12月6日にマレーシアで開催されたONE Championshipクアラルンプール大会で、キックボクシング・ライト級「ミスターKO」ことアンドレイ・ストイカ(ルーマニア)がアンデウソン・シウバ(ブラジル)にフック1発でKO勝ち。中軽量級中心に今年盛り上がりをみせたONEのキック・ムエタイの重量級拡充への一端ともいえる大味な試合は、来年以降のONEで、かつて重量級ファイターが活躍した「K-1 GP」の熱気再来を期待させるものとなった。
アンドレイ・ストイカは東欧の「スーパーコンバット」のクルーザー級王者という肩書きと共に参戦してきた選手。「スーパーコンバット」は旧K-1消滅後「グローリー」と共に世界のキック大会を牽引してきた団体だ。キックボクシングだけでなく柔道や武術もルーツにあり、ジャン・クロード・ヴァンダムに影響を受けてこの世界に踏み込んだというルーツも、アジア各国の武術をルーツに持つONE Championshipとの相性の良さを感じさせる。
一方のアンデウソン・シウバは、あのUFCのレジェンドとは同じ名前だが異なる選手。日本でも馴染みのあるドージョー・チャクリキ所属、ピーター・アーツ育ての親、トム・ハーリック門下の選手だ。名前で混乱を避けるためにアンデウソン"ブラドック”シウバと名乗るが、「ブラドック」は、アクションスターのチャック・ノリスの「ブラドック」からとっており、バダ・ハリやレミー・ボンヤスキーなどとも激戦を繰り広げてきた。
試合は初っ端から「当たったら負ける」というスリリングかつ、重量級らしいフルスイング合戦。威力を考慮してオープンフィンガーグローブではなくボクシング・グローブで試合が行われたのも頷ける。その一方でサークルケージという普段のキックボクシングにはない要素も加味される試合だ。
序盤は様子を探ったストイカだったが、1ラウンドを折返すタイミングで強烈な左フックをヒットさせる。この一撃が効いたシウバはたまらず後退。打たれ強さには定評のあるシウバだったが、直後にストイカが放った“ぶん回し系”の右をまともに受けると真っすぐに崩れ落ちた。辛うじて立ち上がるも、千鳥足でTKOを宣告されたシウバの姿が、ストイカのパンチ力の凄さを物語っていた。
強烈なKO勝利を飾ったストイカの来年以降のターゲットは、当然の流れだがローマン・クリークリャ(ウクライナ)の持つONEライトヘビー級キックボクシングタイトルとなる。クリークリャは、ウクライナ出身ながら中国の格闘技団体「クンルン・ファイト」でヘビー級王者となり、ONE入りを果たしたアジア産の重量級キックボクサーだ。
2メートルという巨漢が魅力の28歳の若き王者に対し、ストイカは欧州で紡がれてきた旧K-1の物語を受け継ぐ選手。こと重量級となると選手層が薄い印象のONEのキックだが、中軽量級を中心に「ムエタイ勢vs欧州キック」の抗争が盛り上がるなか、かつて日本の格闘界を大いに盛り上げたK-1重量級のど迫力の殴り合いが、アジアで再現される……そんな期待が膨らむカードだった。