人気アニメ「クレヨンしんちゃん」の人気キャラクター・シロが活躍する「SUPER SHIRO」が10月14日から、配信開始となる。野原家の飼い犬「シロ」が実は世界の平和を守るスーパーヒーローだったというストーリーで、「クレヨンしんちゃん」の劇場版に数多く参加してきた湯浅政明総監督は「地味なキャラクターが、派手なことをやったらおもしろいと思った」と語るように、普段は極々普通の犬であるシロが、野原家、春日部市どころか、世界のために戦うというギャップが、注目ポイントになっている。ともに手掛けた霜山朋久チーフディレクターにも、シロを中心に繰り広げられる1話5分・全48話のドタバタストーリーについて話を聞いた。
「クレヨンしんちゃん」本編でも、度々活躍するシロ。個性が強い野原家にあっては、数少ない常識人(犬)で、おバカな一家のピンチを救うことも。それでも湯浅総監督が「結構地味なので」と企画段階で考えた末、たどり着いたのが、実はスーパーヒーローという設定だった。
湯浅政明総監督(以下、湯浅) 人知れず、犬たちが世界の覇権争いをしている設定でキャラを考えて。脚本家のうえのきみこさんや霜山くんと一緒にスト―リーを考えてゆきました。
霜山朋久チーフディレクター(以下、霜山) すごく楽しいですよ。いっぱいある要素を5分に詰めているので、中だるみせず、ずっとテンション高いまま、走り抜ける楽しい作りになっていると思います。
シロは、世界を守るために活躍。伝説の骨のような未知のエネルギー体「ボボボボボーン」を巡って、世界征服を企む発明犬・デカプーとシロが壮大な追いかけっこを繰り広げる。イメージしたのは、短編アニメの名作「トムとジェリー」のような、スラップスティック作品だ。
湯浅 毎回2人が「ボボボボボーン」を取り合うんですけど、そこにどれだけ内容を入れられるか、または入れられないか。セッティングを変えて、毎回楽しんでもらうようにしています。
霜山 湯浅さんや、うえのさんが、どんどん話が盛り上がっていくんですよ。「あれやろう」「これやろう」って。たぶん入り切らないから、他の話数でやりましょうってこともありましたね。
2人(犬)が、毎回ドタバタ劇を繰り広げるその様子だけでも、十分に楽しめる内容になってはいるが、そこは数々のアニメ作品を手掛けてきたスタッフたちだけに、こだわりが違う。
霜山 企画立ち上げのころから、本編とは違う色を出したいねとは話していました。キャラの色も、背景の色も。あと「SUPER SHIRO」は犬のたちの世界なので、カメラ位置も人間目線ではなくて、犬目線に落としたものになっています。
愛らしいシロの話ではありながら、ヒーロー語り(スーパーシロの心の声)に大御所声優・大塚明夫を起用したあたりは、ギャップを狙ったものだ。
湯浅 シロが、そんなにかっこいい声を出す感じじゃないので。でも、心の中の気持ちのアツさは出した方がいいだろうと。シロが、ヒーロー然としゃべっていて、そのキャラが追いついていないあたりが、「クレヨンしんちゃん」らしいかなと思っています。心はアクション仮面だけど、実際はシロ、みたいな感じですね。
出演する声優も豪華だが、楽曲の使い方は映画クラスのこだわりようだ。
霜山 このお話は、音楽ネタが結構入ってるんです。昔で言うと、ドリフみたいな感じでしょうか。作品のウリでもあるし、大人も楽しめると思います。
湯浅 音楽と合わせて作っている部分が多いです。これだけ合わせたアニメシリーズは、ほぼないんじゃないでしょうか。
大きなポイントは「フィルムスコアリング」。多く作品は、ある程度楽曲が作られた後、アニメのシーンに当てはめていくが、SUPER SHIROについては逆。アニメの映像に合わせた楽曲が、後から作られていった。
霜山 映画以外だと、やっている作品はほぼないですね。なので、贅沢レベルと聞かれたら、劇場版レベルになります(笑)
湯浅 音楽ネタ、結構ありますからね。サラッと、すごいことやっています(笑)
シロを中心に繰り広げられるハイテンションアニメ「SUPER SHIRO」。1話5分という短尺とは思えないほど、プロの技とこだわりが凝縮した作品だ。
(C)臼井儀人/SUPER SHIRO製作委員会