DDT、今年3度目の都内でのビッグマッチは、11月3日に両国国技館で開催される。

『ULTIMATE PARTY 2019』と題されたこの大会には、DDTだけでなくガンバレ☆プロレス東京女子プロレス、プロレスリングBASARAとDDTグループの全ブランドが参加。出場選手81名という超特大ボリュームだ。

 これまで高木三四郎(DDT社長)vs木高イサミ(BASARA代表)のシングルマッチが発表されていたが、8月25日のDDT後楽園ホール大会でインパクト絶大な追加カードがアナウンスされた。

 そのカードとは「山下実優&アントーニオ本多vs里歩vsケニー・オメガ」。新日本プロレスでの活躍を経て超ビッグネームになったケニーの、丸5年ぶりのDDTマット登場だ。

 現在、ケニーは新日本を離れアメリカの新団体AEWに所属。団体の副社長も務めている。そのAEWにはケニーの親友であるDDTの中澤マイケルがフロント入り。東京女子プロレスの選手も出場するなど交流が生まれていた。

 そんなタイミングで実現した、今回のケニー参戦。もともとケニーが初めて出場した日本の団体がDDTであり、いわば古巣復帰だ。後楽園のスクリーンでケニー登場が告げられると、観客から凄まじい大歓声が起こった。

 新日本での“ベストバウト・マシーン”ぶりに慣れ親しんだファンにとっては、今回のカードは意外なものだったかもしれない。アントンことアントーニオ本多は、普段コミカルな試合を担当することの多い選手。しかも男女ミックスマッチである。普通に考えて“異色カード”だ。

 しかし、これはケニー自身の希望で決まったカードだという。ケニーはツイッターで、アントンを「最大のライバルの1人」だと書いている。大社長・高木はこんなコメントも。

「ケニーは(7月29日の)アントンvs旧姓・広田さくら戦に反応して“アントンは私が闘った中で最も偉大な選手の1人”と書いてましたから。何かひらめきがあったのかもしれない」

“お笑い系”のアントンだが、竹下幸之介をはじめ彼を慕う選手も多い。根底にあるのはプロレスに対する真摯な姿勢。その“エモさ”は、インディープロレスのファンならよく知るところだ。今年2月の『マッスル』両国大会ではメインイベンターの大役を果たしている。

 新日本で激闘を重ね、ついにはIWGPヘビー級タイトルも獲得したケニー。しかし彼が得意とするプロレスはハードなものだけではない。笑わせるのも得意であり、また初期のキャッチフレーズは“カナダの路上王”。路上プロレスはバックボーンと言ってもいい。ケニーが古巣・DDTに久しぶりに出場するにあたり「DDTらしい、DDTでしかできない試合がしたい」と思っても不思議ではないだろう。そして、その相手としてアントンを選ぶセンスはさすがというしかない。

 女子との試合も珍しいことではない。里歩はケニーにとって「最初のパートナー。彼より前の」。ケニーは日本の女子プロレスを高く評価しており、AEWの女子マッチにも日本から数多くの女子選手が出場している。里歩もその1人であり、また東京女子のエースである山下は参戦有力候補だろう。久々に里歩と組み、なおかつ山下の実力を自分自身で確認する――そこまで含めたところにケニーの狙いがあるとすれば、このマッチメイクは非常に納得のいくものだ。

 両国より先のDDT出場はケニーの気持ちとスケジュールしだい。ただ大社長は「俺だってケニーとバカな路上プロレスやりたいですよ」と語ってもいる。この5年間で、ケニーは大きく成長し、名前を上げた。「でも僕らも彼に負けないように頑張ってきましたから」(高木)。だからこそ再会する意味もあるのかもしれない。11.3両国大会、ケニーとDDTのどこが変わり、何が変わっていないのか。古くからケニーを知っているファンにも、最近しか知らないファンにとっても刺激的な一戦になるだろう。