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(8.25後楽園のメインを締めた美軍)

 赤井沙希とは別人であることで知られる沙希様が、操とのNEO美威獅鬼軍で保持する東京女子プロレスのタッグ王座を防衛した。

 8月25日の後楽園ホール大会、そのメインで挑戦してきたのは山下実優&渡辺未詩の色スパークリング。団体のエースと伸び盛りの新鋭という難敵ではあったが、操が未詩をヴァニタス(リバースタイガードライバー)で下している。強さと結果を求めて沙希様と組むことになった操(元・ハイパーミサヲ)にとって、後楽園メインの王座戦で3カウントを取った事実は大きい。

 次の試合は9月1日の大阪大会となる。「地方のみなさんにも私たちの新世界を見せて差し上げる」と沙希様。後楽園での試合後には同じ美軍のマーサ、ユキオ・サンローランもリングに上げて強さと美しさ、そして写真集発売をアピールしたのだった。

 大阪大会では沙希様&操&マーサwithユキオというメンバー構成でリングへ。対戦するのは坂崎ユカ&辰巳リカ&アントーニオ本多のトリオだ。

 3人は初のチーム結成となるが、坂崎はアントンを「私たちユカリカの生みの親であり命の恩人」だと言う。3人はかつて同じ音楽ユニットに所属。坂崎と辰巳はアントンが出場するDDTの新木場大会にチラシを配りに行き、そこでプロレスと出会った。プロレスラーになりたいと相談したのがアントンであり、アントンは「プロレスほど素晴らしいものは他にない」と勧めたそうだ。

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(未詩も大健闘したが操がフォール勝ち。この2人による決着は、後楽園大会としては新鮮だった)

 8月30日には、試合に向けて合同公開練習を実施。アントン曰く「普通、公開練習というとサイパンで火のついた槍をよけるとかをやるものだけど、今からフィジカルを鍛えても間に合わない。精神面を鍛えます」ということで「自分が何かになったと思い込む特訓。簡単に言うとモノマネ」を取材の前で披露していった。

 掃除機に扇風機、花火、たこ焼きから通天閣まで様々なものになりきった3人(主にアントン)。この無茶振りに耐えることで精神的に鍛えられたと主張していた。

「プロレスをやったらこんな面白い人(アントン)になれるのかと思って入門しました」と辰巳が言うように、この公開練習も前代未聞の内容。それでいてなんとなく納得させられてしまうのがアントンの力か。

 DDTではどちらかと言わなくともコミカルな試合が多いアントンだが、2月の『マッスル』両国大会ではメインイベントに登場。さらにHARASHIMAを下してのEXTREME級王座奪取、プロレスリングBASARA・藤田ミノル興行に「X」として出場&観客大熱狂と今年は話題豊富だ。

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(和気藹々にもほどがある公開練習を展開したアントン、坂崎、辰巳。最後は好事家にはおなじみ「1、2、3、よーん!」で締め)

 11.3DDT両国では、ケニー・オメガに対戦相手として指名された。今回の東京女子プロレス参戦も含め、アントンは“時の人”と言っていいだろう。そんな状況を、アントン自身はこう語っている。

「ちょっと困り気味ではあるんですけども。これまでやってきたことが一周して出てきたのかなと。過去の自分がしたことが今の自分に降りかかってきてるわけでふざけんなと(笑)。こんな大変なことになるとは思わなかったですね。でも頑張りたいなと」

 男女関係なく多くのレスラー、関係者に慕われるアントンだからこそ、ここにきて様々な“出番”が巡ってきている。坂崎、辰巳という実力者とのチームでもあり、美軍にとってはかなり厄介な敵になるだろう。

文・橋本宗洋

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