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 俳優・伊藤健太郎(22)がこれまでの健康的で爽やかなイメージをぶち破り新境地を開拓。「これを公開したらもう何も恥ずかしくない」というほどの覚悟で、映画『惡の華』(9月27日公開)の主演を担当。思春期の痛々しさ全開の内向的な男子を演じる。

 原作はアニメ、舞台化もされた押見修造の人気漫画。『片腕マシンガール』の井口昇監督がメガホンをとり、ボードレールの詩集「惡の華」を心の拠り所にする中学2年生の春日高男(伊藤健太郎)と、そのクラスメイトで問題児の仲村佐和(玉城ティナ)のいびつな“主従関係”を中心に、少年少女の鬱屈し変態的で羞恥にまみれた思春期を描く。

 クラスのマドンナの体操着を盗み、「クソムシ」となじられ、殴られ、服を脱がされ、教室を破壊……変態っぷりが止まらない過激で過酷な撮影の舞台裏、伊藤自身とはかけ離れた“春日”へのアプローチ、そして思春期の思い出について話を聞いてきた。

断酒で挑んだ春日役「思春期を再現するためにリフレッシュすることをやめた」

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ーー今回、伊藤さんが演じたのは春日という変態的なキャラクター。出演が決まったときに躊躇はありましたか?

伊藤:躊躇はなかったですが、「俺か」と思いました。しかも(春日は)中学生だし。中学生できるかな…って(笑)。アクションをゴリゴリでやる作品の後で、体を鍛えていたので不安でした。結構「脱ぐ」って聞いていたので、大丈夫かな?と思っていたら、結果(筋肉を)落としきれず、中学生じゃない感じになっちゃって。でも、監督からは「これはこれでいいんです」って言ってもらえたのでよかったです(笑)。

監督は「7年間くらいずっと温めてきた作品です」とおっしゃっていて、それだけ大事にしている作品の主人公に僕を選んでもらえたことがすごく嬉しかったです。プレッシャーよりもそういう喜びや感謝が勝りました。

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ーー春日というキャラクターをどうやって掴んでいったのでしょうか?

伊藤:春日が自分とはかけ離れすぎていて最初は悩みました。動機はすごくわかるんですけど、なんでそっちに行っちゃったんだろうな~って。気持ちはわかっても、実際にそれをやっちゃう春日がわからなくて。

まず春日に近づく以前に、思春期の少年に近づけようと思いました。思春期や反抗期を迎えてきたときの自分を振り返ると、理由もなくモヤモヤ、イライラ、反発する気持ちがあったので、その気持ちを再現するためにリフレッシュすることをやめました。そこで始めたのが“お酒を断つ”ということ。モヤモヤを解消できなくなって、そのときの感覚が思春期の意味もなくイライラしたりする感覚と似ているところがあって、そこから徐々に春日の気持ちに近づけたと思います。

ーー撮影期間中はずっともやっと? しんどかったです

伊藤:この作品においてはネガティブな意味ではないんですけど。それが春日に近づくための近道だったんです。結果的にそれが良かったです。 現場にいるときは大丈夫ですが、一人になると、先のことを考えると「なんかもういいや」ってなってしまうような1ヶ月間でした。春日をやらせてもらうためには大事な時間でした。

ーークランクアップしてからお酒を?

伊藤:終わった瞬間飲みました。本当にうまかった……今まで飲んだお酒の中で1番うまかった(笑)。

ーー打ち上げでですか?それとも個人的に?

伊藤:クランクアップ直後の移動の車の中で飲みました。終わった瞬間「プシュー」って(笑)。劇中の最後のシーンでクランクアップだったので、春日の気持ちの整理もついているし、晴れやかな気持ちでいい終わり方でした。「ここからは青春映画の気持ちで」って言われているようなシーンだったので、役を引きずることもなく自分に戻れました。

玉城ティナから本気のビンタ「鼓膜が破れるかと(笑)」

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ーークランクインはブルマーの匂いを嗅ぐシーンだったと伺いました。ハードなシーンもたくさんありますが、その中でも高揚感を感じたシーンはありますか?

伊藤:教室を無茶苦茶にするシーンは楽しかったです。夜も遅くてハイになっていて記憶もあやふやなんですけど、春日の殻もだし、物理的に教室もめちゃくちゃ楽しく破壊していた。「リアルに汚していいよ」って言われていたんですけど、「天井はなるべく避けて欲しいです。掃除が大変なんで」と言われていて。でも終わった後見たら、すごいことになっていて「すみませんでした」ってなりました(笑)。ただ「それで芝居が制限されるくらいなら思いっきりやってもらったほうがいいよ」って言ってもらえたので、そこはありがたく(笑)。素敵なシーンになっていて良かったです。

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ーー祭のシーンはいつ頃に撮影されたんですか?

伊藤:中盤あたりです。あのシーンはエキストラさんも300人近くきてくださって。 ガソリンをかぶるシーンがあるんですけど水をかぶらなきゃいけなくて、撮影したのが11月だったので寒かったです。スタッフさんも気を使ってぬるいお湯を用意してくれていたのですが、ぬるいと逆に冷めてきた瞬間が寒くて、震えそうになるのを抑えながら。終わった瞬間に「ヤバイヤバイ‼」ってなりました(笑)。でも、大勢の前でスピーチをするというシーンなので、逆にそのキュッとしまった感じが良かったのかもしれません。

ーー1テイクでいけたんですか?

伊藤:それがいけたんです。(玉城と)二人で合わせないといけないシーンで、寒いので何回もやりたくないから二人で空き時間に「もう一回行くよ。せーの」とか言って練習していました(笑)。「クソムシがクソムシがクソムシが…」というセリフがあるんですけど、監督が「言い続けてください。いいところでやめてください」って言うんです。でも二人で言うセリフだから、お互いにどこが“いいところ”かわからない。それでどうやってタイミングを取るかという話になって、二人で一つのライターを握っていたので、「最後の『クソムシが』の一個前のときに僕が『よし』と思った瞬間に力を入れるから、そのあと一回言って終りね」って合図を決めて。それで合わせてうまいこといきました。

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ーー玉城さんと信頼関係がないと難しいと思うシーンが多くありましたが、どのように仲を深めていきましたか?

伊藤:玉城さんとの共演は今回で3回目なので、仲村役が彼女で良かったと思いました。脱がせられたり着せられたり、殴られたりというシーンも安心してできました(笑)。アクションをやっていて思ったのが、信頼関係というか相手の人となりを知ってやるというのが大事だなと思っていて。そこの信頼関係があると、多少手が間違っても殴りかかったとしても当たらないし避けられるんですけど、そこが成立しないと難しい。今回はアクションではないですが、そこがすごく似ていました。一見ぐちゃぐちゃになっていたとしても、二人のタイミングというか、呼吸が合っているから、スムーズに見えていなくてもスムーズにいっているという感覚になるんです。知っている相手で良かった。これまでの共演の中でも現場で話す機会が多かったです。ずっと関係ない普通の話をしていました。

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ーー「次のシーンこういうの入れてみよう」という“遊び”を入れてみようとかありました?

伊藤:遊びは本番中に急に生まれました。秘密基地で寝転がりながら絵を描くシーンは、ほぼアドリブなんです。急にビンタしてきたり。ふざけんなよ!って感じなんですけど(笑)。終わった後に、痛いよって!

ーー結構本気の力で?

伊藤:本気で(笑)。でもああいうのって本気できてもらった方がありがたいんです。女性だと特に遠慮してくる方がいるんですけど、全然遠慮ないし、本気で痛い(笑)。僕がマウントを取られて殴られるシーンは、最初遠慮なさすぎて鼓膜が破れるんじゃないかと思いました(笑)。「いって」ってなる暇もなく次の手がくる(笑)。

ーーある意味「今日から俺は」より過酷な現場だったんですね(笑)。共演者から影響受けたことはありますか?

伊藤:玉城さんは本読みの時点で仲村という役を仕上げていて、すごいなと思いました。「仲村に一番寄り添っていた」って彼女は言っていました。監督はキャラクター全員のことを考えなきゃいけないけど、自分は自分の役のみに向き合える。その姿勢は素晴らしいなと思いました。

(春日の高校時代の同級生・常磐文を演じた)飯豊(まりえ)さんとも何回も共演してきましたが、彼女は努力を見せないんです。現場で役作りをするってこともない。でも、話しているとすごく考えてきていることがわかる。

(春日の中学時代のクラスのマドンナ・佐伯奈々子を演じた)秋田(汐梨)さんは撮影時15 歳なのにめちゃくちゃ肝が座っている。僕と玉城さんと飯豊さんは全員同い年なんです。それぞれ顔見知りで仲がよかったので、初めましてで一人15歳の子がその中に入ってくるとなったら、萎縮すると思うんです。でも普通に「おはようございます~」って入ってきて(笑)。「めっちゃ肝座ってるじゃん!いいねー!」と思いました。芝居もすごく伸び伸びやっていたし、監督にもしっかり意見できていて、すごく素敵な女優さんだなと思いました。

木村拓哉に影響を受けすぎ、「昼顔」オーディションで注意される

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ーー『惡の華』で描かれている思春期に共感する部分はありましたか?

伊藤:思春期はとても多感な時期なので、その時期に出会う人や読んだもの、観た映画、聴いた音楽に影響されるというのはすごくわかります。僕もそういう時期に出会った地元の先輩に憧れたり、かっこいいなって思う人をマネたりしていたので、ボードレールに影響される春日の気持ちはわかります。

ーーどんな先輩に憧れていたんですか?

伊藤:地元の先輩。学校が一緒だったというわけではないのですが、一緒に遊んでもらっていました。かっこいいお兄ちゃんだったんです。でも、最初に憧れたのは木村拓哉さんです。服をマネたり、ずっと「May be」って言っていました(笑)。

ーーMay Be!(笑)思春期って憧れが変な方向に行っちゃって痛い格好や行動をしてしまうことがありますよね。伊藤さんもそういったことってありました?

伊藤:ありますね。だから、いわゆる「May Be」ですよね。「ぶっちゃけ」とかも言っちゃってたから。今考えると恥ずかしいんです。ただ、その木村さんのマネをしていた期間が長くて……幼稚園から高2くらいまで(笑)。

ーー(笑)結構長いですね!

伊藤:高2のときに「昼顔」のオーディションがあったんですけれど、そこで僕は「木村拓哉さんが好きです」とは全く言ってなかったんです。でも受かったあとに、他の方のオーディションに練習も兼ねて参加していたときに、監督に急に「健太郎、“木村拓哉”抜け!」って言われて。嘘だろ……と思いました(笑)。期間が長かったので、マネしてないのに自分のものになっちゃったんです。歌い方とかもよく言われます。

ーー今も言われますか?

伊藤:めちゃくちゃ言われるんです。ラジオをやっているんですけど、その喋り方が「すごい木村拓哉っぽいね」って言われるんです。意識していなんだけど、(影響された期間が)長かったものだから!(笑)

「今までの自分のイメージをぶち壊したい」覚悟を持って挑んだ『惡の華』

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ーーこれまでの伊藤さんのイメージをぶち破る春日役。ファンの方が驚きそうですね。

伊藤:多分今までの僕のやってきた役柄とは違う。ここまでのド変態ってなかなかなかったので。演じる前も演じたときも、今までの自分のイメージをぶち壊したいと思って演じていました。これを公開したらもう何も恥ずかしくないっていう気持ちです(笑)。インする前にすごくしんどいだろうなって思ったんですけど、春日高男として1ヶ月間やり抜いたら何か変わるんじゃないかなと思っていました。パブリックイメージもそうですが、役者としても伊藤健太郎としても確実に前に進めると思っていたので、終わった後が楽しみでしたし、1ヶ月間頑張ろうと思えました。かける思いは大きかったです。皆さんにそれが伝わると嬉しいです。

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トップス/tiit Tokyo(THÉ PR・03-6803-8313)、パンツ/ATSUSHI NAKASHIMA (THÉ PR・03-6803-8313)

撮影:You Ishii

メイク:山田今日子

スタイリスト:高橋毅(Decoration)

取材・テキスト:堤茜子

▼『伊藤健太郎&玉城ティナ生出演!映画『惡の華』公開記念SP!』@UDAGAWA BASE 観覧者募集

応募URL:https://forms.gle/hf3o7bBQQz63DksX8

※応募締切 9月10日(火)23時59分まで。

■『伊藤健太郎&玉城ティナ生出演!映画『惡の華』公開記念SP!』

番組概要 放送日時:2019年9月14日(土)夜8時~9時(生放送)

放送チャンネル:AbemaSPECIAL

放送URL:https://abema.tv/channels/abema-special/slots/8qdxS9dDsPdWxw

出演者:伊藤健太郎、玉城ティナ

MC:瀧山あかね

(c)押見修造・講談社/「惡の華」製作委員会

伊藤健太郎&玉城ティナ生出演!映画『惡の華』公開記念SP
伊藤健太郎&玉城ティナ生出演!映画『惡の華』公開記念SP
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