「即位礼正殿の儀」で国内外に即位を宣言された天皇陛下。黄櫨染御袍(こうろぜんのごほう)と呼ばれる装束で玉座・高御座(たかみくら)から
「さきに、日本国憲法及び皇室典範特例法の定めるところにより皇位を継承いたしました。ここに「即位礼正殿の儀」を行い、即位を内外に宣明いたします。
上皇陛下が三十年以上にわたる御在位の間、常に国民の幸せと世界の平和を願われ、いかなる時も国民と苦楽を共にされながら、その御(み)心を御自身のお姿でお示しになってきたことに、改めて深く思いを致し、ここに、国民の幸せと世界の平和を常に願い、国民に寄り添いながら、憲法にのっとり、日本国及び日本国民統合の象徴としてのつとめを果たすことを誓います。
国民の叡智(えいち)とたゆみない努力によって、我が国が一層の発展を遂げ、国際社会の友好と平和、人類の福祉と繁栄に寄与することを切に希望いたします。」
とのお言葉を述べられた。
皇室ジャーナリストの山下晋司氏は、陛下が「国民の幸せと世界の平和」という2度述べられたことについて、「国事行為である重要な儀式でもあり、上皇陛下が即位された際と同じようない言葉になるだろうと思っていたし、“国際社会の友好と平和”ということについても結びの部分で入ってくるだろうと思っていた。ところが今回、それが早い段階で出てきたので、強調されているのかなと感じた。30年の間に国際情勢も変わってきたし、皇室の国際親善が重きを増してくるだろう。その意味で、政治とは離れたところで世界の平和を祈りたいというお気持ちがよく表れているとは思う」と話す。
今回の「即位礼正殿の儀」には、韓国の李洛淵(イナギョン)首相、ミャンマーのアウン・サン・スー・チー国家顧問、イギリスのチャールズ皇太子、中国の王岐山国家副主席、香港の林鄭月娥行政長官など、海外からも多くの要人が出席した。その数、191カ国と国際連合やEUなどから423人に上っている。
この点について元外交官の宮家邦彦氏は「皇室の慶事だけに、日本政府はフラットに各国を招待したはずだ。それに対し、相手国が“誰を派遣したか”でその思惑を推し量れる場合もある。例えば韓国の李首相は、即断即決はしないものの日韓関係について突っ込んだ話ができる相手だし、中国の王副主席は、無難で網羅的な話ができる相手だ。そして対米関係で緊張しているイランからは法務担当のジョネイディ副大統領が出席した。ここは安倍総理の中東訪問でも進展は見られなかったし、特に政治的な意図はないだろう。また、シリア北部への侵攻により国際的な非難を受けているトルコが本気ならば、エルソイ文化観光大臣ではなく大統領自ら来日しただろう。これも、今回は政治的な話は想定していないということだ」と推測した。
山下氏は「日本としては“どなたかに参列していただきたい”ということなので、参列者がどういう方なのかで日本の国際社会における地位や、どのように見られているかが窺える。また、王室と皇室との関係もある。ヨーロッパの複数の国からは国王自らが参列された。オランダやスペインでも2010年代に国王が新たに即位されているので、これから先20年、30年と変わらない関係になる。非常にいいことだ」とコメントした。
また、お言葉で注目されるのが「国民と寄り添う」という箇所だ。
山下氏は「よく、“開かれた皇室”と言われるが、これはマスコミが作った言葉で、皇室や宮内庁は使ったことはない。ただ、時代が移り変わる中、国民の価値観も変わってくるし、それとともに天皇・皇后のあり方も変わっていく。象徴天皇・公務へのお考えという点では、上皇陛下が「国民と共にある皇室」というお考えに対して、天皇陛下は「国民の中に入っていく皇室」というお考えだ。これは皇太子の時からおっしゃっていたことでもある。より一歩踏み込まれた言葉にも受け取れるし、一層近づいていくのかなとも感じる。伝統と、今の時代とのバランスをどう取っていくかだ」と説明する。
そうした天皇陛下のお考えを象徴する1枚の写真がある。皇太子時代の2017年6月、デンマークをご訪問された際に地元の方と撮影した“自撮り”だ。当時、これまでの皇室では考えられなかった対応として大きな反響を呼んだ。
「日本国内でお出ましになられる時と、外国を訪問されて歩いておられる時とは、やはり雰囲気も国民性も警備の様子も違う。日本国内でやればおそらく批判されたと思う。しかし時代の流れの中で、将来的には日本の中でも起こる可能性はあるだろう」(山下氏)。
▶映像:山下氏による解説
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