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(男子選手とも対戦するなど着実に経験値を上げている白川。新設されるタイトルは女子王座以外も狙っていくという)

 肉体美を競うコンテスト「ベストボディジャパン」が運営するプロレス団体「ベストボディジャパンプロレス」(BBW)が、旗揚げ1周年を迎える。旗揚げは昨年8月5日。今年9月1日に新宿FACEで1周年記念大会を開催する。それに先立つ8月9日の新木場1st RING大会は前哨戦という位置付けだ。

 1周年にあたり、BBWはタイトルを制定。シングル王座「BBW無差別級」、個性ある体型の選手が争う「世界スーパーボディ級」、タッグ王座と女子王座も作られ、8.9新木場で選手選考、9.1新宿でタイトルマッチとなる。

 BBW旗揚げ戦でデビューした白川未奈となべやかんは、もうすぐキャリア1年。白川はグラビア、やかんはお笑いの世界からの挑戦だが、しっかり時間をかけて練習を積んでからのデビューだった。

 “闘魂Hカップグラドル”のキャッチフレーズを持つ白川はもともとプロレスファン。選手をリスペクトしているから、プロレスデビューにも慎重だった。しかし一大決心してリングに飛び込むと、ファン時代よりもプロレスが好きになったという。今は生活の中でプロレスが最優先。ウェイトトレーニングに加えブラジリアン柔術の練習も始め、その真摯な姿勢と成長ぶりは主戦場の一つ、東京女子プロレスのファンも認めるところだ。

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(7月29日の記者会見でプロレスへの思いを語ったやかんと白川)

 8.9新木場では、デビュー戦の山中絵里奈と対戦。勝てば田村依里子vs竹林早苗の勝者との初代女子王座決定戦が待っている。かつて自分が味わったように「プロレスの厳しさを相手に打ち込む闘いがしたい。そのためには100%で臨みます」と語っている。

 芸能界入りして6年、プロレスを始めてからの日々が「一番刺激的で楽しくて充実していました」と白川。

「グラビアでは“きれい”とか“かわいい”というのが褒め言葉。でもプロレスでは“感動した”と言ってもらえて。私の試合で涙を流してくれる人がいる。アメリカで試合できる選手になりたいとか“あの人に勝ちたい”、ベルトを獲りたいというきっちりした目標ができたし、それに近づく努力をするのが楽しいんです」

 いわゆる“タレントのプロレス挑戦”が他のレスラー、プロレスファンからどんな目で見られるかも充分に分かっている。

「僕たちは芸能界から入って、本職のレスラーにはふざけんなと思ってる人も多いと思います。そんな中でも“あいつらはいい”と言われるような選手になりたい」(やかん)

 白川はネットの声も無視するつもりはない。

「私のプロレスの記事がネットニュースに載ったら、コメントも全部見てます。“受け身の練習ちゃんとやれ”とか、おっぱいの話ばっかりされたりとか。正直ふざけんなと思ってます。しっかりしたプロレスを見せて、ベルトも巻きたい」

 BBWは旗揚げ時からDDTの協力を受けており、最初はひたすら基礎体力と受身の練習。本格的な技を教わったのはデビューが決まってからだったそうだ。デビュー後も苦しい試合を経験。特にやかんは格上の強豪レスラーと対戦することが多かった。

 真剣にプロレスに取り組んできたからこそ、ベルトへの気持ちも強くなる。白川は前回の試合後に「ベストボディジャパンプロレスをもっと盛り上げたいし、特に女子を盛り上げたい。現状はちょっとモヤモヤします」と語っており、マッチメイクにテーマを欲していた。タイトルマッチで同日デビューの田村にリベンジすれば、名実ともにBBW女子のトップに立つことになる。

「今は筋トレがブームだし、ベストボディジャパンのコンテストも人気がある。でもベストボディジャパンプロレスについては、まだ説明が必要な段階で。そこでプロレスファンに向けての架け橋になれるのは私だと思います」

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(身長156cmのやかんだがパワーリフティングで日本一になっただけに対戦相手を軽々と持ち上げる力も)

 一方、常に強豪との対戦でいまだ自力勝利なし、それでも団体のエースと期待されるやかんは、“プロレスラー”としての1年をこう振り返る。

「辛い1年でしたね(苦笑)。僕は学生時代からラグビーをやってまして、まあ暴力もあるような時代の部活でした。そこからたけし軍団に入って、さらに激しい暴力とパワハラの世界。そこからプロレスですよ」

 プロレス入りする前から、ガンバルマンなどでマット界のレジェンドたちと“対戦”してきた。その経験からついた度胸が武器になっている面もあるだろう。

「キツかった相手は……やっぱり(アーネスト・)ホーストですか。あとエンセン井上、佐山聡さん。一番はニシキヘビですかね。蛇の関節を極めるっていう企画で。まあ蛇に比べたら人間は毒がないですから。ただプロレスラーは毒をもってなくてもパワーがあるし技が理詰めなんですよね。“こうすれば人を殺せる”という技があるんです。とんでもない世界に入ったなと思ってます」

 芸人らしいコメントでありつつ、プロレスの凄さを体感した者だからこその言葉だ。

 BBWをいかに定着させていくか。その課題に取り組むのも2人の役割だ。やかんと白川の本気を伝えていくことが、団体としても重要になってくる。

文・橋本宗洋

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