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(エルガンと年間ベスト級の激闘を展開した関本)

 インディープロレス界屈指の人気を誇る大日本プロレスが、9月、11月と立て続けでビッグマッチを開催する。

 9月15日は横浜文化体育館大会。年数回、行われている恒例の大場所だ。11月4日の両国国技館は、年間最大のイベントとなる。

 隔月開催とはいえ1ヶ月半の間隔でビッグマッチを2回。しかもその間に9月25日、10月13日と後楽園ホール大会も2度ある。選手にも運営的にもハードなのは間違いないが、大日本はこの夏に“底力”を見せつけてもいる。

 8月24日の後楽園ホール大会で、大日本はプロレスファンの誰もが待ち望んだドリームカードを実現させた。“ストロングBJ”を代表する関本大介と対戦したのはマイケル・エルガン。世界最高峰のパワーファイターで、新日本プロレスを離れたことでこの初顔合わせが実現した。

 エルガン参戦決定に関本が対戦の名乗りをあげて決まったこの試合だが、エルガンもまた関本との闘いを望んでいた。そして、おそらく本人たちと同じかそれ以上の熱量で、ファンがこのカードを待っていた。

 チケット完売、超満員札止めの後楽園で、関本とエルガンは期待を凌駕する大熱闘を展開した。互いがエルボー、チョップ、ラリアットを数え切れないほど叩き込み、ジャーマン、ボム系の技で軽々と投げ捨てる。

 それぞれの得意技をかわし、切り返すという攻防ではなく、技を喰らった上でいかに耐え、カウント2でクリアするかの闘い。気力とパワーと耐久力の限界に挑むような試合で、まさにこれが2人に望まれていたものだった。分厚いステーキを次々と口に放り込んでいく快感というのか、満足であり満腹になるベストバウト。フィニッシュにバーニングハンマーを繰り出して勝ったエルガンは、後楽園に詰めかけたファンを「俺のファミリー」と呼んだ。

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(5月にデスマッチヘビー2度目の戴冠、新世代を相手に防衛を重ねているイサミ)

 この試合が観客を熱狂させたのに加え、重要だったのはセミファイナルまでの試合もインパクトを残したことだ。関本、エルガンと同レベルと言っていい岡林裕二の圧倒的パワー。またこの日、大日本の会場を初めて訪れ、そこでデスマッチを初めて見たというプロレスファンもいたのではないか。成長株である野村卓矢と阿部史典(プロレスリングBASARA)の小気味良さも印象に残っただろう。「エルガンvs関本が凄かった」だけでなく「大日本プロレスは面白い」となったはずで、その熱が今後につながっていく。

 エルガンは翌25日の名古屋大会にも参戦。この名古屋大会では、ZERO1の佐藤耕平が岡林からストロングヘビー級王座を奪取している。

 9.15横浜大会では、佐藤が神谷英慶を相手に防衛戦。もう一つのフラッグシップ王座・デスマッチヘビー級はチャンピオンの木高イサミに佐久田俊行が挑む。

 他団体(BASARA)ながら大日本のデスマッチ戦線で長く活躍、強い支持を得ているイサミ。対する佐久田はFREEDOMS参戦を経て急速に成長している。身長155cmという小兵だが、金串を頬に突き刺すといったイカれた闘いぶりや“飛べるデスマッチファイター”としての思い切りのよさに磨きがかかっており、今回の王座挑戦も期待感充分だ。

 恒例の最侠タッグリーグでは岡林と入江茂弘という新鮮なタッグも実現。全日本プロレスとの対抗戦も含め、現在の大日本は充実した容だ。それだけ、選手にとって魅力とやりがいのあるリングということだろう。

 9.15横浜の結果を受け、後楽園から両国へ向けてどんな闘いが繰り広げられ、どんなカードが組まれるか。この1ヶ月半で大きな流れが生まれていくはずだ。

文・橋本宗洋

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