将棋界の第一人者・羽生善治九段(48)が、思わぬところでまた視聴者の度肝を抜いた。自身がオリジナルルールを着想した超早指し棋戦「AbemaTVトーナメント」の準決勝・決勝で解説を務めると、分かりやすいだけでなく、予言者のように次の指し手を言い当てる様子が繰り返され、思わず視聴者から「すごすぎる」「先が見えすぎ」「録画を見てるの?」といった言葉が大量に寄せられた。若きころから「羽生マジック」と呼ばれる妙手でファンを喜ばせてきたが、解説をしてもやはり超一流だった。
羽生九段は、通算タイトル数99期から分かるように、将棋界で最も忙しい棋士として、長年過ごしてきた。そのため対局の解説を務めることはまれ。同棋戦の準決勝では、藤井聡太七段(17)の対局を、初めて解説した。もちろん超一流の指し手であれば、今をときめく天才棋士の手を読めても不思議はないが、同棋戦は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算、1局あたり約20分で終わるという超早指し棋戦。指す方も大変なら、それを見て、解説するのも至難。ところが、これをあっさりと、しかも想像をはるかに上回るレベルで説明するのだから、すさまじい。
羽生九段は、準決勝の木村一基九段(46)と藤井七段、決勝の糸谷哲郎八段(30)と藤井七段、それぞれ三番勝負のフルセット、計6局を解説した。時折、まさに数秒単位で指し手が進む場合もあり、駒が飛び交うような瞬間もあるほどだ。それでも羽生九段は「そうですね」「ああ、これは…」と、穏やかな口調で次の一手やその後の展開し、さらには詰み筋まで的確に解説。視聴者からすれば、もはや目で追うだけでも大変な指し手の応酬を、さも平然と「こうなりますよ」と説明されれば、それが未来を言い当てる予言者のように見えても不思議ではない。
解説を終えた後に感想を聞くと、こういう答えが帰ってきた。
見ている分には非常に気楽というか(笑)テンポよく指し手が進んでいくので、そういう意味でもスピーディーな感もありました。将棋ってすごくダイナミックに局面が動くんですけど、早指しだと特に如実に現れる。大きな技がかかるケースも多い。そこがおもしろいところかなと思いました。
涼やかに語った羽生九段、やはり超トップクラス、第一人者である。
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