この記事の写真をみる(2枚)

(体格で上回るSAGATに渾身のレッツ・コンバインを決めた関根。2度目の防衛を果たした)

 DDTグループの全ブランドが集結する11月3日の両国国技館大会では、KO-D無差別級とEXTREME級のダブル王座戦をはじめ、数多くのタイトルマッチが組まれている。

 その一つが、ユニオンMAX選手権だ。ユニオンMAXは木高イサミ率いるプロレスリングBASARAのシングル王座で、前身であるユニオンプロレスから受け継いだもの。その歴史も含め、団体の“至宝”と言っていい。

 現在、ベルトを巻いているのは関根龍一。BASARA旗揚げとともにKAIENTAI DOJOから移籍してきた選手で、イサミ同様に大日本プロレスのデスマッチ戦線でも活躍している。

 柔道部員のような坊主頭、言葉には東北訛りが残る(福島県出身)。見た目そのままの朴訥なナイスガイは、ファイトスタイルもストレートだ。得意技は蹴り技にレッツ・コンバイン(抱え込み式逆エビ固め)。殴って蹴って投げて固めての闘いは感情移入しやすい。いわば“性格が伝わってくるプロレス”だ。

 元タッグパートナー、中津良太の最多防衛記録達成を阻止した関根は、8月にイサミを下して初防衛。9月24日にはSAGATとのタイトルマッチもクリアした。SAGATも“直球型”のレスラーだけに、2人の闘いは期待以上の打撃戦、肉弾戦となった。

 お互いの“らしさ”を貫いた上でレッツ・コンバインにより勝利した関根。試合後のリング上に突如現れ、挑戦表明したのがDDTの高梨将弘だった。

拡大する

(関根は8月の初防衛戦で団体代表のイサミにも勝利。充実期を迎えていると言っていい)

 関根とSAGATの試合、その熱気を感じて「ここだ」と思ったという高梨。以前からイサミとの対戦を希望していたが、現時点では「関根からベルトを獲るだけ。その先の展望とかは考えてない」。BASARAとDDTの対抗戦というつもりもなく、あくまでチャンピオンとしての関根とBASARAという団体に魅力を感じての行動のようだ。

 これに関根も「あんたが一人で来た以上、俺も一人で敵地(DDT両国)で防衛戦やってやる」とまっすぐに返す。こうしてインディーファンになじみ深い選手同士による、新鮮なタイトルマッチが決まった。DDT、BASARA以外の興行では顔を合わせることも多い2人だが、これがシングル初対決だという。しかも両国国技館でのタイトルマッチ。インディー戦線を生き抜いてきた先に、最高の大舞台が待っていた。

 愚直で無骨な関根に対し、高梨はスマートさを極めたような選手だ。グラウンドテクニックにインサイドワーク、メインイベントでのタイトルマッチも多人数タッグで脇を固める立ち位置もお手の物。それでいて単なる“通好み”な選手ではなく、昨年のDDT総選挙では1位になっている。

 関根からすれば、そんな高梨に勝ってベルトを守ることには大きな意味がある。SAGATを「デカくてパワーがあって、自分に似て不器用。そこを凄い認めてます」と評したように、不器用さも強みになると信じてここまできたのが関根龍一というレスラーなのだ。不器用を魅力に転じさせるのがBASARAの魅力だと言ってもいい。

「(高梨という)最高の相手が来ましたね。ウチらの試合見て魅力があると思ったから来たってことですよね。その魅力を両国で全部伝えたい。これはBASARAの代表としての闘い。こんな不器用なヤツがいて面白い団体なんだっていうのを見せつけてやりますよ」

 BASARAは新会社を設立し、今年いっぱいでDDTグループから完全独立する。両国は絶好のアピールの場だが、敗れれば新体制をシングル王座なしで迎えるリスクもある。ケニー・オメガの参戦もあっていつも以上に話題が豊富な11.3両国。その中で、関根vs高梨が持つインディーならではのドラマ性も見逃せない。

文・橋本宗洋

この記事の写真をみる(2枚)