寝技“バンタム級”国内最強男の“細かすぎて伝わらない”強さが遺憾なく発揮された。
11月22日に開催されたONE Championshipシンガポール大会「ONE: EDGE OF GREATNESS」で、ONE連勝中の上久保周哉が、ブルーノ・プッチ(ブラジル)との柔術勝負に圧勝、4連勝を飾った。
上久保は国内の大会も含め過去の戦績は10勝1敗と総合格闘技の世界で常に強さを発揮してきた選手だ。特に寝技に関しては、元UFC王者のDJをあと一歩まで追い込んだ和田竜光も「バンタム級で寝技なら国内最強」と太鼓判を押す。プライベートに話を移すと、毎回戦ったファイトマネーの一部を保護イヌ・ネコ活動に注ぎ込む「イヌ・ネコ達の伊達直人」的な心優しい一面もある。
一方、対戦相手のプッチは妻がONEのスーパースターであるアンジェラ・リー。経歴は華やかで、「妻のバーター」的な揶揄も聞かれるが、ブラジリアン柔術の大会、ノーギワールド優勝者にして、ここまでONE2連勝中。まさにブラジリアン柔術のマスターと日本バンタム最強の寝業師の力試しとなった。
開始から上久保は、プッチに跳びヒザで一撃を狙う積極性をみせる。プッチがキャッチするも、上久保がグイグイとロープ際へ押し込む。展開を変えたいプッチは寝て三角絞めを狙うが、川久保はトップからパウンドで回避した。
さらにお互い柔術に長けた両雄らしい攻防が続く。テイクダウンからバックを狙うプッチを、上久保がロープ際に押し込む。プッチが体重をかけてポジションをキープしようとすると右足を崩して尻が付いた体勢に。非常に地味な攻防だが「国内バンタム寝技最強」の技術は噂以上のものだ。優位なポジションになると上久保がヒザを連打、優勢でラウンドを終える。
2ラウンド、3ラウンドと、上久保の寝技に体力を削られたプッチは防戦一方。上久保は相手を押し込み続ける無尽蔵のスタミナをみせ、相手に何もさせず、終始コントロール。まさに“圧勝”だった。
試合は3-0で上久保の完勝。バンタム級の中堅上位のブルーノ・プッチを完封し4連勝を果たしたが、打撃戦が主流になっているONEではフィニッシュすることが課題となる。この日試合を観戦していた青木真也は「グラップリングの向き合い方の問題、彼はコントロールするグランドを志向しているので、そのスタイルはONEでは評価されない。それは正直なところあると思う」と、なかなか伝わり難い強さについて解説していた。
色々な指摘もありつつ連勝を続ける“細かすぎて伝わらない”グラップラー・上久保周哉の強さは本物ではある。現在の総合格闘技では総じて寝技を得意とする選手不利の風潮はあるが、今のスタイルをさらに進化させ、タイトル戦線に名乗りをあげることを期待したい。