「固い絆で結びついていると思うのは錯覚だ」カップルでの薬物使用“キメセク”恐怖と虚しさ
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 後を絶たない著名人の薬物事犯。中には交際相手や配偶者とともに検挙される例も少なくない。なぜカップルで薬物を使用してしまうのか。理由に挙げられるのが薬物を使用しての性行為、いわゆる「キメセク」だ。

 あるカップルは「相手も薬をしていたのでキメセクは自然の流れだった。薬がないと興奮が足りなくて薬を使うことがセックスにつながった」「興奮や快楽が普通と全く違った。のめりこんだ」「気持ちよさが全く違う」「時間や体力を考えないでプレイするので終わった後の脱力感がすごい」「終わっても興奮が収まらなかった」と振り返る。

 さらに問題なのは、薬物を断つことの難しさだ。「一緒にやめても片方がまた始めるとあほらしくなって自分も始めてしまった」「片方がやめないとまた始める」。29日放送のAbemaTV『AbemaPrime』では、その恐ろしさを経験者に語ってもらった。

■「強い絆で結ばれている感じがあった」

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 覚せい剤取締法違反で逮捕された経験を持つAさん(20代)は、14歳の時に交際相手に勧められ、初めて脱法ハーブを使用した。「クラブ仲間のみんなもやっていたし、今よりも若かったので好奇心もあった。そんな危険なものだとは知らなくて、快感だけというイメージだった。違法なものだとはわかっていたが、バレなきゃいい。バレるわけないと思っていた」。

 しかし、当初はクラブに行った時に嗜むだけだった薬物から抜けられなくなっていき、ハードドラッグにも手を染めるようになった。そして20歳になると、交際相手と一緒にMDMAやコカインなどを使用。当時は日常的にキメセクをするようになり、1日に覚せい剤を5回注射したこともあるという。「ずっと幸せみたいな、意識はあるけれど、宙に浮いて、雲の上にいる感覚。気付いたらラブホテルを延泊していて、えっ?今まで何してたんだろう。ずっと横たわってただけだ、みたいな。そのくらい時間感覚が狂う。一緒にホテルに入った男性は、合計で14回くらいイっていた」。

 10人くらいと交際したというが、その半分以上の5、6人とキメセク。薬物を使用しない人に対しては「つまらないなって思っちゃった。自分から勧めたりした」と話す。そのうちに、シラフでの性行為の仕方が分からなくなったり、SNSでパートナー以外から誘われたりした経験もあったと明かした。

 「ただの快楽だけを求めたい時に連絡したり、連絡が来たり。“こういうのがあるから遊ぼう”“え、あるの?行きたい”みたいな。秘密を共有してるイコール、強い絆で結ばれている感じがあって、誰にも言わないだろうというのがどこかであったし、おかしくならなければバレることがないという感覚だった」。

 薬物の影響で倒れたこともあるという。「救急車も呼べないから、意識を保たなかったらこのまま死ぬと思った。大丈夫だと言い聞かせた。動けるようになった時に鏡を見たら、瞳孔が張り裂けそうなくらい開いていた。捕まらなかったら今もやっていたと思うし、薬物で色々なものを失ってきたが、もっともっと失っていたと思う。もうやりたいと思わない。ただ、例えばテレビの映像でシャブの画像が流れたら、やりたいと思う人もいっぱいいるはずだ。私もあの時のだ!みたいな。今もフラッシュバックしてしまう」。

■「薬物がなければすぐに分解してしまう関係だ」

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 作家の石丸元章氏(54)には、24歳の時に“取材”という名目で薬物の世界に接近し、マリファナや覚せい剤、MDMAなどを使用してしまった過去がある。

 「当時、海外では人間とは何なのかという探求のために薬物をある種の実験材料にした詩やノンフィクションや小説が出ていたが、日本では薬物がストリートに出回り始めていたにもかかわらず、ほとんど議論がされていなかった。そこで、海外のような手法で取材すれば、自分の言葉で薬物のことが書けるだろうと思って始めてしまった。もちろん法律というハードルはあったが、若かったこともあって、価値のあるものを書くんだと意気込んで飛び越えてしまった」。

 その後、やはり性行為でも薬物を使用、倒錯状態になったこともあるという。30歳の時に覚せい剤取締法違反で逮捕され、その後は薬物の問題を扱った本などを多数出版している。

 「ご飯が食べられなくなったり、眠れなくなったりもしてくるので、続けていくこと自体が自傷行為だし、当事者もそれが分かっていると思う。だから使用している時は戻って来られる、これは束の間の作用だと考える。ところが実際は中断することができず、今日も明日も明後日も、となってしまう。そして、キメセクは快感が強いという言い方がされるし、本人たちもそう感じているかもしれないが、その様子を客観的に見れば“地獄絵図”だ。何十時間もセックスし続け、イク!と絶叫し続けていて、まさに地獄に行ってる。それは気持ちいいのか気持ち悪いのかすら訳がわからない、倒錯した状態だ。また、そうしたセックスには、人間が人間を好きになるとか、愛があるセックスではなく、ただ快楽だけ。固い絆で結びついているような錯覚があるけれど、それは薬物がなければすぐに分解してしまう関係だ」。

■悩み苦しんでいる人は専門機関に相談を

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 慶応義塾大学の若新雄純特任准教授は2人の証言を受け、「人は自分自身の存在を自覚するからこそ、不安や孤独、寂しさが感じられるのだと思う。だからこそ、例えば酔っ払って自分の存在の輪郭がぼやけた時、少し安心したりもする。だから薬物によって自分の存在を自覚しなくなり、自分が壊れることで不安も吹っ飛ぶのではないか。また、特に若いひとは“つるむ”ことによって一人の時にはある冷静さを失い、変な勇気を出してしまう。石丸さんの話のように、やはりこうした犯罪は 誘われたり誰かに怒りを持ったり寂しかったりといった関係性の中で生まれるものだと思う」と指摘。紗倉まなは「リミッターを外す道具と性欲が結びつくことで、究極の刺激になってしまうと思う。やはりそこから抜け出すのは一人で使っている場合よりも非常に難しいし、苦しみも大きいのでないか」とコメントした。

 では、そんな薬物依存から抜け出すためにはどうしたらいいのだろうか。

 Aさんは「私の場合は保釈後に女性向けダルクのフリッカ・ビーウーマンというところに通った。気持ち次第というけれど、気持ちは一時的なものだったりするし、環境もすぐには変えられるものではないので、作っていくしかない。昔は薬物や男性に満たしてもらっていた承認欲求を自分でも満たすことができるようになった」と話す。

 薬物からの脱却に、子どもの存在が大きかったと話す石丸氏は「最初に本を出した当初、これを書いた人に(薬物を)持っていけば喜んでくれるのではないか?という感じで薬物中毒の読者が集まってきたこともあった。ある時、“僕もやってるけど認めてください”という人も来た。やはり自分の力でやめさせようとしても無理だ。病院に行けば、様々な治療法もある。やはり専門家に任せた方が良い」と指摘した。

 自分一人で立ち直るのは難しいと言われる違法薬物。「日本ダルク:03-5369-2595」「全国薬物依存症者家族会連合会03-5856-4824」のような薬物依存回復のための支援団体も存在する。悩んでいる人や周囲の人は、勇気を出して問い合わせて欲しい。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

▶映像:「秘密の共有=強い絆で結ばれる」逮捕歴のある"キメセク"体験者が語る 

「秘密の共有=強い絆で結ばれる」逮捕歴のある"キメセク"体験者が語る
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