11月16日に開催されたONE Championship北京大会「ONE:AGE OF DRAGONS」で、レスリング・インド代表の女子選手リトゥ・フォーガットが、一部シースルーの斬新なコスチュームで登場したキム・ナムヒ(韓国)を破り華々しいデビュー戦を飾った。
「フォーガット一族」と聞いたらピンと来るスポーツ映画好きもいるかもしれない。25歳のリトゥ・フォーガットは、日本でも話題となった父と姉妹のレスリングスポ根インド映画、『ダンガル きっと、つよくなる』のモデルとなったバビータとギータのフォーガット姉妹の従姉妹にあたる。
7人のレスリングのトップ選手を輩出しているフォーガット家で、リトゥもコモンウェルスゲームで2016年に金メダルを獲得している実力者だ。そんな彼女がONE Championshipで総合格闘技デビューを飾るのは、インド国内では山本家やグレイシー一族のMMA参戦のような空気感かもしれない。それを証拠に、インドのスポーツメディアをのぞくとリトゥのデビュー戦を伝えるニュースが溢れかえっている。
キム・ナムヒ(韓国)との対戦に臨んだリトゥはデビュー戦でMMAへの適応力を即発揮した。試合開始早々打撃戦と見せかけてテイクダウンに成功するも、あっさり有利な体勢を捨ててスタンド戦に。キムのヒザを被弾する場面もあったが、再びテイクダウンを奪いボディにパウンド。
驚いたのは膠着状態で再び手堅いポジションをリトゥが捨て、立ち上がったことだ。倒れたまま戸惑うキムに再び急接近して滑り込むようにパスガードを奪うと、通称マット・ヒューズ・ポジションに固定してもがくキムを一方的に殴り続けた。脱出を試みるキムだが、ポジションを固めたレスリング・エリートはビクともしない。
その後もリング中央で繰り広げられた凄惨な“パウンドフルボッコ”にAbemaTVの実況解説から「あ~、ダメだダメだ」と声が上がると、ようやくレフェリーが試合をストップ。リトゥ・フォーガットが総合格闘技デビューで白星を収めた。一方、敗れたキムについては「おそらくMMAに初めてシースルーコスチュームを持ち込んだファイターではないか?」ということが話題に上がっていた。
巨大なインド市場はONEの次なるターゲットでもある。よってインド発のスター選手創出はONE Championship肝煎りのプロジェクトだ。9カ月前にレスリングのキャリアを放棄しMMA転向を宣言したリトゥを、シンガポールのEvolve MMAがバックアップし、ボクシング、ムエタイ、ブラジリアン柔術などなどの技術を始動し短時間でMMAファイターとして仕上げてきた。初戦に臨むにあたり緊張感はあったようだが「(リングに)入ると私が出場してきたレスリングの試合と何も違いはなかったわ」と地元インドのESPN局のインタビューで肝っ玉の強さも見せている。
デビュー戦だけに粗さは目立ったものの、その強さの片鱗をみせたリトゥ・フォーガット。目標は同じ階級アトム級の王者でありEvolveのチームメイト、アンジェラ・リーだ。リトゥとその陣営は5試合ほど経験を積みながら、アンジェラの持つタイトル挑戦への準備を進めるそうだ。女子アトム級は「格闘代理戦争」から勝ち上がり勝利を重ねている平田樹や山口芽生など、日本女子のタレントが参戦している階級でもある。インドのニュースターと彼女たちの対戦も今後の楽しみの一つとなりそうだ。