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(ブルックスにオブライトを決めた橋本。真っ向勝負での勝利だ)

 11月29日に開幕したDDTのシングルリーグ戦『D王グランプリ』における注目選手は、センダイガールズプロレスリング(仙女)の橋本千紘だ。男子のトップ選手が集まるリーグ戦に、女子レスラーがエントリーしたのである。

 DDTでは里村明衣子、DASH・チサコと組んで6人タッグ王座に就いたことがある橋本。しかしシングルでの闘いはタッグマッチ以上にフィジカルの差が出るように思われた。開幕戦で橋本が対戦したのはイギリスのクリス・ブルックス。193cmと長身で(橋本は158cm)、KO-D無差別級タイトルマッチで竹下幸之介と大熱戦を展開したこともある。一時期は新日本プロレスに参戦するのではないかと噂されたほどの選手だ。

 イギリスでは里村とライバル関係にあるブルックスは、その弟子である橋本にも一切容赦しなかった。奇襲に始まり場外戦、腕殺しと攻め込んでいく。ブルックスが「しょせん相手は女だろ」とナメた姿勢を出さなかったことで、この試合は“性別を超越した実力者対決”となった。

 橋本もあくまで真っ向勝負。隙をついての丸め込みといった形での勝利は狙わなかった。丸め込みはそもそも「練習していないので」と橋本。日本大学レスリング部出身、日本トップクラスで活躍してきた橋本は、プロでもデビュー当時から大器ぶりを発揮してきた。小技を使ったり相手の裏をかいたりする必要がなかったわけだ。今回のD王でも、スタイルを変えないことに意味があった。

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(試合後のマイクも渾身。リーグ戦優勝候補に躍り出た)

 水車落としで投げ切り、エルボーを打ち合い、最後はパワーボム、ラリアットから必殺技のオブライト(ジャーマンスープレックス)を決めた。直球勝負で三振を奪ったかのような勝ちっぷりだ。

 渾身の勝利に、橋本は「男とか女とか関係なく、この橋本千紘が一番強いんだよ!」。さらにインタビュースペースでは「私がこのリーグ戦、優勝する。みなさんそういう予想しかできないんじゃないですか」と優勝宣言も。一方のブルックスは「サトムラは凄い弟子を育てたな」と、一人のレスラーとして橋本を称えた。プロレスの実力に男も女もない。それはブルックスの考えでもあるのだろう。彼は「NEO伊藤リスペクト軍団」で伊藤麻希とタッグを組んでもいる。

 翌日の公式戦でも上野勇希を下した橋本は、リーグ戦Aブロックで単独首位に立った。残り4戦、竹下や遠藤哲哉との試合が残っており、男子選手とのシングルマッチが続くことでダメージの不安もある。そえでも、今後も橋本絡みのカードがリーグ戦の目玉になることは間違いない。竹下が仙女との対抗戦で使った「プロレスの可能性を見せる」とい言葉は、このリーグ戦でも生きている。

文・橋本宗洋

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