（タッグ王座奪取のみならずCDデビューも目論むという上福＆白川）
タッグ結成以来、いまだ無敗のNEO美威獅鬼軍、沙希様＆操が意外なピンチを迎えている。
10月19日の両国KFCホール大会、保持するプリンセスタッグ王座の防衛戦として、美軍は上福ゆき＆白川未奈との対戦が決まった。
上福、白川どちらも芸能界からプロレスに挑戦。“闘魂Hカップグラドル”白川は9月にデビュー1年あまりでベストボディジャパンプロレスの初代女子王座を獲得した。現在はプロレス最優先のスケジュールで活動しており、フィジカルトレーニングにブラジリアン柔術と練習熱心ぶりでも知られる。
逆にかみーゆこと上福はプロレスについての知識がなかったからこその自由なファイトを展開。笑いの量が多めの試合を重ねてきたが、長身から繰り出すドロップキックなど随所に能力の高さを感じさせもする。最近はその2つの要素が噛み合い、エンターテインメント性と勝負論が両立する選手に成長してきた。沙希様を「サキリン」と呼ぶ上福。憧れのような感情もあるだけに、越えたい壁でもあるという。
「私は強く、楽しく、美しく試合がしたいと思っていて、それはサキリンからのインスピレーション。（沙希様は）東京女子に入って初めて自分で見つけた目標というか壁。強くて美しい壁を未奈ちゃんと一緒に登りたい」（上福）
（「10.19に一点集中、私はこのベルトに相当夢中」とラップで美軍を圧倒してみせた白川。主張しなければ埋もれるのが東京女子のリングだ）
白川は昨年秋から東京女子に参戦、経験値の違いを痛感しながら奮闘し、シングル初勝利もこのリングであげた。すでにタイトルホルダーの白川だが、思い入れのある東京女子での存在感を増すためにもベルトがほしいところ。2冠王になって「ベルトグラビア」を披露したいという野望もあるようだ。
ちなみに最近の白川は会見などのアピールでフリースタイルラップを連発。美軍への挑戦表明に続いて公開調印式では「ベルトはアクセサリーでもランジェリーでもない」とベルトグラビア計画を操に批判され、即興で新曲「アクセサリーからのランジェリー」をカマしてみせた。
キャラクターは濃いもののあくまでプロレスの実力で結果を残してきた美軍は、上福＆白川の奔放ぶりに憮然とするしかない。調印式が行なわれた9.28板橋大会では沙希様＆操vs上福＆桐生真弥のタッグマッチが組まれ、真弥が敗れたものの試合内容でも上福が大健闘。セコンドについた白川は「ベルトを獲れると確信しました」と語っている。
「お試愛（試合）になったらそんなことは言わせない」という沙希様だったが、ペースを乱されているように感じるファンも多いはず。やはり高貴なご身分であらせられる沙希様には、ストリート発祥のヒップホップは相性が悪かったのか。
（試合ぶりでも本番への期待を抱かせる上福。長い脚を使った攻撃で沙希様と張り合う）
東京女子の選手たちは個性豊かだが総じて“まっすぐ”。それだけにいい意味でクセのある上福＆白川との闘いは美銀にとって勝手が違うのだろう。異色の挑戦者チームを迎えたがゆえの、王座陥落の危機と言っていい。
この試合の勝者には、11月3日の両国国技館大会、DDTグループ全団体が集結するビッグマッチでの防衛戦が待っている。その意味でも興味深いタイトルマッチだ。
「両国でタイトルマッチとなったら美軍じゃないと」とも言い切れない。上福＆白川も、初見の観客に「なんだか凄え団体だな、東京女子プロレスって」と思わせるだけのポテンシャルを秘めているのだ。
文・橋本宗洋
