2009年、EXILE AKIRAは園子温監督作『ちゃんと伝える』で長編映画初主演を飾った。国民的人気グループのパフォーマーでありながら、片手間ではなく一俳優として存在するため、認められるため、自分自身に胸を張るため、モデルケースのない道を五里霧中で歩んできたAKIRA。

 あれから10年がたち、いくつもの主演作、ハリウッド映画への出演にいたるまでを、その手に収めた。その道は、いつかきた道だったろうか。10年間分の赤裸々な思い、この先の思いを独占インタビューした。

ほかの俳優にはない、EXILE AKIRAならではの思い

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――お忙しい中、ありがとうございます。

EXILE AKIRA: とんでもないです、よろしくお願いします。

――AKIRAさんの俳優のキャリアについてお伺いしたく。園監督の『ちゃんと伝える』で主演映画デビューを飾ってから10年が経ちました。今は本当にビッグネームのAKIRAさんですが、当時、様々な声があったりしながらも着実に積み上げてきた10年だったのかと考えます。ご本人はどう捉えていますか?

EXILE AKIRA: 俳優をやり始めた頃は、今でもですが、本当に作品作りに一生懸命向き合っていましたし、EXILEの外に出ることが、自分がEXILEに持って帰るお土産であり、EXILEでの自分の役割であり、という感覚でした。だから、俳優というところに、とても執着していた時期もありましたし、ある意味、そういうところに追い込まれていた時期もあります。でも、本当に僕はほかの俳優さんの、10分の1ぐらいのキャリアしか、まだ積めていないと思うんです。その中でも、とてもありがたい作品ばかりに携わらせてもらったという感謝の気持ちでいっぱいです。

――10年目にして、気づいたことはありますか?

EXILE AKIRA: 10年目にして、やっぱり僕は「EXILE AKIRA」なんだなと気づきました。年がら年中、毎日俳優という世界に携わっている自分の立ち場でなく、メインはEXILE TRIBEやLDHの活動で、さらなる表現の磨きということで、俳優もやらせてもらっていたんです。けれども、やっぱり自分たちのEXILEというところが主軸であり、名字ですから。切っても切れませんし。いくら俳優に憧れたり、俳優ぶっても、やっぱり僕は「EXILEのAKIRA」なんです。

以前はたくさんの作品を積み上げて、来年作品がないと不安という感覚もあったんですけど、ここ3年ぐらいは、EXILEやEXILE TRIBEで培う年輪、人間力、経験というものは、ほかの俳優さんには経験できないことだと気づいたんです。そこで、自分が何かを身につけた醸しというか、自分の中での深みがスクリーンに映れば、それが僕なりのオリジナルの俳優像なのかな、と思いました。そこに映ったときに、自分がEXILEの活動で日々磨き上げていって、何か成長していられたらと思います。自分なりの俳優像が何だろうという感覚では、10年目にして感じてはいますので、すごく、今楽しいです。

――少し前までは役や作品、俳優というもの自体を追いかけていたが、今は逆のようなイメージですね。

EXILE AKIRA: そうですね。俯瞰で見れる部分もありますし、それよりもっと大事なことがあるんじゃないか、というふうな。「それよりも大切なものって何だろう」、「リアリティって何だろう」、「お客さんが喜んでくれることって何だろう」と考え出すと、自分の選択肢も変わってきます。でも、それは、この10年間、いろいろな役をやらせてもらったからこそ気づけたことです。

――非常に忙しく、もしかしたらがむしゃらだったかもしれない時代を経て今の心境に至ったこと、感慨深いです。

EXILE AKIRA: ありがたいことに、本当に途切れず、寝る間もなく映画やドラマをやらせてもらったからこそ、だと思います。俳優でもない自分が、俳優の畑で感じられたのは、とてもありがたいことだと思いました。それでいて、自分の中で大切なのは、やっぱりEXILEという名字を持ってるところだと一番に思えたこと。そこが、ここ3年ぐらいで、すごく意識的に変わったのかなという感じではあります。

『Beautiful』で三池崇史監督と初タッグ 思い悩む人々への寄り添いの映画

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――最新出演作『その瞬間、僕は泣きたくなった-CINEMA FIGHTERS project-』内、主演『Beautiful』についても、お聞かせください。初めて三池崇史監督とご一緒されましたが、バイオレンス色ゼロの非常に心温まるストーリーでした。

EXILE AKIRA: 三池監督はバイオレンスから、歌舞伎から、Vシネマから、アニメ物の実写から、本当に幅広くやられている方でしたので、今回『CINEMA FIGHTERS』で自分とタッグを組んで作品を撮るとなり、「どんな三池崇史ワールドが生まれるか」が、楽しみでしょうがなかったんです。きっとね、三池監督から想像するバイオレンスとは違う角度でくるかなと期待していたところもあり、まったく違う角度からのファンタジーを手掛けてくださって、うれしい展開でした。とても静かで、ピュアな作品を三池監督とやれたのは本当に光栄でしたし、何よりも役者に寄り添ってくれる監督でしたので、短い時間でもたくさん吸収する部分がありました。

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――光司は追い詰められた果ての行動だと思うんですが、役への気持ちには寄り添うことはできたんでしょうか?

EXILE AKIRA: 気持ちは作れました。それに、光司のように思い悩んでしまう人は多いと思うんです。きっと自分が世の中から必要とされていないとか、仕事がうまくいっていないとか、世界中のみんなが敵に見えるぐらい追い込まれるというか…辛いときこそ、周りの人たちに「ありがとう」と言ってもらえるような、自分がアクションを起こす気持ちというか。大変だけども、自分が何かしたときに「ありがとう」と言われた、そんな言葉が生きがいにつながったり、明日を生きる勇気につながったりするものだと信じています。そういうところを、今回の役柄のキャラクターにはめていました。

――ショートフィルムは短い尺ですが、その分メッセージが伝わりやすく、読み解きやすいことも特徴です。

EXILE AKIRA: そうですね。この作品でも、三池監督と現場で「ロレックスだけ1個置いとこうか」と話したんです。何にもないけど、光司が自分の会社を立ち上げたとき、一番うまくいっているときにご褒美で買ったロレックスで、それだけは手放せなかった、というか。そういうのをポッと置いておくだけで、その人の過去やバックボーンは見えるもので…ということをふたりで話しました。何でもない殺風景な部屋に、ロレックスがポンと、ビジネス本がたくさん置いてあると、それだけで物語れますし。自殺に追い込まれた描写からスタートするのもすごく映画的な発想であり、ショートフィルムだからこそ、そういう細かな美術であったり、小道具が効いてくるのかな、という感覚ではありましたね。

――それから広がる温かいストーリーは、思いもよらない感動を呼び起こしますし、映像の仕掛けと一緒に楽しめる1作に仕上がりました。

EXILE AKIRA: 自分が命を絶とうと思ったところ、急に想像もしなかった災害に巻き込まれて、なぜか焦る自分がいたり、「人を助けなきゃ」と咄嗟に思うようになったり。今回はファンタジーの中にも、そういったリアリティがあって、親近感を持ってもらえるのかなと思いました。もしかしたら、「本当になんだ、このクソみたいな人生…」と生きていた人が、災害に遭い、悲しくて涙が出てきたり、「どうにかしなければ」とか、「生きなきゃ」とか、「こんなに辛かったのに、もっと辛い状況ってあったんだ」とか思えたりすること。その中で、一輪の花を大切にするぐらい愛情が芽生えたり、生きるというところに、何か大切なことを思ったりすることを、短い尺の中で三池監督が素敵に描いてくださっていると思います。

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『その瞬間、僕は泣きたくなった-CINEMA FIGHTERS project-』は全国公開中

公式サイト:https://ldhpictures.co.jp/cinema-fighters-project/

取材・文:赤山恭子

写真:LDH提供

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