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(試合後、自身の状況を泣きながら語った朝陽)

 プロレスのリングでは、喜怒哀楽あらゆる感情がさらけ出される。その感情には“恐怖”が含まれてしまうこともある。

 9月8日のアイスリボン道場マッチ。そのメインでは世羅りさ&鈴季すずvs雪妃真矢&朝陽というカードが組まれていた。9月14日のビッグマッチ、横浜文化体育館大会で世羅vs雪妃、すずvs朝陽のシングルマッチが組まれており、道場マッチはそのW前哨戦だった。世羅vs雪妃はタイトルマッチ。すずと朝陽は16歳同士、新鋭ライバル対決として注目の一戦だ。

 だが、この前哨戦では試合開始と同時に誰の目にも分かる“異変”が起きた。コーナーに控える朝陽がうずくまり、涙をこぼす。取締役選手代表の藤本つかさが寄り添って声をかけ、その間パートナーの雪妃が一人で闘う展開が続いた。

 途中、なんとか試合に加わった朝陽だが、世羅との攻防の中で動けなくなってしまう。その様子を見た世羅が雪妃へのタッチをうながし、そのまま朝陽がリング内に戻ることはなかった。試合は雪妃が3カウントを取られて終わった。試合後、朝陽が泣きながら言葉を絞り出した。

「試合をするのが怖くなってしまいました……」

 藤本の説明によると、朝陽は8月の試合で熱中症の症状によりレフェリーストップ負けを喫し、その「トラウマ」から、試合が怖くなってしまったのだという。

 大会オープニングの前説コーナーの時間帯、控室では朝陽が「怖くて試合ができない」と訴えていた。そのため藤本と朝陽は全選手入場式に出ていない。団体としては急きょ欠場とすることも考えたが、大会が進むうちに朝陽が気持ちを固め、リングに向かったという。しかしいざ試合が始まってみると、心も体も固まってしまったようだ。

 熱中症で2分足らずで終えた試合、その相手はトップ選手の雪妃で、新王者決定トーナメント1回戦という大勝負だった。そういう闘いを不本意な形で終えてしまった悔しさ、情けなさ、それに体調不良の苦しさは、16歳の新人レスラーにはあまりにも重いものだったのだろう。

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(朝陽は試合に登場したものの、途中で体が動かず立ち上がれなくなった)

「プロレスが嫌いになったわけではないんです」

 朝陽はそう話してもいる。プロレスが嫌なのではなく、試合がしたくないのでもなく、したいのにできない。9.14横浜大会でのすず戦は行なう方向だが「どうなるか分からないのが現状です」という藤本からの説明もあった。

 9月11日に開催されたアイスリボンの若手興行『P's Party』のマッチメイクにも朝陽の名前があったが、試合前日にカード変更。朝陽は欠場している。これは大会をプロデュースするテキーラ沙弥の判断。大事をとって休ませたそうだ。状況が状況だけに、無理をさせるわけにはいかない。「頑張れ」という言葉ですらプレッシャーになってしまうかもしれない。

 昨年、横浜文体でデビュー予定だったがケガで延期となったすずにとっては、今回が“文体デビュー”。現在の状況に「どんなカードでも受け入れます。でも朝陽さんを信じてます」と語った。

 雪妃は、自身のパニック障害の経験をリング上で話している。乗り物や人ごみをまったく受け付けなくなった雪妃だが、今は「すいている電車なら乗れるし、遠征のバスに乗れる機会も増えてきた」。そのためには、途中下車を繰り返しながら少しずつ慣れていくしかなかった。安心できる人と一緒に乗車するのも方法の一つだったそうだ。

「朝陽も安心できる人と一緒にリングに上がることが、恐怖を克服する一番の方法だと思います。応援してくれる人もいるし、お客さんの中に敵はいないから」(雪妃)

 また柊くるみも「朝陽の気持ちが分かる」と語った。以前、ヒザのケガから復帰した際に“シングル恐怖症”になり、タッグマッチにカードを変えてもらっていた時期があると言う。「でもそこから這い上がって、私は怪物になることができたと思ってるんです」。

 さまざまな葛藤を抱えて、プロレスラーはリングに上がっている。「朝陽は弱さとか脆さ、儚さ、そういうものを体現する選手」だと藤本。「ありのままをお見せしてしまって」と詫びていたが、それはファンに対する誠実さでもある。この試練をどう乗り越えるか。すずだけでなくレスラー仲間たちだけでなく、ファン全員が待っている。

文・橋本宗洋

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AbemaTIMES
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