10月1日に向け香港デモに高まる危機感…門田隆将氏「北京政府の出方はすでに決まっている」
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 「香港にこれほど大きな混乱を招いたことは、行政長官として弁解の余地はない。許されないことだ。選べるならば、真っ先に辞任したい。深く謝罪したうえで辞任する」。デモが続く香港情勢をめぐって、香港政府トップの林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官が非公式の場で辞意を表明していたことが音声データとともに報じられた。これに対し林鄭長官は「プライベートな非公開会合の内容が公開され、個人的には失望した。最初から、今まで私は一度も中央政府に辞任に関して話したことがない」と明確に否定した。

 大規模なデモが始まってから、まもなく3か月。抗議の声は広がる一方で、今や中高生や大学にまで広がっている。2日には抗議デモで拘束された民主派市民の釈放を求め、中高生が新学期初日の授業をボイコット。ある学生は「中学生も社会の一部。政府に要望を通すためにやっている」と語った。また、香港中文大学ではマスクとゴーグルを着けた、右手にはデモの象徴である雨傘を、左手には"香港を取り戻す革命の時だ"と書かれた旗を持つヘルメット姿の女子学生像「香港民主の女神」が出現した。しかし、このような民主化運動を象徴する像は、30年前、1989年の天安門事件の時にも建てられたが、その設置から5日後、中国政府による武力弾圧が行われることとなった。

 対岸の深センには武装警察が集結しており、天安門の悲劇の再来を懸念する声もある。ただ、あくまで林鄭長官は「中国政府に人民解放軍を展開する計画は絶対にない。中国政府が気にかけているのは国際社会での地位だ。その前向きな発展全てを捨てるという選択肢は中国政府にないのは明白だ」とコメントしている。

10月1日に向け香港デモに高まる危機感…門田隆将氏「北京政府の出方はすでに決まっている」
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 作家・ジャーナリストの門田隆将氏は、「林鄭長官はかなり早い段階で辞任について言及していたということだが、やはり辞めたいが辞めさせてもらえない、北京政府も辞めさせたいが辞めさせられないという状況にあるということだ。つまり、このような事態で行政長官が辞任するということになれば、"200万人のデモがあれば要求が通るのか"ということで、一気にウイグルやチベットの問題にも飛び火する可能性がある」と指摘する。

 また、門田氏は市民や学生たちの動きについて「香港の人たちは、2014年の"雨傘運動"の敗北後、いかに人権弾圧が進んだかということが身に染みている。それが"あの時、あと少しの勇気を出すことができなかったことが学生たちを孤立させ、今の香港につながっている。今回はやるぞ"という気持ちに繋がっている。6月12日、職場や大学を欠席した人はデモに行っているのではないかということで、当局が"欠席者リスト"を作成しようとした。それで、今回は自分たちも、ということで6月16日の歴史的な200万人デモになった。このときのデモも含め、リーダーがいないということも特徴だ。彼らはロシアが開発した優れもののチャットアプリ『テレグラム』で連絡を取り合い、誰かに命令されるということではなく、"こうすれば国際社会へのアピールになるのではないか"、といったアイディアを重視している。今回の授業ボイコットについても、中学生の中には97年の香港の返還以降に本土から入ってきた中国人の子弟がいるため、"中学、高校ではあまり強制しないようにいこうよ"というような話し合いもされているようだ。しかもスマホの時代だから、全員が起きたことを写し、どんどんSNSを通じて世界に向けて発信している」と話す。

 対する中国政府については、「北京政府の出方は、8月上旬にあった指導部と長老が集まる北戴河会議の中で、すでに決められている。江沢民なども最初は武力行使には反対していたが、最後まで残ったのは朱鎔基ただ1人だったという。やはり建国70周年になる10月1日までに決着をつけなければならないということになっているので、非常に危機的状況だ。香港基本法18条には、動乱状態になった場合、中国国内の法律などを適用して良いという条項がある。そこで"自作自演"も含めた色々なことをやって、暴乱状態に持っていこうとしている。警棒を振り下ろす映像や、観光地で警官が記念撮影をする様子からもわかるように、香港警察ではなく、大陸からきた警察がかなり入っているとみられている。学生たちが広東語で話をしても、相手は北京語で言葉が通じないという話もある。ただ、今はテレグラムに"絶対に火炎瓶を投げてはいけない"といったことも流れているようだし、北京政府としてはやりにくいだろう」との見方を示した。

 さらに今後については「国際社会に期待したい。香港にはイギリス、アメリカ、カナダなどの二重国籍の人が結構いるが、そういう人たちもやられている。ならば、国際社会はもっと中国を非難しなければならない。しかし、なぜ国連は香港の人たちを呼び、映像を流し、それら検討して、"弾圧は許さない"というメッセージを出さないのか。国連の人権理事会がまったく機能していないし、存在意義も問われている」と主張した。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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