9月6日にベトナム・ホーチミンで開催されたONE Championship「ONE:IMMORTAL TRIUMPH」で、注目ムエタイ選手のクラップダム・ソー・チョー・ピャッウータイが、ONEのデビュー戦でフランスのボボ・サッコに判定で勝利。初陣を白星で飾った。
身長168センチと決して大きくないクラップダムに対し、184センチと同階級とは思えないサッコ。特に手足の長さの差は歴然で、距離を取りながらローキックに活路を見出す作戦だ。サッコの伸びるジャブを浴びながらも、クラップダムは着実なローでダメージを積み重ねていく。1ラウンド終盤に飛び込んで得意の左を打ち込み始めると、残り30秒で強烈な左フックがサッコを捉え、スタンディング・ダウン。しかしここはゴングに救われた。
距離感を掴んだクラップダムは2ラウンドに入ると積極的に前へ。一方のサッコは長身を活かした首相撲やヒザに活路を見出そうとするが、次々とクラップダムの強烈な左を被弾、なす術がない。後がなくなったサッコは最終3ラウンド、得意のリーチを活かした攻撃で反撃に出る。ジャブが次々とヒットしクラップダムを最後まで追い込むが、1ラウンド、2ラウンドを支配したクラップダムをジャッジ3人が支持。3-0での完勝となった。
昨年ルンピニースタジアム認定ライト級王座決定戦で、梅野源治と争い4R TKO勝利。日本では「梅野を倒した男」として知られる存在になったクラップダム。若干20歳にも関わらず、極貧生活を抜け出すために家族のために人生を格闘技に捧げてきた苦労人だ。
タイの北東部イサーン地区スリン県出身。毎年のように洪水と干ばつ被害が絶えない地域の貧しい農家に生まれ気候に翻弄され生きてきた。両親と5人の子供の7人家族を支える手段として8歳でムエタイの世界へ。ONE Championshipの公式サイトで、幼いクラップダムの最初のファイトマネーは150バーツ(520円)だったことを明かしている。
17歳のときに頭角を現し、公式戦12連勝を皮切りに梅野戦をKOした左の豪腕を武器にルンピニースタジアム認定ライト級、さらにスーパーライト級の二階級制覇。新たにオーブンフィンガーグローブでのムエタイ戦という「ONE Super Series」の未知の世界へやってきた。
試合後のインタビューで「次、誰と戦いたいか?」という質問にクラップダムは「とにかく必死で練習をして、誰とでも戦います。まずは僕の名前を覚えてください」と謙虚に答えた。同階級はこの日ONEバンタム級ムエタイ世界王者を防衛したノンオー・ガイヤーンハーダオを含む強豪がひしめきあう激戦の場だ。
ニックネーム「Left Meteorite(隕石の左手)」のように、これからONEの舞台でもその左腕でKOの山を積み上げていくのか? 20歳のクラップダムが挑む新たな戦いに注目したい。
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