わずか2場所で大関から陥落した貴景勝が、今場所は10勝以上での大関復帰を目指している。夏場所四日目の御嶽海戦で右膝の内側側副靭帯を損傷。同場所の八日目に再出場を果たすも碧山に叩き込まれ、翌日から再休場すると名古屋場所も全休。夏巡業も不参加だったが、その間は母校の埼玉栄高でリハビリとトレーニングで体作りに励んでいた。
負傷以降、関取衆との稽古を再開したのは場所前、8月31日の稽古総見だった。この日は5番を取って3勝2敗。御嶽海や碧山といった休場に追い込まれた因縁の相手を敢えて稽古相手に指名し、持ち前の押し相撲で圧倒。嫌なイメージを払拭することになった一方、2日後の二所一門の連合稽古では阿武咲や玉鷲に押し込まれると反撃に転じることなく、力なく土俵を割ってしまう場面も目立った。翌日の連合稽古2日目も精彩を欠き、場所前は不安を感じさせる稽古内容だったが、本人に悲壮感は微塵もなかった。
「稽古場がいいから本場所がいいというわけではない」とキッパリ言い切った場所前の言葉がまさに現実となった。
初日の大栄翔戦は激しい突っ張り合いから相手のいなしを負傷した右足で踏ん張ると、最後は突き落としで白星発進。翌日も碧山を会心の相撲で押し出すと三日目は朝乃山を叩き込み、初日から3連勝とした。いずれも相手に攻め込まれる場面はなく、前に押し込むパワーは大関昇進を決めたころと遜色はない。
現行のカド番制度が制定された昭和44年名古屋場所以降、関脇に陥落した場所で大関復帰に挑んだのは過去21例で19人。そのうち10勝以上をマークして大関に返り咲いたのは三重ノ海、貴ノ浪、武双山、栃東(2回)、栃ノ心の5人6例だけ。確率から言ってもその道は極めて厳しい。ただし、ここまで勝ちっぱなしの貴景勝にとって、心強いデータがある。前述した21例中、3連勝スタートは5例でいずれも10勝以上をマークし、場所後に大関復帰を決めている。
年齢的にピークを過ぎたり、ケガが完治せずに大半の大関経験者が再昇進を果たせずに涙を飲んだが、貴景勝は23歳とまだ若い。患部を悪化させることなく自分の相撲さえ取り切れば、道はおのずと開けてくるに違いない。
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