19位のFC町田ゼルビア(勝ち点33)は29日、明治安田生命J2リーグ第33節で15位のFC琉球(勝ち点36)を町田市立陸上競技場に迎える。熾烈な残留争いのなか、直接のライバルである琉球とのシックスポインターは絶対に落とせない大事な一戦となる。
琉球のウィークポイントはセットプレー
今季からJ2に昇格した琉球との初対戦は4月27日にアウェイで行われた第11節。開始早々の3分、ゼルビアのボックス内にディフェンダーの枚数は足りていたが、相手のピッチの幅を使ったダイナミックな展開から「崩されたわけではない中での失点」(相馬直樹監督)を喫して追いかける状況に。前に出るゼルビアだがゴールは遠く、逆に琉球のカウンターに苦しめられるオープンな展開となる。それでも83分にセットプレーの流れから最後はMFロメロ・フランクのゴールでなんとかドローに。今季を象徴するような決定力不足と不運な失点に泣いた一戦だった。
あれから琉球の状況は大きく変わっている。ミスター・ゼルビアとして長年活躍し、今季は琉球へと活躍の場を移した鈴木孝司がシーズン途中にセレッソ大阪に移籍。27試合15ゴールと、ストライカーとして結果を残してきたエースの退団は大きく影響し、一時はJ1昇格争いに加わっていたチームが、鈴木退団後の6試合では1勝2分け3敗と大きく負け越している。
しかしネガティブな要素ばかりではなく、鈴木と入れ替わるようにチームに加入した元日本代表MF小野伸二が徐々に存在感を発揮している。MF上里一将とダブルボランチを形成し、裏への抜け出しがうまいFW山田寛人や2列目からゴール前に飛び込んでいくMF上門知樹らと良い関係性で攻撃のタクトを振るっている。ゼルビアにとっても、琉球のパスの出どころである小野に対しては、しっかりとケアしなければいけない。
一方でゼルビアも前回対戦とは大きく異なる。その1つが中島裕希の復帰だ。前回の琉球戦前に負傷した中島だが、第15節で復帰して以降は全試合に出場するなど今季もゼルビアに欠かせない存在。35歳ながらに衰え知らずのフィジカルとゴールに向かう積極性は、苦戦続きのチームに勇気を与えてくれる。
そういったメンタル面の部分だけでなく、戦術面でも琉球戦での中島は注目ポイントといえる。琉球のウィークポイントは間違いなくセットプレー。全失点のうち、セットプレーからの失点は全体の32%にも及ぶ。それだけに、ゼルビアにとってはいかにいい位置、いい状態でセットプレーを奪うかが大事になる。
シーズン序盤はサイドハーフでの起用も多かった中島だが、現在は本来のFWの位置でプレーしている。よりゴールに近い位置で持ち味のドリブルを仕掛けることができるため、サイドハーフでのプレーよりも相手に脅威を与えられる。中島のドリブルが止められたとしても、ゴールに近い位置でFKを獲得する可能性は高まる。
また、琉球の失点パターンはセットプレーからの直接的なもの以外にも、こぼれ球を拾われて決められる場面も多い。前回対戦のロメロ・フランクのゴールがそうだったように、ゼルビアはセットプレーの二次攻撃にも気を使いたい。特にゼルビアには球際に強いファイターが多いだけに、今節はセットプレーでいかに集中できるかが勝敗を左右する。
敵地では悔しいドローに終わったゼルビア。ホームではその悔しさを晴らせるか――。大事なシックスポインターを制して、3月30日以来となるホームでの勝利をサポーターと分かち合いたい。
文・川嶋正隆