あなたは正しく理解している?“アナ雪2”のPRをめぐってディズニーが炎上した「ステマ」とは
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 ウォルト・ディズニー・ジャパンは5日、「『アナと雪の女王2 感想漫画企画』に関するおわび」と題する謝罪文を公式サイトに掲載した。

 きっかけはその4日前、Twitter上に「#アナ雪2と未知の旅へ」というハッシュタグ付きの感想漫画が同じ時間帯に複数投稿されたことだった。これに違和感を覚えたネットユーザーたちからは「あからさまにステマ」「広告ではないと装うのはアンフェア」といった声が上がり、他当事者の漫画家たちが「試写会にご招待いただき、PRで漫画を描かせていただきました」「PR表記抜けていました!すみませんでした」と次々とコメント。事実上のPRだったことが明らかになった。

あなたは正しく理解している?“アナ雪2”のPRをめぐってディズニーが炎上した「ステマ」とは

 これを受け、ウォルト・ディズニー・ジャパンはPR施策であったことを認め、“連絡ミスによるPRのハッシュタグの付け忘れだ”と説明。「本企画は、クリエイター7名のみなさまに映画『アナと雪の女王2』をご覧いただき、ご感想を自由に表現いただいた漫画をTwitterに投稿いただく企画として実施したものです。本企画に伴う投稿は“PR”であることを明記していただくことを予定しておりましたが、関係者間でのコミュニケーションに行き届かない部分があり、当初の投稿において明記が抜け落ちる結果となってしまいました」と謝罪文を掲載したのだった。

 「ステマ」とは「ステルスマーケティング」の略で、「#PR」などと明記する必要があるところを伏せ、個人や中立の立場を装い、商品や作品、サービスを評価させる広告・宣伝手法のことだ。

 記憶に新しいのは、京都市がPR施策の一環として、吉本興業所属のお笑いコンビ・ミキに有償でツイートを依頼していた問題だ。ただ、京都市も吉本興業も、ステマには当たらないとの認識を示している。

■「正直信じられず、本当にショックだ」

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 デジタルマーケティングなどに詳しいブロガーでnoteプロデューサーの徳力基彦氏は「おそらく金銭が支払われて制作された漫画なので、広告行為にあたる。しかし、投稿を見る限り、それがあえて分からないようになっていたので、ステマだといえる。当然、問題がないのであれば、ディズニーさんが謝る必要はまったくない。しかし謝罪文を出されたということは、今回の行為がステマにあたるものだと認識されたということだろう。正直信じられず、本当にショックだ」と話す。

 ディズニー側の宣伝担当者によると、ステマは意図したものではないという。また、複数のパートナー会社と宣伝企画を進め、ディズニー側が直接依頼したわけではないという。

 徳力氏は「社内の広告担当者なのか、広告代理店の担当者なのか、その下請けの事業者の担当者がやっているのか、それとも漫画を投稿した人がやったのか、現時点では真相が分からないが、7人が同じ時刻で揃えて投稿している時点で、誰かがそのルールを決めて指示したことは確かだ。また、あえてディズニーさん側の視点に立つと、最初に取材が来た時点では状況がよく分かっていない状態で否定してしまい、いかにも漫画家たちが悪いという対応になってしまった可能性もなくはない。というのも、夕方に投稿したものが、夜には話題になり、朝にはまとめられて、昼には記事が出ているという具合に、今、炎上のスピードが非常に早くなっているからだ。これは従来の広報担当者のスピード感ではない」と推測。

 また、「過去にも似たようなことをやっていたのではないかという疑惑も出てきてしまっているが、僕はディズニーさんの『スター・ウォーズ』シリーズやマーベル作品のファンだし、“アナ雪”ほどの有名な作品なら、そのような行為をする必要は全くない。そもそも社名にもなっているウォルト・ディズニーという人はアニメーターだった。作品の管理が厳しく、クリエイターに対するリスペクトを重視している会社としても知られている。その会社が漫画家にこのような宣伝手法をやらせてしまったことは事実だし、それを彼らのせいにしているかのように見える結果になったことは、本当に残念だ」とコメントした。

■ステマと見なされるのはどこからか、説明できる?

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 では、ステマと見なされる線引きはどこにあるのだろうか。徳力氏に解説してもらった。

 Q.無料でもらった書籍新刊を買ったことにして、読まずにベタ褒めレビューをツイートしたら?

 A.厳密にはステマにあたる。やはり金銭が最も問題になりやすいが、自分で買って面白いと投稿するのと、無償提供を受けて褒めるのは意味が違う。自分の友人がそれを隠してやったらどう思うか考えてみるといいと思う。献本は日常的に行われていることなので、こうした行為が炎上することはほとんどないが、やはりステルスなマーケティング行為をしていることになる。消費者を守る意味で重要なのは、“関係性の明示”だ。だから“献本された”“もらった”と書けばよい。

 Q.「交通費1万円を出すから」と言われて参加したイベントについて、交通費を受領したことを伏せて褒めるツイートをしたら?

 A.すごくグレーゾーンだが、ステマにあたらない。ガイドライン上、本来の謝礼とは別の“御車代”などは現状の実態に合わせてアリにしましょうとされている。ただ、一般人が1万円をもらったら、やはり1日分のアルバイトの額だし、ステマと思っていた方が安全だと思う。最近では“御車代として50万円払うから投稿して下さい”というものもあるようだ。ここまで来ると、イベントに来てもらうための交通費ではなく、ツイートしてもらうための広告費だと捉えられる。

 Q.販売企業から新作のレビュー依頼が10万円で来たので、「#モニター」とタグをつけてツイートしたらら?

 A.ステマにあたる。“モニター”という言葉の意味だが、通常は製品を提供することに近く、10万円を支払うのは広告行為だ。これで炎上はしないだろうが、やはり広告であることがわかるよう開示しなければいけない。

■「一定の法規制も必要ではないか」

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 上記のようなケースはいずれも違法ではなく、境界線も明確ではないが、「広告主がやるのはリスクだ」と徳力氏は話す。ディズニーの本拠地である米国では、ステマのような行為は法規制の対象となっている。一方、日本においてはステマが違法行為ではないのが現状だ。IT関連の問題にも詳しい深澤諭史弁護士は、「悪質なケースでは商品・サービスの不当表示などを取り締まる景表法の適用もありうるが、ステマそのものの違法性を問う法律はなく、今回の件も映画(商品)について嘘は言っていないので違法性は問うことは難しい」との見解を示す。

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 徳力氏は「ペニオク問題や食べログ問題など、日本ではステマ騒動が10年くらい前からずっと続いているが、なかなか無くならないのは法規制がないことも背景にある。もちろん企業がやるべきことではないが、“優良誤認”や“有利誤認”のような形で消費者を騙す行為でなければ、広告であることを明記しなくても法律上の罰則はないのが現状だ。

 しかし、アメリカではFTC(連邦取引委員会)というところが罰則を定めているし、ディズニー本社であればこういった手法を許すとは到底思えない。ひょっとしたら、間に入った代理店や事業者が、違法ではないと思ってやっていたのかもしれない。中小の事業者の中には、社会的倫理を守らず、ステマを山ほどやっているところもあるだろう。ただ、多くの人が騙されていたとしても、それほど問題になっていないのが実態だ。現場の担当者は“自然な口コミを増やしてくれ”とリクエストされると、PRと書けば広告であるとバレてしまうと考え、お金を払ってでも口コミを投稿させようとしてやってしまう」と説明、こうした手法が跋扈する背景にあるのは、ネット特有のメディア環境があると指摘する。

 「テレビCMであれば広告だと分かる仕組みになっているので誰も文句を言わないし、面白いCMは面白いものとして受け止める。そして、昔であればテレビCMに出演できることが素晴らしいことだった。しかし残念ながら、ネットでは普通の人たちが普通に使う場所で、テレビのように“今からコマーシャルだ”という区切りを付けるのも難しい。そして、ネットでは広告と明示することを恥じている風潮もある。だからこそ、“#PR”くらいは付けようという話だ。ネットニュースの記事の体裁を取ったステマが問題になったことがあるが、その時にタイトルに“PR”と入れると読んでもらえなくなるという意見が見られた。しかし頑張っている媒体には広告主からお金がしっかり付いて、非常に中身も充実して、広告であることを明示しても読まれるというケースもある。本来、あのディズニーに漫画を描いてくれと頼まれるのは名誉なことだと思う。だからこそ、“こういった試写会に呼んでもらってこういった仕事をいただいたので、その想いを漫画にぶつけました”としていれば、皆が応援しようとなり得たと思う。京都市と吉本興業のケースも、本当に皆が応援したくなるような想いがこもったツイートや面白いツイートであれば、“#PR”が付いていても注目されたはずだ」。

あなたは正しく理解している?“アナ雪2”のPRをめぐってディズニーが炎上した「ステマ」とは

 その上で徳力氏は「テレビ業界には倫理を守る仕組みがあるが、インターネット業界にはルールがなく、誰かがガイドラインを作らないと、一般の人や、今回も漫画家の人たちのように、事情を知らないケースが出てくる。やはり広告主や広告代理店などが教えていかなければならないし、一定の法規制も必要だろう。一方で、中途半端な法律ができると何もかも禁止になってしまう。ソーシャルメディアがあることで、一般人も企業を応援できるようになった結果、映画『カメラを止めるな!』のように、ネット上の口コミから大ヒットにつながることもある。規制の結果、“感想を言うな”となってしまうのは良くないし、皆がステマのようなことをしなくなる方が楽しいインターネットになると私は思う」と話していた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

▶映像:アナ雪炎上 ステマと広告の線引きは?

アナ雪炎上 ステマと広告の線引きは?
アナ雪炎上 ステマと広告の線引きは?