の低さに代表される「政治的無関心」というのは、自分の身の回りに特に問題は起きていないと感じていることの裏返しでもあると思います。でも将来、何か実現したいことが出てきたり、自分の生活や職業などについて行政にサポートしてほしいと思ったりすることもあるでしょう。そのためには政治を動かさないといけない、代表者を議会に送り込まないといけないとなれば、当然、その中ではお金の支援だって必要になってきますよね。
アメリカでも、オバマ大統領を動かしたのは個人の少額の献金でした。"私は寄付した、だからオバマはやるべきだ"と。だから、政治資金そのものは責められるようなものでは全くない。政治家にとってはそれが活動資金になるわけですからね。みなさんだってクラウドファンディングで支援するようになったじゃないですか。寄付してくれた人に答えるのはあたりまえ。悪いことではなんでもない。
ただ、日本では情報公開の整備がまだまだです。インターネット上にアップされているのもPDFファイルだったりするので、ちゃんと検索できるようにデータベース化されていればいいのですが。知人がGoogleのコンテストに応募し、資金援助を受けてデータベース化を試みましたが、やっぱり入力や確認作業に手間とお金がかかりますし、継続させるのが難しい。僕がおすすめしたいのはネット企業の経営者の方々なども賛同して立ち上がった『RapportJapan(ラポール・ジャパン)』という政治資金情報サイトです。ここに政治家の名前を入力してみると、僕が質問した政治家の情報もすぐに出てきました。
当事者が自ら語ろうとはしないし聞く人もいなし。メディアも不祥事などが無い限り深掘りはしない。だから公表もされているけれど、未だにアクセスが悪い。どうしてもスキャンダルの文脈でばかり使われてしまうので、「政治資金収支報告書」と聞くだけで後ろ向きなことを想像してしまう。政治家の側も責められると思ってビビってしまう。そうではないんですよね。政治資金収支報告書を通して、政治家の実像を理解してみませんか、ということです。