「友達に紹介されて…」お金欲しさに特殊詐欺の”受け子”になってしまう少年たち
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 暴行・傷害など、今年の夏も報じられた数多くの少年犯罪。しかし渋谷でパトロールを行う特定非営利活動法人「日本ガーディアン・エンジェルス」の川端俊介さんは、「公共の場での少年犯罪は減っているように感じる」と話す。実際、少年犯罪はこの10年間で3分の1以下にまで激減しているのだ。ただ、東京の場合、減っているのは傷害や窃盗などの犯罪で、昨年の被害額が360億円を超す振り込め詐欺など「特殊詐欺」を含む知能犯は増加傾向にあるという。

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 ネットやSNSには特殊詐欺の受け子などを募集する投稿もみられ、バイト感覚で罪を犯してしまう未成年が増えているのだ。サイバーパトロールを行う公益社団法人全国少年警察ボランティア協会の岡嶋美佐子氏は「保護者さんが大丈夫だろうと思っていても、SNSや無料通話アプリで自分のお子さんが何をしているのか把握していただかないと怖いかなと思うことはある」と話す。

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 17日放送のAbemaTV『AbemaPrime』では、逮捕歴のある若者を交え、少年たちはなぜ犯罪に走ってしまうのだろうか。そして、更生はどのようになされるのだろうか、考えた。

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 「楽をして稼げると先輩に紹介してもらった。お金が欲しかったのでやった。1回で何%かが決まっていて、100万円だと10万円くらいだった」と振り返る齋藤さん(23)は、「受け子」として特殊詐欺を手伝い、現行犯逮捕された。 「あ、この人(被害者)だなという人の目の前まで行ったら、後ろから捕まった。頭が真っ白になった」。

 齋藤さんを待ち受けていたのは、社会復帰の難しさだ。「まずは環境を変えようと思った。悪いことをするような人と関わりをなくすことを少年院から出る時に決めていた」。知り合いがいない地での再出発が求められるだけでなく、過去に犯した罪が就職の大きな壁になる。さらに、ネットには過去が消えずに残ることもあるのだ。

 さらに番組では、逮捕歴のある若者をスタジオに招き、詳しく話を聞いた。

■「"家族めちゃくちゃにするからな"と脅されて抜けられなかった」

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 「受け子」をやっていたというユウキさん(仮名・20)は、「誘われていた友達がやりたくないと言ったので代わりにやった。お金を取りに行けばいいと言われ、詐欺だということは知っていたが、まあいいかなという甘い考えだった」と振り返る。

 中学校からは学校に行かなくなり、16~18歳は工場・的屋などの仕事とニート期間を繰り返す。そして詐欺の受け子に誘われ、半年にわたって携わった。19歳で少年院に行き、退院後はNPO法人「クラージュ」の寮で生活しながら働いている。

 「僕の場合は都内が多かった。電話で"どこどこに行って待機してくれ"と言われ、被害者になる方が見つかったら、その人の住所に取りに行くよう電話が来る。直前までどこに行くか分からないし、金額も確認せずにそのままもらって、言われた場所に持っていくか、コインロッカーの中に入れておいた。最初は幼馴染から報酬を受け取っていたが、最後の方は"置いたら電話するから取りにいってくれ"と。近所の公園の消火栓の下に置いてあった。最初の1か月間は罪悪感があったが、60回以上くらい成功して、土日以外、毎日やって報酬は多いときで週15万円。聞くと深い所まで入ってしまうかなと思って、組織については一切聞かなかった」。報酬の指示役からの連絡で金を受け取りに向かう仕事。金額は教えられていないが、重さで400~500万円くらいだと感じたこともあった。

 次第に罪悪感は薄れていったが、それでも一度は抜けよう試みた。「指示役の人に言ったらすごいキレられた。紹介者が幼馴染だったということもあって、住所なども全部バレていた。"家族めちゃくちゃにするからな"と脅されて抜けられない状況だった」。そして、受け子として関東から静岡県に行った際、現行犯逮捕された。「被害者の自宅の敷地を出た時、後ろから警察が何人も走ってきて、囲まれて現行犯逮捕という形で」。

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 東京未来大学の出口保行教授(犯罪心理学)は、「悪いことだと分かってはいるが、おっかないし、深みにはまってしまうのではないかと、あえて突き詰めていかない。それでも、悪いことをしているという意識は絶対にある。そこをうまく使って、受け子などとして使っている」と指摘する。

 また、作家の沖田臥竜氏は「騙しやすいとか、単純とか、友達が多いとか、若いから無知だとか、そういうことで未成年を使う。警察にバレて捕まり、自由が奪われる方が怖いと思ったら決断ができたと思う」と話した。

■「罪の意識もなくて、すぐ出られるんじゃないかと思った」

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 「出し子、紹介、掛け子とほとんどやり尽くした。先輩など交友関係が広かった」「未成年はお金がない子が多くて簡単に誘いにのるので、そういうのを狙っていた」と話すのがリョウさん(仮名・20)だ。「騙し取った額は、億は超えている。自分は1000万稼げていた」。

 中学校では親とは関わらず、祖母の家に預けられた。高校は半年ほどで退学し、暴走族になった。17、18歳で無免許運転、傷害などの罪で少年院に入り、仲間たちと詐欺グループに参加、1か月半ほど携わった。19歳の時に詐欺罪で少年院に入り、20歳からはユウキさん同様、「クラージュ」の寮で生活しながら働いている。

 「僕は無所属だったが、暴走族や旧車會の知り合いが多かった。僕もユウキさんと同じように、出し子から始まった。知り合いに"紹介の方に回ってみないか"と誘われて紹介を始めた。出し子や受け子とは報酬が違ってくるし、自分が紹介した子の報酬も自分で決められるので、ピンハネもやっていた。自分が紹介した子とはあまり顔を合わせず、連絡も頻繁には取らないようにしていた。携帯を2つ持って、1つはプリペイド式で、その子たち専用。すぐに捨てられるからと、先輩たちに教えてもらった。お金がなかったので稼ぐことに必死で、被害者の気持ちについては全く思わなかった」。

 電話の掛け子にはマニュアルがあり、騙し方が決まっている。紹介役としての報酬は騙した金額の20%ほど。知り合いの知り合いなどで、交流のない人も受け子として紹介。ユウキさんとは異なり、抜けたいという考えはなかったというリョウさん。やはり最初はあった罪の意識は消えていったという。金銭感覚が狂い、キャバクラ、パチンコの日々。しかし、ある日の早朝、自宅に警察が来て逮捕されたという。

 「目の前に何十人もいて、囲まれて逮捕された。仲間が1か月前に捕まっていて、僕にも内偵が入っているのは気づいていた。遊びに行ったりしている時に毎回同じような人がいるなと勘ぐり始めた。どうせ捕まるんだろうというのもあった。でも、否認したし、罪の意識もなくて、すぐ出られるんじゃないかと思っていた」。

■「また詐欺をやりたいと思う時もある」

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 「カゴダッシュ。ホームセンターで欲しいものをガンと積んで、そのまま持ってっちゃえと」。10代の頃に非行歴のある池田さん(23)は、窃盗の罪を犯すも捕まることがなく、先輩の彼女に手を出した男性を殴るという、別の罪を犯した。「家庭裁判所から通知が来た。被害届が来ていると呼び出されて、少年鑑別所に行くことになった」と明かした。それから4年、現在は建設業に就き、真面目に生活をしているというが、時折受ける世間の厳しい目が消えることはない。

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 出口氏は「非行少年と言われる人たちには、センセーション・シーキングというものがあって、次々と新しい刺激を求めていく中に非行があると考えられている。リョウさんとユウキさんの犯罪行為、非行について考えてみても、やはり刺激を求めていたのではないかと思う」と指摘する。

 少年院の更生プログラムには、生活指導「入院者の状況に合わせた矯正教育プログラムなど」、職業指導「資格・免許の取得など職業能力開発指導」、教科指導「小学校または中学校の学習指導要領に準拠した教科指導を行う」、体育指導「スポーツ等を通じて日常生活に必要な体力や技能を高める」、特別活動「福祉移設でのボランティアなど」がある。

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 出口氏は「少年非行に関連する色々な名称がつく役所があるが、少年鑑別所は純粋な調査機関で、心理分析の結果に基づき、どういう教育を与えればいいのか、大人と同じような罰を考えないといけないのか判断する。その先にあるのが少年院だ。家庭裁判所が少年院送致の決定をすると入ることになる。ただ、刑務所とは全く別で、刑罰を与えるものではなく、教育を受ける全寮制の学校のような機関だ。一人ひとりに個別的処遇計画というプログラムがあり、先生たちが熱心に指導し、感化を与え、どこがいけなかったのか忍耐強く自分で気がつかせる」と説明する。

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 少年院出院者の再入院率は、5年以内が16.5%(平成15~24年)、2年以内が11%(平成18~27年)だ。出口氏は「そもそも少年院まで行く子供は数%しか行かない。全部の非行少年の数%しか行かない。そこまで行ってしまった子どもが10%しか再犯しないことがどれほどすごいことかだ」と強調した。

 少年院での暮らしについて、「辛かった。僕は人と話すのがすごく苦手だ。社会に復帰するにあたってコミュニケーション能力がすごく大切だ。それが乏しくて、なかなか与えられた課題ができない。そういう所が厳しかった」として、二度と詐欺には関わらないと考えているユウキさん。これとは対照的に、リョウさんは「対人関係が一番の問題だ。やはりコミュニケーションが取れなくて社会に出てから悪さをすると、先生たちはそこを重点的に見ていてすごく厳しい」としながらも、「1回目の少年院はきつかった。2回目は楽しんだ。出てきた時、またやるつもりで出てきた。今も正直、お金がないので(詐欺を)やりたいと思う時もすごくある」と明かした。

 少年たちが犯罪に走ってしまう背景、そして更生のために必要なことについて、社会全体で考える必要があるだろう。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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