30日、東京・一ツ橋ホールにて映画『ひとよ』映画サイト連合レビュアー試写会が行われ、その後のトークショーに本作のメガホンを取った白石和彌監督が登壇。佐藤健、鈴木亮平、松岡茉優を三兄妹役で抜擢した理由を明かした。

これまで『凶悪』や『日本で一番悪い奴ら』、『孤狼の血』『彼女がその名を知らない鳥たち』など、現代社会に刃を突き立てるような作風で人や社会の闇・弱さをエンターテインメントに昇華し描いてきた白石監督。本作は、一夜にして激変する家族の運命を通し、尊くも時に残酷な“家族の絆”と“究極の愛”を描くヒューマンドラマで、白石監督が初めて真正面から「家族」というテーマを描く。
どしゃ降りの雨降る夜、ある家族に起きたひとつの事件。それは、母親とその子どもたち三兄妹の運命を激変させた。その夜から、心の傷を抱えたまま別々の人生を歩んだ家族は、15年後に再会。葛藤と戸惑いの中で、一度崩壊した家族の絆を取り戻そうともがき続けた先に訪れる結末とは―――。

本作で殺人犯の母親を持つ複雑な三兄妹を演じたのは、白石組初参加となった佐藤健、鈴木亮平、松岡茉優。意外なキャスティングだが、白石監督は次男・雄二役に佐藤を抜擢した理由について、「雄二は一番ツンツンしてるんですけど、めくってみたら母親の言ったことに一番とらわれていて、母親のことが大好き。家族のことも一番よく考えている。そのツンデレな感じが合うと思った。健くんは普段クールでかっこいいし、油断すると美しい(笑)。そんな彼が、映画のことやお芝居のことになると誰よりも熱いものを持っている人だと思っていたので、その彼のキャラクターが雄二とシンクロするのではないかと。それと、僕が単純にお仕事をしてみたかったというのもあります」と説明。以前より佐藤に興味を持っていたことを明かした。
長男・大樹役の鈴木のキャスティングについては「個人的な話で申し訳ないのですが、僕は背が小さいんですけど、弟は背が高い。その自分の感じも投影して、(体格や印象で佐藤とコントラストができるよう)鈴木亮平くんはどうだろうと思いました」と佐藤とのバランスを見て考えたと告白。さらに、吃音症のせいで人とのコミュニケーションが苦手という難しい設定の大樹には、役作りに定評のある鈴木に任せたいと考えオファーしたと語った。
鈴木の入りこみっぷりを知る白石監督は「実は(鈴木出演の映画)『燃えよ剣』の撮影があって、そのすぐ後にこっちの現場に入らなければいけなかったそうなんです。なので、『燃えよ剣』の前から吃音の練習をしていたと。…近藤勇、吃音にならないですかね?(笑)」と冗談交じりに心配。「役に向き合う感じが良かった」と、常に全力で役と向き合う鈴木の姿勢を絶賛していた。
また末っ子・園子役の松岡茉優についても「年齢的には離れているんですけど、彼女の腹の座り方が園子(に合う)」と全幅の信頼。「本人はお酒も全然飲まないんですけど、いい感じに田舎のスナックでくすぶってる感じ、酒焼けしているような感じも想像できた」と抜擢理由を語っていた。
映画『ひとよ』は11月8日(金)より全国公開。
テキスト・写真:堤茜子



