夏野剛氏「僕が社長なら、すぐにPay PayもLINE Payもやめる」 ヤフーとLINEの経営統合をどう見る?
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 18日、ヤフーの親会社であるZホールディングスとLINEが経営統合で基本合意し、両社の代表による記者会見が開かれた。LINEをイメージした緑のネクタイのZホールディングス川邊健太郎氏は「最強のワンチームを目指していきたい。どうぞ出澤さんお願いします」と、ヤフーをイメージした赤いネクタイのLINE出澤剛氏と握手を交わした。

 統合を決断した背景について川邊氏は「Yahoo! JAPANではメッセンジャーのサービスが全く提供できていない。それに対しLINEにはすでに国民的なメッセンジャーのサービスがある。一方でLINEのeコマースはそれほど力が入っている事業ではない。それぞれの弱い部分を補い合える、シナジーがあるのではないか」と説明。出澤氏は「双方のデータを適切に利用することによって、今まで以上にひとりひとりのユーザーに寄り添ったサービス、情報をお届けすることができるのではないか。メッセンジャーとECとの連携による新しい価値観、新しいユーザー体験を生み出すことができると考えている」と語った。

■夏野氏「QRコード決済に出ていったのが間違いだった」

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 会見でも繰り返し強調された「シナジー」。ところがこの点について「2ちゃんねる」創設者のひろゆき(西村博之氏)は「日本ではQRコード決済自体全然普及していない。LINE Payは300億円を使ったキャンペーンをしている間だけはお客さんがいるが、終わったら使われない。PayPayも100億円を何回かやったが、使われない。あまりうまくいっていない同士が手をつないだら何とかなるだろう、みたいな感じ」と、注目される決済サービスについても厳しい見方を示していた

 実際、スマホ決済領域に関してはPayPayもLINE Payも苦戦している18日現在、PayPayは登録ユーザーが2000万人を突破している一方、来年3月までの営業赤字が345億円(売上高15.9億円)の見通しだ。LINE Payに関しても、524億円の営業赤字の見通しとなっている。

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 一方、慶應義塾大学の夏野剛・特別招聘教授は「これは単なる始まり、序章に過ぎなくて、これからが勝負だ」と話す。

 「やっぱり日本のIT業界に最も欠けていたのが今回のような統合だと思う。川邊君も出澤君も創業社長ではない。だからこそできたと思う。オーナー経営者にはこういうことができないし、事実、誰もしたことがない。例えば最近ベンチャーがもてはやされすぎていて、その結果、マザーズに上場した企業の80%以上が初値を下回っている。それでも創業社長たちは辞めない。ヤフーもLINEのように時価総額1兆円を超えるような会社になれば、なおさらトップはそこに座り続けていたい。IT企業はスケールを追うことが重要で、その点、この2人にはスケールを大きくして、すごいサービスを作っていこうという意志があった。だからこそここまでの短期間で合意ができたと思う。“お山の大将になっているファウンダー経営者とは違う”。これからに期待したいと思う。ヤフーは日本で最初に大きく成功したIT企業だ。LINEは最近1番大きく成功した会社だと思う。就職人気企業ランキングには今も昔ながらの日本企業が並ぶが、この新会社が1位や2位になって欲しい。そうなるためにも、どんどん企業がくっつくような動きをしてほしい」。

■“スーパーアプリ”を目指せるか

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 その上で夏野氏は決済領域について「PayPayとLINE Payが2社の体力を奪っているのは確かだし、決済データを集めて何をするのか、そのビジョンが分からない。だからこの2つのサービスを整理することが、2人の試練だと思う。僕が社長なら2つともすぐにやめる。やはりQRコード決済は不便だし、ビジネスモデルがない。それなのにこの分野に出て行ったのが間違いだと思う。もっと言えば、アップルのApple Cardはクレジットカードのインフラの上にあるが、全く新しい、まさに“スーパーアプリ”だ。アップルのアカウントにすべて引き継いで、明細や支払いのスケジュールなどもアプリ上で管理できる。唯一の“玉に傷”は、アンドロイドでは使えないことだ」とした。

 夏野氏の言う「スーパーアプリ」とは、決済なども含め、様々な行動の起点になりうる統合的なプラットフォーム、アプリのことだ。ソフトバンクの決済説明会の資料の中にも“「PayPay」は決済アプリからスーパーアプリへ”との記述があり、出澤氏も会見で「“スーパーアプリ”といわれる構想を当初から行ってきた」と述べている。株式会社ヴァリューズの調査(今年6月)によれば、起動ユーザーの多いアプリランキングでは、1位がLINE(5120万人)と、2位のTwitter(2530万人)を大きく引き離している。

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 ITジャーナリストの鈴木淳也氏は「スーパーアプリになるためには、どれだけ滞在するかが大事になる。接触する時間が増えれば、それだけできることも増える。夏野さんはビジネスモデルがないというお話をされていたが、接触時間を使って、広告や顧客管理など色々なツールをお店に提供することができるようになる。ただ、究極的にはサービス同士を統合しないと、開発リソースにも無駄が多くなる。2年、3年かけてやるとしても、どうなるのかということは正直見えない」と話す。夏野氏は「これから1年の間にサービスを統合したり、新しいものを作ったりと、何かが出てくると思うので、僕はそれを楽しみに待ちたい」と期待を寄せた。

■カンニング竹山「歴史は繰り返すんだな」

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 会見で川邊氏は「日本、アジアから世界をリードするAIテックカンパニーを目指していきたいと思う」と語っていた。しかし、アメリカや中国企業と比較すると、現状では数字の上で大きな差がある。そのため、“何とか日本だけでも死守しよう”という動機があったのではないかとの見方もあるようだ。

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 夏野氏はグローバル展開、そしてAI領域での展開を目指す上での課題について「グローバルビジネスをやったことのある人間を経営に入れていかなければいけないし、AIのエンジニアがどんどんGoogleなどに採られている中、どれだけ採用できるかだ」と指摘。東海大学の金慶珠教授は「ヤフーの上はソフトバンクで、LINEの上はNAVER。いわば日本と韓国の代表的なIT企業の合併という話なので、韓国でもすごく大きく報じられている。ソフトバンクは潤沢な資金力を持っているし、LINEはメッセンジャーとしてアジア向けにカスタマイズされた市場を確保していると思う。一気に世界制覇を狙うというよりも、とりあえずここは守りを固めようというものだろう」と話す。

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 カンニング竹山は「語弊があるかもしれないが、昔は資源を得るために戦争をしていた。日本も大東亜共栄圏だとアジアに出ていって迷惑をかけて、アメリカと戦争して負けてしまった。今回は戦争ではなくビジネスだが、狙いや戦略、構図は同じなんだな、歴史は繰り返すんだなと感じた」と感想を漏らしていた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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