速さだけでは勝てない!? 競輪選手が30代以上でも一線で活躍できる理由

競輪初心者の編集者から、こんな質問がありました。

「競輪選手のピークの年齢と寿命はいくつくらいなのでしょうか? また、年齢を重ねることのメリットはあるのでしょうか?」

例えば競馬の騎手。現役最高齢は的場文男騎手で63歳です(2019年11月現在)。

例えばオートレーサー。2017年に引退した谷口武彦氏の選手生活最後の出走は75歳99日のことでした。

さて、競輪選手の現役最年長選手は何歳だと思いますか?

競馬で走るのは馬、オートレースでは自動二輪車です。騎手、ボートレーサー、オートレーサーはそれらの上に乗って操縦します。つまり動力は自分ではなく馬であり、ボートのモーターであり、自動二輪車のエンジンです。

対して競輪の動力は自分。公営競技の中で唯一、自分で漕いで進まなければなりません。そうなれば加齢のよる体力低下の影響は深刻となり、他の競技よりも選手寿命は圧倒的に短いと考えるかもしれませんが……そんなことはありません。

2019年11月現在の現役最年長競輪選手は1955年生まれの三ツ井努選手で、なんと64歳! 競馬の騎手よりも長い間、現役で活躍しているということになるのです。

その昔には68歳の選手がレースに出走したこともあり、60歳代まで現役を続けた選手は何人もいます。50代の選手となるともはや珍しくもなんともなく、2019年後期(7月から12月まで)で3名もの50代選手がS級1班に名を連ねています。

競輪選手が50代でも一線で活躍できる理由

なぜ、そんな年齢になるまで現役を続けられるかというと、まずひとつに自転車というツールを使うことが挙げられるでしょう。陸上選手などよりも骨や関節に負担が掛かりにくいですし、落車でのケガを除けば身体への負担はとても少ない競技だといえるでしょう。

もうひとつは、競輪がラインを組んで走るレースだからです。

若くて力のある選手に前を走らせて風よけにすることで、自分は最後の直線まで足を温存できます。番手の体力消耗度合は先頭選手の半分以下だという報告もあるほど。無風で先頭の選手に付いていけるだけの体力があれば、選手としてやっていけるということになります。

それに加え、後ろから捲りに来る選手を巧みにブロックするなどといった番手の仕事がうまければうまいほど、寿命は延びることになります。これが年齢を重ねることのメリットでしょう。

レースをすればするほど、駆け引きのデータやレース場そのもののデータも蓄積されていき、抑えどころや仕掛けどころのうまさが極まっていく。それを先頭の選手に伝えることで、ラインがうまく動かされて、自分も生かされることになる。

だから高齢でも活躍できるのです……というよりも、若いから強いというわけではないのが競輪の妙でしょう。

例えば昨年2018年のKEIRINグランプリに出場した9名、すなわち今年2019年にS級S班である9名の平均年齢は34.8歳です。30代が5人と最も多く、20代の2人は40代の2人と同じ数しかいません。

ここから競輪選手のピークは35歳であり、それが人間の体力的なピークではないことはご存知の通り。つまり、ただ速ければいいというわけではなく、年齢を重ねて、レースを重ねて得たうまさがなければ勝てないのが競輪であり、陸上のトラック競技などと異なるおもしろさがそこにはあるといいうことなのです。

競輪選手に定年は存在しない

過去には45歳でG1を制した選手もいました(2004年の高松宮記念競輪で優勝した松本整氏)。そういうこともあってか、日本競輪選手養成所の入所制限は満17歳以上であれば何歳でもOK。年齢制限の上限はないのです(2012年には史上最高齢35歳の合格者も)。

では、競輪選手に定年というのはないのか、という話になりますが、選手の代謝、すなわち“クビになる”ことはあります。

「3期連続で競走成績が70点未満(女子が47点未満)」の者が対象となり、期の成績下位30名(女子は3名)は強制的に引退……。

1期というのは年を半分に分けた1月から6月の前期や7月から12月の後期のこと。つまり3期連続というのは1年半という期間、得点が基準に満たされず、さらに選手の中で下位の者は引退させられてしまいます。つまり成績が悪ければ20代でも引退となる中、60代になるまで現役を続けられるのが競輪という競技なのです。

競輪選手の引退後のキャリアとは

平均的な引退年齢は44歳。

ちなみにクビにならずとも、自ら引退する選手もいます。その理由としては、現役時代に獲得賞金の中から掛け金を支払っていることで、20年以上務めれば約2千万円の退職金、さらに年間約120万円の年金がもらえるというのがあるでしょう。それらを40代のうちにもらって、スポーツクラブやアパートを経営したり、飲食店を持つことで第2の人生を歩むわけです。脱サラをしてラーメン屋を営む人と同じような感じで。

そう考えると、サラリーマンとあまり変わりのない人生を送れるのかもしれません。その上、人気があればテレビで解説の仕事ができたり、中野浩一氏レベルの結果を残せばテレビのバラエティ番組に出られたりすることもあるのです。

退職金や年金といった将来的な保障もあり、芸能人になれる可能性もある。レースで稼げば高額所得も夢じゃない。お子さんの進路の1つとして考えてもいいのかもしれません。

文・ウエノミツアキ

▶スマホでかんたん!競輪の投票するなら「WinTicket」

スマホで競輪投票するならウィンチケット
スマホで競輪投票するならウィンチケット
WinTicket(ウィンチケット)
【生中継】朝日新聞社杯競輪祭 第5日(小倉 G1)
【生中継】朝日新聞社杯競輪祭 第5日(小倉 G1)