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 小説家・乙一として知られる安達寛高の完全オリジナル作にして長編映画初監督作品『シライサン』。欧米でリメイクされた『リング』や『呪怨』など正当ジャパニーズ・ホラーの伝統を継承しつつ、よくある怪談話に現代の要素を加え、全く新しい恐怖を産みだした。友人の残忍な死をきっかけに、事件を追うことになった飯豊まりえ演じる主人公・瑞紀。そんな瑞紀と共に不可解な死の謎を追う春男を、映画、ドラマ、舞台と出演作が目覚ましい俳優、稲葉友が演じる。実は「ホラーは苦手」と語る稲葉、作品について聞いてみた。


初めての正統派Jホラー 「“間”を大事に演技」

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――こういう正統派なホラー出演するのは今回がはじめてですか?

稲葉: 初めてです。Jホラーのクラシックなところに、“シライサン”という存在を出すというのは、とても挑戦的だと思いました。いわゆる『貞子』などに見られる、日本のホラーの特徴である精神的な怖さがしっかりとあった上で、さらに“シライサン”という得体のしれない怖さを盛り込んでくる。どちらかというと、海外のホラーは、怖さの対象としてジェイソンとか男性のイメージがあって、チェーンソーで人が切られたりなどの実害も与えたりする、そういうパワー系の怖さがある印象を持っているんですが、日本のホラーはその恐怖の対象が女性や子供だったりするので、それをこの映画で今改めてしっかり撮るというのが、とても楽しみだなと思いました。

――じっとりとした怖さを演出するために気を付けた点などは?

稲葉: ホラーを演じるうえでの集中力は、お客さんの集中力を利用しないといけない。「怖がらせる」「驚かせる」という“間”が大事になってきます。一画面で入ってくる情報は限られてくるので、そういう意味でも“間”は意識して演じました。そこが、ホラーというジャンル特有の大事なところだと思います。台詞ひとつでも余韻をもたせて、「恐怖」をぼくらが提供しないといけない。とくに僕の役がストーリーを追っていく役なので、ちゃんと一緒にお客さんをつれていけるように気を付けて演じました。刑事というか、探偵っぽさもあるんですよね。ホラーでありながらもミステリー要素もあるので、演じる方としても、とてもやり易かったです。


監督の“優しさ”が表れたホラー

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――監督とはどのようなコミュニケーションをとられましたか?

稲葉: よく話をさせていただきました。監督は小説を何作も執筆されていて、頭のなかにある怖いことを文字で人に伝えるテクニックがすごいので、台本を読んだときは本当に怖かったです。原作と監督が同じ方ですが、現場だと監督は監督、原作は原作と、僕のなかでは別の人間だと思っているので、監督になったときに、何を求められているのか、それをぼくがどれだけ汲み取れるのか、に集中しました。

監督はすごく優しい方で、こんなこと言うと、ホラー映画なので誤解を与えるかもしれませんが、“優しいホラー”という感じがするんです。その優しさは作品を生み出した監督の優しさに通じるというか、台詞の言い回しや、身近な人を守りたいという思いなど、優しさが随所で伝わるんです。

ホラー映画の現場に怯える飯豊まりえをみんなで癒す!?

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――飯豊さんとの共演はいかがでした?

稲葉: とても楽しかったです。飯豊さんがホラー現場をすごく怖がっていて、それこそ「呪われるんじゃないか」とか(笑)。 飯豊さんは「絶対にお祓いしたい」と言っていたのでお祓いにいきました。ただ僕がスケジュールで行けなくて、もう「飯豊さんに任せます」「全体的に祓えているのなら僕は大丈夫です!」って託して(笑)。 でもそれでも怯えていたから、もう現場はみんなで“飯豊まりえを和ませよう”ってことに徹していましたね。

飯豊さんとは以前にもご一緒させていただいて、そのときはまだ10代で、かわらしい子というイメージだったんですが、今回一緒になってとても頼もしくなっていたなと感じました。

――ちなみに稲葉さん自身はホラー映画は得意な方ですか?

稲葉: 実はホラー映画があまり得意じゃないんです…怖いんですよ(笑)。でも先日、映画『アス』を観たのですが、あの作品はいろんな要素が入っていて、怖いけどすごく議論の余地がある映画で、とても怖かったのですが、何が起きるかわからない面白さの方が勝っていて、とても楽しめました。

むしろ小さい頃はホラー映画大好きだったんです。でもある時から急に怖く感じて、もうそこからは怖くて怖くて…、観れなくなりました(笑)。

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『シライサン』は2019年1月10日より公開

取材・テキスト:編集部
撮影:Mayuko Yamaguchi

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