乃木坂46の桜井玲香(25)が1日、東京・明治神宮野球場で開催された『真夏の全国ツアー2019 Final』でグループから卒業した。2011年に1期生オーディションに合格、翌年以降はキャプテンとしてグループを牽引、うっかりミスをしがちなことなどから自らを“ポンコツ“と形容することも多かったが、最後まで笑顔で元気いっぱいに舞台を盛り上げ、メンバーのみならず、ファンからの信頼の厚さを感じずにはいられない卒業セレモニーとなった。
開演前に放映されたのは、前日の終演後に1期生だけで撮影された映像。桜井を中心に「明日で最後だね」と話しながら、「1期!1期!」とはしゃぐメンバー。しかし、次期キャプテンが決定している秋元真夏は輪の中に加われず泣いていると、そのうちに生田絵梨花、齋藤飛鳥らも涙を拭う様子を見せ、観ている客席もしんみりした空気に。
しかしステージ上に登場、冒頭のシングル曲4曲を披露した本人は至って明るい表情で「皆さん元気ですか!」と会場を煽り、「今日も絶好調にオープニングから(フリを)間違えちゃった。『裸足でSummer』で一人だけ手を挙げちゃってて。"私、いつもどおりだな"って思った(笑)」。すると生田絵梨花は「安心だね。いつも通り、らしくいてよ!」とフォロー。しかし、リハの時点で泣いていたという新内眞衣は「今日でツアーも最後なんですが、玲香も最後なんです…どうしようと思って…」と言葉を詰まらせ、涙がこぼれないよう宙を見つめながら「私たちは後から、皆さんは前から玲香を見ておいてください」と呼びかけた。
選抜とアンダー、1~3期生、そして4期生の積極的なシャッフル・融合が印象的だった今回のセットリスト。桜井も3期生の楽曲『自分じゃない感じ』では、キレキレのダンスで魅せながら同期の和田まあや・中田花奈とともに阪口珠美(3期生)、金川紗耶(4期生)をリード、後輩たちに魂を確かに引き継いだ。
後半では秋元真夏と"新旧キャプテン"による2人のMCも見せた。秋元が「踊ってる途中で思い出すんだけど、キャプテンになるというのが想像すかないし、玲香が卒業するのもわからないし、実感しないまま終わりそう」と語りかけると、桜井は「実感しないまま終わりたい、泣かないまま終わりたい」と応じた。
■「卒業を決めたのって、"もうアイドルはいいかな"って思ったからじゃない」
しかしそんな桜井も、やはり終わりが近づくと涙は抑えきれなかった。ライブ本編終了後、「叶った!夢が!」と喜ぶ合格時の映像や、キャプテン就任時の映像、そして卒業をメンバーに告げる映像などが流された後、一人でステージに表れると、「いや~、もう終わっちゃうな。早いですね。ちょっとだけ感謝の気持ちを話したいなと思います」と卒業の挨拶を始めた。
「まず、この神宮は乃木坂46の聖地になっているんですけど、私もすごい色々な思い出がある場所で。初めてこの規模の大きいライブをしたのが神宮で。今でこそMCって、私は頭と最後くらいしかしゃべらなくて、あとはメンバーみんなで分担してやったりしてるんですけど、その頃は、全部つるっと私がMCをやったりしなきゃいけなくて、初めてのこんな大きな会場で、覚えることも多くて、テンパりすぎちゃって、オープニング泣きながら出たこともあったんですよね。それが私の神宮の初めてで。
雨が降ったりとか、何より"復活ライブ"をしたのも神宮でした。実は私、3年前の夏かな、1回、乃木坂を休業したんです。1か月半くらいだったんですけど、ありがたいことに乃木坂はいろいろなお仕事をさせていただいているので、1か月半という時間でもやることが山ほどあって。『裸足でSummer』の時かな。ちょうどリリースがあったり、全国ツアーを回ったりという時期で、私も本当に頑張ろう!って思って、アイドルとしてもキャプテンとしても、めちゃくちゃ頑張らなきゃって力んだ結果、自分をコントロールできなくなっちゃって。どうにもならなくなって、休業しちゃったんですけど。
その時は本当に"私、終わったな"と思ったんですよね。"もう、アイドルを辞めなきゃダメだな"と思ったし、"芸能界も辞めた方がいいなぁ"って、本当に目の前が真っ暗になっていた時期で、もうどうしようもなかったんですけど。なんとね、3年越しの今日ここに、私こうして立っているんですよね。やっぱりメンバーとスタッフさんと、あとファンの皆さんがめちゃくちゃ支えてくれたから、今日ここに立てていて。
メンバーなんてめちゃくちゃ迷惑を掛けたのに、みんな定期的に連絡をくれるんですよ。"何してるの?"とか"最近、こういう感じだよ"って。スタッフさんも連絡くれるし、ファンの方にもすごい気を遣わせちゃって、握手会とかで。触れた方がいいのか、触れない方がいいのかとか、みたいな。最初乃木坂に入った時は、こういう大人数で同世代の女の子がたくさんいるグループで、しかも順位が付けられるし、選抜とかアンダーとか。もうライバルじゃないですか?メンバーって言っても。だから私は頑張りたいから、友達なんていらないと思ったんです、本当に最初の頃。1人でやってやる!くらいな気持ちでいたんですけど。でも、皆さんにとっても赤の他人なのに、みんなが自分のことのように私のことを心配してくれるんです。しかも私、辞めようと思っているのに、どうやったら玲香が復活できて、どうやったら乃木坂46に戻ってこれるのかというのを、まるで自分のことのように、みんながみんな、色んなことを考えてくれたんです。そういうのに支えられて。そのタイミングで、マジで、本気で、このグループを守らなきゃな、と思ったんですよね。メンバーを絶対に守らなきゃいけないなって思ったのは、ちょっと遅かったかもしれないけど、本気で思えたのはそのタイミングでした。
親にもめちゃくちゃ心配かけて。毎日のように親は泣いてましたね、その時は。だからそう考えると、今こうして、この神宮に、自分にとっていろいろな思い入れがある神宮で最後を迎えられているこの姿を皆さんに見せられているというのが奇跡ですね。本当に、人生何が起こるか分からないなあって、思います。
これから乃木坂を辞めたら、私はこれから先も夢があるので、1人で頑張っていこうと思っているんですけど。(今)何かちょっと気を緩めると"ウッ"となっちゃう時があるんですけど、あまり寂しいという感じがなくて。不思議と。私が卒業を決めたのって、"もうアイドルはいいかな"って思ったからじゃなくて、卒業してもずっと自分にとってやっぱり乃木坂は一生関わっていくなと思っていて。メンバーはこれから現役のメンバーとして乃木坂46を作っていくと思いますけど、私は卒業した後に、"あ、桜井玲香って乃木坂46だったんだよ、しかもキャプテンだったんだよ、すごくない?"って言ってもらえるような人になりたいと思ったので、このタイミングで卒業して、早く新しいスタートを切らないと。メンバーに背中を見せられるようにならないと。と思って決断したので、これからも乃木坂なんだなって思って、だから寂しくないのかなって思いますね。これからメンバーとして一緒に活動することはなくなるけど、私は私でこれからの乃木坂46を作り続けていく1人だと、私は思っているので。それを胸に刻んで、これからも活動をしていきたいと思います。多分皆さんにもいろいろな姿をお見せするつもりでいるので、これがお別れじゃないですから。これからもワクワクして待っていてほしいなと思います。フフフ。こんな感じかな?ありがとうございます。」
そして卒業を記念、後に残る同期生や後輩たちのことを想う歌詞が感動的なソロ曲『時々 思い出してください』を歌唱。終盤でメンバーがステージに姿を見せると、感極まって歌えなくなる場面も見られた。さらに観客が桜のマークのカードが一斉に掲げると、「あ~あ、泣いちゃった。幸せだな本当に。こんなにいっぱい。8年間終わっちゃうんだな。ありがとうみんな」。
続く新曲『夜明けまで強がらなくてもいい』(4日リリース)の歌唱前には、卒業後のリリースであるため歌唱する機会がなく、選抜入りを断ることも考えたとを明かし、「私もこの曲を歌いたいと思うんですけど、いいですか?」と、最初で最後のパフォーマンス。センターに抜擢された4期生・遠藤さくらと並んで踊る姿は、"サクラ"繋がりの不思議な縁も感じさせた。
■秋元真夏から涙の手紙「明日、楽屋に入ったら、いつものように玲香に会える気がしてしまいます」
気を取り直した桜井は、生田や4期生の柴田柚菜らがまだ涙を見せる中、元気に『ロマンティックいか焼き』『僕だけの光』でメンバーを引っ張る。療養のためツアーを欠席していた1期生の井上小百合もステージに突然表れると、笑顔で抱き合った。さらに矢継ぎ早に「私、乃木坂といったらこの曲だと思うんで…」と曲紹介を始めると、「ちょっと待っていただいていいですか、早いですね」と秋元がストップをかけ、「思いが募りすぎて長いので、皆さん座ってください…」と断りを入れ、手紙を読み上げた。
「玲香へ。玲香、卒業おめでとう。そして、キャプテン本当にお疲れさまでした。8年間、乃木坂のキャプテンを務めてくれた玲香には伝えたい思いがたくさんあります。今日はメンバーを代表して、私が手紙を送らせてもらいます。
私の中での玲香との最初の思い出は、乃木坂の最終オーディションです。黒いミニスカートを履いて、キリッとした表情の玲香とすれ違った私は、そのキラキラしたオーラにひたすら圧倒されていました。それから一緒に活動していく中で、玲香との思い出は数え切れないくらいできました。
女子校出身メンバーで結成した"女子校カルテット"は、他のメンバーからも"この4人は、お母さんになっても、おばあちゃんになっても一緒にいそうだね"って言われるくらい、濃い時間を過ごしてきたり、何年か前のクリスマスにリハが終わって、お互い予定がなくて、2人でご飯に行ったり。初めて2人きりでご飯に行ったから、実はあの時、"何を話そうかな"と緊張していたけど、今では何でも話せる関係になれたのが、私はすごく嬉しいです。
でも、やっぱり忘れられないのは、私が乃木坂の活動をみんなより1年遅れで始めたときのことです。あの時、私は正直、自分が乃木坂に受け入れてもらえるのか、怖くてたまりませんでした。でもそんな時、私のことをずっと気に掛けてくれていたのが玲香でした。きっと玲香は、キャプテンという立場じゃなくても、そうやって私を見守ってくれたんだと思います。あの時は、本当にありがとう。
玲香がキャプテンじゃなければ、今の乃木坂はありません。玲香は"そんなことはない"って謙遜するだろうけど、私だけじゃなく、ここにいるみんながそう思っているはずです。目には見えない"乃木坂らしさ"、それは玲香が作ってくれた、この優しい空気感なんだと思います。玲香はすごく人に気を使うし、自分の悩みも話さないから、もっと頼って、と心配になることもたくさんありました。でもメンバーはみんな心の底から、玲香がキャプテンで良かったと、本当に思っています。嬉しいことも、苦しいことも、全てを受け止めてくれて本当にありがとう。
こうして手紙を読んでいても、まだ、どうしても玲香がいなくなることが想像できません。また明日、楽屋に入ったら、いつものように玲香に会える気がしてしまいます。面と向かってこんなことを言うべきじゃないのは分かっているけど、本当はさみしすぎて、どうしたらいいのかが分かりません。できることならずっと一緒にいたかったけど、これからは私たちは、誰よりも玲香の応援団になって、背中を押します。だからこの先、大変なことや辛いことがあったら、その時くらいは私たちを頼ってね。8年間、本当にお疲れさまでした。
今までありがとう。大好きな玲香へ」。
続けて秋元が「玲香は自分のことを"ポンコツ"だと言うけど、そんなことは全くないし、優しさに救われたから、感謝の気持ちしかないです」と語りかけると、桜井は涙を流し「真夏は大変だったよね。頑張ったよね。私はみんながいたからやってこれた。本当に青春だよ。学校の時より、乃木坂の方が全然…。本当に一生大切な人たち。乃木坂のメンバーにはずっと笑っていてほしいな」。
そして、改めて"支えてくれた曲だった"という『乃木坂の詩』を合唱。「また明日からみんなで頑張って坂を上っていくんで、これからも応援よろしくおねがいします」とアンコールを締めくくった。
■"玲香コール"を受けダブルアンコール、卒業生代表として若月佑美が花束贈呈
アンコール終了後も止まない「玲香!」「玲香!」の声に、「みんなまだやりたいの~?」と冗談めかしてステージに表れた桜井は、「じゃあ、最初の頃に歌った、AKBさんの公式ライバルグループとして誕生したんで、この曲歌っちゃおうかな?盛り上がって行くぞ!みんな声出して行けよ!」と、全員で『会いたかったかもしれない』を披露。「結成から8年間、本当にいろんなことがありましたけれども、メンバーもだいぶうかわりましたけれども、どんどんずーっと頑張っていきますんで、ずっとずっと応援してください、今日は本当に素敵な時間をありがとうございました!」と叫び、場内を一周。
すると、なんと卒業生を代表して若月佑美が大きな花束を持って登場。「来てくれたの…ありがとう」と号泣する桜井に、「8年間お疲れ様。でもこっからが長いですからね。ともに戦友としてがんばりましょう!」と発破をかけていた。
ステージに戻ってきた桜井に、秋元が「最後はいつものあれで終わりますか?」と誘い、メンバーがおなじみの円陣を組むと、「やりますか!明日からまた新しい乃木坂を皆で一緒に作っていきましょう、卒業生として、もっと上り坂を上っていけるように、私もサポートしていけるよう、頑張りたいと思います!」と気合を入れ、「努力!感謝!笑顔!うちらは乃木坂上り坂46!」と気勢を上げた。
「乃木坂に入ってよかったです。明日からもがんばります、ありがとうございました!もうほんとに帰るね!気をつけて帰るんだよ!みんな大好き!またね!バイバイ!」とステージを後にした桜井。11月には帝国劇場で上演されるミュージカル『ダンス オブ ヴァンパイア』への出演も決定しており、さらなる飛躍が期待される。