東京女子プロレス旗揚げから約6年、団体史上最大の闘いが決まった。中島翔子vs坂崎ユカのプリンセス・オブ・プリンセス選手権。その舞台は11月3日、両国国技館だ。
これはDDTの大会だが、初の試みとして系列全団体(DDT、ガンバレ☆プロレス、東京女子、BASARA)の合同イベントとして開催。各団体のシングル王座戦が行なわれる。これまでもDDTの両国大会で東京女子の試合が組まれることはあったが、今回はゲスト枠的な「提供試合」ではなく本戦のタイトルマッチだ。
久々のケニー・オメガ参戦もあって注目度が高いこの両国大会で、いつもの数倍、それも東京女子のファン以外に試合を見られる意味は大きい。王者・中島、挑戦者・坂崎という組み合わせも現時点でベストだと言える。
2人はともに旗揚げメンバーで、2013年12月1日の旗揚げ戦でもタッグマッチで対戦。タッグベルトを巻いたこともある。中島は今年5月にシングル初戴冠を果たすと、ここまで3度の防衛に成功した。9月15日にはNEO美威獅鬼軍の操を相手に防衛成功。コーナーからのダイブ、投げ、固め技とフィニッシュのパターンが多いオールラウンダーとして完成度を高めている。
対する坂崎もシングル、タッグ両方の戴冠歴があり、オールラウンダーであるところも同じだ。ただスピーディーな動きや「マジカル魔法少女スプラッシュ」など空中殺法が特に際立っている。中島曰く「私は四足歩行のアンギラスで、坂崎は(空を飛ぶ極彩色の)モスラ」。
このタイトルマッチは、中島からの指名によって決まった。団体初期からのタッグパートナーだけに、中島の坂崎への思い入れは強い。しかしそれだけが理由ではない。中島、坂崎、山下実優の3人が団体トップの実力者であることは誰もが認めるところ。最近では海外遠征も多くなってきた。中でも坂崎はケニーが副社長を務めるアメリカのAEWにたびたび参戦している。
活躍の規模が広がり、そのことで力を高めている今だからこそ闘いたい。そう中島は考えているのだ。
「今しかできない。今やりたい。今の東京女子の最高のものを私とユカっちなら見せられる」とリングでアピールした中島。インタビュースペースではこう語った。
「(坂崎は)一番認めてる相手だから、いつか大きい舞台でやりたいと思ってたんですよ。11月3日、両国国技館。今しかないなと思って。私は今が一番強い。坂崎はいろんなところで活躍してるじゃないですか。ひょっとしたら来年はできないかもしれない、同じ状況で。今しかできないんですよ。最高峰のものを見せられたら」
坂崎にも異論はない。こんな言葉で「中島vs坂崎」の意味を表現した。
「私たちは東京女子のプロレスに誇りを持ってます。東京女子の最高峰の試合を両国国技館で見せます」
中島も東京女子のクオリティ、自分たちの試合ぶりに自信を隠さない。
「世界に向けてというか、東京女子プロレスはどこでやっても満足してもらえる、誇れる団体です」
東京女子は新人だけでスタートした団体だ。“女子プロレスのお手本”がない中で研究と試行錯誤を繰り返し、独自の世界観を作り上げてきた。正攻法の試合もあればプロレスの枠組みを破壊するようなバラエティ色の強い試合もある。独自だからこそファンを増やしてきたのだ。
そして11月3日の中島vs坂崎は“タイトルマッチとしてのクオリティ”において団体史上最高のものになる可能性が高い。「自分が全力を出せる相手は中島翔子」と坂崎。中島は「見たらビックリすると思いますよ(両国の)お客さんは」と胸を張る。いつもは謙虚な中島がそこまで言うのは珍しいのだが、東京女子のファンなら全員が肯くことだろう。それだけの期待感がある一戦だ。
文・橋本宗洋
写真/DDTプロレスリング