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(エンディングで実現したHARASHIMAとケニーの2ショット)

 DDTのビッグマッチ、11月3日に開催された両国国技館大会は、これ以上ないほど美しい大団円となった。

 全82選手が出場した特大イベント、そのメインはKO-D無差別級王者の竹下幸之介とDDT EXTREME級王者のHARASHIMAによるダブルタイトルマッチだった。KO-D無差別級の最多防衛記録を持つ“新世代エース”竹下に対し、HARASHIMAはDDTを初期から支えてきた“不動のエース”だ。

 しかしHARASHIMAは2年前に竹下に敗れて以降、KO-D無差別を戴冠していない。ここでHARASHIMAが王座に返り咲くか、それとも“竹下一強”時代が完全に確立するか。この試合はDDT戦線そのものに影響する重い意味があった。

 試合を支配したのは若い竹下だ。前哨戦で何度も見せてきた腰への集中攻撃がここでも冴え渡る。その迫力、説得力はHARASHIMAファンに悲鳴をあげさせるほど。執拗に仕掛けたウォール・オブ・タケシタ(逆エビ固め)で、HARASHIMAはギブアップ寸前まで追い込まれた。窮地のベテランを支えたのは、同じ時代をすごしてきた仲間たちだ。セコンドについた大鷲透、会場の奥ではガンバレ☆プロレス代表の大家健、BASARA代表・木高イサミ、フリーとなったヤス・ウラノが見守る。ウォール・オブ・タケシタで追い込まれた場面でリングサイドに駆け寄ったのはKUDOだ。

「ユニットのみんなの応援、同世代の仲間たちの応援、それにお客さんの応援があるから勝てました」

 そうHARASHIMAは語っている。声援を受け、また竹下の圧倒的力量に呼応するように、この日のHARASHIMAは大一番ならではの技を次々と繰り出し、反撃していった。

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(追い込まれたHARASHIMAに盟友にしてライバルのKUDOが駆け寄る)

 エプロンでの蒼魔刀。得意のリバース・フランケンシュタイナーはコーナーから雪崩式で叩き落とした。蒼魔刀は背後から、スワンダイブ式と多彩なバリエーションで。竹下の両手を掴んで放った一撃は、いわば“カミゴエ式”か。

 そしてフィニッシュは正調・青魔刀。最後までリングに立っていたのはHARASHIMAだった。“復活”の勝利と言っていいだろう。ただHARASHMA自身には衰えたつもりはないし、竹下の実力もすでに充分認めている。「若い者には負けられない」という気持ちはなかった。

「また何度でも試合して、DDTを盛り上げていこう。そのためには君の強いプロレスが必要です」

 試合後のHARASHIMAは、竹下にそう語りかけた。一方の竹下には、悔しさだけでなくベルトから解放されたという感覚もあったようだ。今後の竹下が“自由”な立場で何を見せていくかも興味深い。

 大会エンディングには出場選手たちがリングに登場。最後に残ったのはHARASHIMAと、久々の古巣参戦を果たしたケニー・オメガだった。その光景から感じられたのは、DDTの歴史だ。ケニー、KUDO、イサミに大家に大鷲、ウラノ。両国という舞台にファン。この試合でHARASHIMAを後押ししたのは、DDTの歴史だった。HARASHIMA自身に“世代闘争”のつもりはなかったというが、現役バリバリでありながら歴史を味方につけてしまったのだから、その強さはとてつもない。

 ケニーとの対戦に関しては「リングで闘い続けていれば、そういう出会い(対戦)もあるのかなと。僕は急がないです」とHARASHIMA。急がないということは、つまりまだまだトップを走り続けるということだ。

文・橋本宗洋

写真/DDTプロレスリング

▶映像/HARASHIMAが激勝! 竹下を下して二冠達成

竹下幸之介&KO-D王者HARASHIMA
竹下幸之介&KO-D王者HARASHIMA
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