関東を通過後、東北地方にも大きな被害をもたらし、14日午前の時点で50名が犠牲になった台風19号。AbemaTV『AbemaPrime』では、街の中心部を流れる阿武隈川の氾濫により広い範囲が浸水、県内で最も多い７名が亡くなった福島県本宮市を取材した。
12日の夜から明け方にかけて自宅の１階部分がほぼ水没、２階でペットとともに１日半を過ごしたという菅野雅夫さんは、水、電気、ガスのすべてが使えない状況の中、ランタンや懐中電灯で灯りを取り、カセットコンロで餅を焼いたり、お湯を沸かしたりして二夜を明かした。水が引いた14日朝、久しぶりに１階降りた。「水位が１時間ほどで上昇し、２階まで階段のあと３段ぐらいのところまで来た。１階は全ての家具類・電化製品がバタバタ倒れていて、本当にひどかった」。
水が引く前には自衛隊がボートでやって来たが、救助は断った。「老犬で弱っているので、環境を変えるとかわいそうかなというのもあったし、避難所には人がいっぱいいる。家にいた方がいいのかなと。やっぱり避難所だとプライバシーもないし、硬い所に雑魚寝だと思うので、いつもの寝慣れた場所がいいなと思った」。
次に取材したのは、築105年、"東北最古の映画館"として知られ、映画ファンからも被害を心配する声が寄せられている「本宮映画劇場」だ。55年前に一度は閉館したものの、父から建物を受け継いだ館長の田村修司さんは見学者に無料で自身の編集した作品を試写したり、イベントに貸出したりしている。
田村さんが浸水に気づいたのは、自宅で就寝中の夜12時頃。「電気が消えたから"おかしい"と思って見てみたら、ベッドの下まで水が来ていたので、びっくりして二階に避難、朝まで過ごした。家の中はまだ泥だらけ。80年前の水害も、庭までしか来なかった」。一方の映画館は土地が高いため、浸水は田村さんの膝下くらいまでで済み、映写室に設置されている映写機も無事だった。しかし前方の座席は浸水してしまい、知人の助けも借りて劇場内に溜まった泥をかき出したが、処理に困っている。「27日にコンサートが予定されていて、前売り券も全て売れてしまっているので、それまでにはなんとかしたい」。
東日本大震災以降、福島県に足繁く通うカンニング竹山は「片付けた後はカビの問題なども出てくるだろう。これは相当時間がかかると思う」、自民党の小林史明衆議院議員は「菅野さんの例のようにペットを避難所に連れていくのは心配だし、床に寝なければいけないので避難所に行きたくない、という点は政治・行政の課題だ。上の階などに行く垂直避難ができなかったとしても、避難所に行けば安全だし色々な情報も得られるが、残念ながら日本の避難所は行きたくない場所になってしまっている。ここを変えなければいけない」とコメント。
釜石市地方創生アドバイザーの藤沢烈氏は「関東の皆さんには"関東に来た台風"というイメージが強いかもしれないが、広域の被害だということを知ってもらいたい。岩手ではラグビーW杯に合わせて三陸鉄道が全線開通したところだったが、こちらでも浸水被害が起きている。ご自宅が２階建ての場合はいいが、３年前の台風で浸水被害にあった岩手の岩泉町では、１階建ての老人ホームで９名の方が逃げられずに亡くなった。浸水被害があるような地域で１階に暮らす方には課題が残ったと思う。釜石の場合、津波による浸水がまた起きるということを想定して、復興住宅では１階部分を駐車場にし、住まないようにしていたため、今回は住宅部分への被害は無かった」と指摘。
また、被災地域へのボランティアに行きたいという人については、「今は災害直後なので緊急救命の時期だ。ご友人がいるといった場合は構わないが、ボランティアに関心がある方も、全く知らない土地に行くのは少し控えて、状況を見てから行っていただきたい。ボランティアセンターが各地域にできるので、社会福祉協議会サイトを見て、受け付けているかという情報を見る必要があるし、最初は地域外の人を受け付けないようになっているので注意が必要だ。また、基本的に物は送らず、募金が一番だ」と呼びかけた。（AbemaTV／『AbemaPrime』より）
▶映像：水が引いた福島県本宮市を緊急取材（期間限定）
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