海外のファンからも注目を浴びている日本のプロレス界だが、その中でも熱心なファンがいるのが女子プロレスだ。試合ぶりも選手の個性も幅が広く、かつ独特。ブシロードグループ入りしたスターダムの木谷高明オーナーが女性ファンの獲得を課題として挙げていたように、現在の日本の女子プロレスは男性ファンが中心だ。
アイドルなど芸能界からのプロレス挑戦が多くなる一方、ファンサービスの面もアイドルの世界に近くなっている。「物販」といえばグッズ販売のことだが、それはTシャツやパンフレットを売るだけではない。ポートレートにサインを入れてもらったり、チェキを撮ったりという選手とファンの“交流”も重要だ。
ファンにとっては、この物販での会話も大会の楽しみの一つ。“神対応”で人気の選手もいるが、試合内容がよかった日には売り上げが伸びたりもするという。人気団体・東京女子プロレスの甲田哲也代表はアイドル ファン(いわゆるハロヲタ)でもあり、様々な面でアイドル運営の手法を取り入れている。もちろん物販の重要度も高い。多数の観客が訪れる後楽園ホール大会では物販コーナーが大混雑するため、最近は前日に別会場で物販主体の前夜祭的イベントを開催しているほどだ。
また個別のチェキ撮影だけでなくタッグチームとの3ショット撮影など企画も豊富。試合用コスチューム以外に「私服物販」、春の「制服物販」、夏には「浴衣物販」といった趣向も。2月2日に合わせた「ツインテール物販」もあれば、先日は「ハロウィン(コスプレ)物販」が行なわれた。当然、次は「クリスマス物販」となるわけだ。
(アプガ(プロレス)は2人がナース)
それぞれの企画内でコンセプトを決め、衣装を準備するのは選手自身。思いっきり“あざとく”いくもよし笑いを狙うもよしで、個性が出るだけにファンの楽しみも増す。企画系物販で「いつもよりチェキを撮りすぎた」という観客も多いのではないか。どんな衣装ならファンに喜んでもらえるかは選手の腕のふるいどころであり、同時に悩みのタネでもあるだろう。ハロウィン物販で「セクシーCA」に扮したグラドルレスラー・白川未奈に反響を聞くと、今ひとつだったという。
「グラビアの撮影会だったらすぐに満枠になる衣装なんですけど。新しいファンをつけていくための工夫も必要ですね。東京女子プロレスの物販では谷間を見せるのはやめておいた方がいいのかも……」
セクシー=ファンが増えるというわけでもないようだ。白川のタッグパートナー・上福ゆきはこう分析する。
「ファンはギャップを求めてると思うので。セクシーな人のセクシーな衣装はイメージ通りでしょ? みなちゃんの場合はコミカルなのがいいかも……ゴリラフル装備とか」
そんな上福のハロウィンコスプレのテーマは「90分18000円」だとか。
「私は楽しむことがモットーなので、ありのままで楽しく。周りがどう思うかは関係なくやってます」
ファンサービスというとファンに媚びている、嫌なのにやらされているというイメージを持たれるかもしれないが、どんなスタンスで取り組むかも自由なのである。試合にせよ物販にせよ、ファンが見たがっているのは選手の自由な自己表現だ。
文・橋本宗洋