Fリーグのプレーオフ争いが佳境を迎えている。1位の名古屋オーシャンズ、2位のバサジィ大分が大きくリードした中、焦点はどこが3位に食い込むか。
5位につけるペスカドーラ町田の滝田学にはプレーオフに出場したい特別な思いがある。「あいつらとプレーオフに行きたい」。
あいつらをプレーオフに連れていきたい
「頂点を目指すオールスター軍団」。
昨シーズン、Fリーグの放送するAbemaTVで、町田につけられていたキャッチフレーズだ。町田は名古屋が優勝を重ねるFリーグに風穴を開けるべく、大型補強を行ってきた。キング・オブ・Fリーグこと森岡薫、FリーグでMVPと得点王の実績を持つクレパウジ・ヴィニシウス、最強守護神のピレス・イゴール、日本最高峰のテクニシャン・室田祐希。
これだけのメンバーがいれば、名古屋と優勝争いをするのではないか――。ファンの期待は高まった。しかし、2018/19シーズンの最終結果は5位。序盤戦から勝ち点のとりこぼしが目立ち、最後まで波に乗り切れなかった。シーズン終了後には3シーズン率いた岡山孝介監督の退任が発表された。
失意を味わった新たに町田が招聘したのがスペイン人のルイス・ベルナット監督。新監督は「今のチームはベテランが多い。若い選手を育成していきたい」と宣言した。その言葉通り、2019/20シーズンの町田は様変わりした。22歳の二井岡嵩登、伊藤圭汰、21歳の菅谷知寿、中村充、18歳の倉科亮佑、毛利元亮、甲斐稜人……。若い選手がピッチで躍動する姿は、世代交代を強烈に印象づけている。
彼らは育成年代の段階からFリーグの下部組織でフットサルに打ち込んできた、“フットサルネイティブ”だ。「チームに素晴らしいものを与えてくれている」とスペイン人監督も実力には太鼓判を押す。とはいえ、経験不足はいなめない。大事な試合でプレッシャーがかかれば、普段はやらないようなミスをしてしまうこともある。
そうした危機を察知し、未然に防ぐのが、キャプテンの滝田学だ。日本代表でも守備の要として活躍する男は言う。
「攻めに関しては若手の選手たちはみんな本当にうまい。でも、ディフェンスなどではまだまだ改善すべきことがたくさんある」
滝田が改善を要求するのはプレー面だけではない。 “闘将”と呼ばれほど気持ちを前面に出してプレーする男から見ると、今の若い選手たちは「すごいクール」に映るという。
「表には出さないだけで、内に秘めた熱い気持ちみたいなのはちゃんと持っている。だからこそ上手いだけじゃなくてもっと戦える選手にしてあげたい。重要な試合になればなるほど、最終的にはそういうところが勝敗を分けるので」
町田は、現在プレーオフ争いの真っ最中だ。28節終了時点で勝点48の5位ではあるが、プレーオフ進出圏内の3位・大阪との勝点差は「4」。まだまだ十分逆転可能な位置につけている。
「絶対にプレーオフに出たい」
そこには滝田の一選手としての思いだけでなく、日本の未来を背負って立つ若い選手たちのためにいう気持ちがある。
「やっぱり、プレーオフのピッチで味わう緊張感というのは、リーグ戦の1試合とはまるで別物なので。初めてのプレーオフが今年なのか、それとも来年になってしまうのかで、これからがまったく変わってくるんです。たった1年で? と思われるかもしれない。でも、本当に時間が経つのは早い。だから今が本当に大事なんです」
12月15日(日)には3位・大阪をホームの町田市立総合体育館に迎える。ここで勝てば大阪との勝点差は1まで詰め寄れるが、もしも敗れればプレーオフ進出が一気に遠のいてしまう。そんな大一番において、滝田のプレーが重要になるのは間違いない。
あいつらとプレーオフに行く――。
覚悟を胸にピッチに立つキャプテンの熱い生き様を、ぜひとも目に焼き付けてほしい。
文・福田悠