元“歌のお兄さん”も薬物で再犯…専門家「“刑罰より治療を”が世界的な流れ」
【映像】ABEMAでみる
この記事の写真をみる(3枚)

 有名人による薬物事件が相次ぐ中、共同通信によるとNHKの「歌のお兄さん」を務めた沢田憲一被告が、大麻所持と覚せい剤使用の疑いで逮捕、起訴されていたことが分かった。

 1996年から数年間、NHKの「歌のお兄さん」として活動した沢田被告は、今年5月、兵庫県伊丹市の自宅で大麻およそ0.1gを所持した疑いで9月4日に逮捕され、その後の尿検査により、覚せい剤の使用も裏付けられたため再逮捕されたという。すでに両方の罪で起訴されているが、2018年9月には覚せい剤取締法違反の容疑で逮捕され、執行猶予付きの有罪判決を受けていた。

 覚せい剤の入り口となる「ゲートウェイドラッグ」とも呼ばれている大麻は。薬物・大麻での検挙者数の推移を見ると、覚醒剤や麻薬など薬物事犯全体での検挙者数が横ばいの中、大麻は増加している。筑波大学の原田隆之教授は「単純に比較するのは難しいが、大麻の依存性は覚せい剤に比べればやや低いものの、入手しやすさがある。害がないというような噂が広がっていて、敷居が低いのはあるかもしれないし、密売している人がヘロインやコカインより多く、育てている人もいる。薬物全体の検挙者数が2018年は約1万3000人で、そのうちの1万2000人くらいが覚せい剤なので、覚せい剤に比べて絶対的な使用者は少ないのではないか。ただ、逮捕されているのは氷山の一角なので、本当はこの何倍も隠れて使用している人がいると思う」

元“歌のお兄さん”も薬物で再犯…専門家「“刑罰より治療を”が世界的な流れ」
拡大する

 近年、大麻をめぐっては、合法化についての議論も盛んだ。

 「“大麻って、なんかかっこいいな”というイメージがあると、まさにハードルが下がる。逆にシンナーが減っているのは、ダサいというイメージが付いたからだ。実は大麻を合法化している国は世界でまだ3つくらいしかなく、まだまだ例外だ。国連条約でも大麻は違法だと定められている合法化した国ではヘロインなどハードなドラッグの蔓延がひどく、大麻までは手に負えないという面があるからではないか」。

 一方、原田氏は「国際的には公衆衛生の問題、医療の問題ということで、刑罰以外のアプローチをしようということで、合法化よりも非刑罰化という動きがある」と指摘する。

 「実際に海外では、厳罰ではなく治療を優先させる動きがある。ポルトガルでは2001年に世界で初めて、全ての薬物の個人の所持や使用について“罪に問わない”という政策に舵を切った。その結果、薬物の使用者数が減ってきた。世界の80以上の国や地域で、薬物政策のこうした考え方を取り入れるようになってきている。たとえばヘロインは少量の使用で死んでしまうし、注射の回し打ちによるHIV感染などの問題がある。そこで捕まる恐れを無くすことで、使用者が治療を求めやすくする。国連の決議でも、刑罰よりも治療ということを各国の政府に推奨している。日本はまだまだそういう状況になっていないのが非常に残念だ」。

 また、田代容疑者が出演、薬物依存について語るNHKの番組が視聴できなくなっていることについては「確かに“使ってはいけない”というメッセージを流していた人が使ったという矛盾はあるが、彼が薬物の怖さと闘っていた様子を赤裸々に話していたのであれば、今回のこととは別に、きちんと残しておくべきではないかと思う」と話していた。

元“歌のお兄さん”も薬物で再犯…専門家「“刑罰より治療を”が世界的な流れ」
拡大する

 自身もギャンブル依存症で悩んだ過去を持つ、元経産省キャリアの宇佐美典也氏は「大麻を違法にしているのは、大麻に危険性があり、使った人を救うためだと理解している。また、大麻や覚せい剤を使った人を“こいつは人間失格だ!”“薬物をやったら人間のクズだ”と捉えるのではなく、“ここで止めさせて、ここから救い上げないと。この人を応援してあげないと”と捉えなければいけないと思う」と話していた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

▶映像:元歌のお兄さん"大麻所持"で逮捕 薬物根絶について解説

元歌のお兄さん"大麻所持"で逮捕 薬物根絶について解説
元歌のお兄さん"大麻所持"で逮捕 薬物根絶について解説

■Pick Up

【Z世代に聞いた】ティーンの日用品お買い物事情「家族で使うものは私が選ぶ」が半数以上 

この記事の写真をみる(3枚)