なぜ反感を覚える?グレタさんの言動に噛み付く大人たち 小島慶子氏、夏野剛氏の見方は?
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 15日に閉幕した、国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP25)。開催地となったスペイン・マドリードを目指し、今回もヨットで大西洋を横断したのが、スウェーデンの若き環境活動家、グレタ・トゥーンベリさん(16)だ。9月に開かれた国連の温暖化対策サミットでの演説が若者を中心に共感を呼び、その運動は世界中に広がった。

 まだ高校生のグレタさんの活動は、2018年8月にスウェーデン議会の前で行った気候のための学校のストライキに始まり、今年8月には二酸化炭素を排出する飛行機などの乗り物は使わないとして、英国から米国までヨットで大西洋を横断するなど、大きな注目を集めてきた。12月には、タイム誌「パーソン・オブ・ザ・イヤー」にも選出されている。

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 しかし、「どこに行っても(環境保護の)意識が欠けている。指導者たちの振る舞いは緊急事態のものではない」など、環境問題に消極的な大人や政治家たちを厳しく批判する姿勢に対しては、批判的な見方も根強い。アメリカのトランプ大統領は「馬鹿げている。グレタは怒りのコントロールに取り組み、友達と古き良き映画を見に行け!落ち着けグレタ、落ち着け!」とTwitterで批判。さらにトランプ営の公式アカウントは、前出のタイム誌の表紙をトランプ氏の写真にすげ替えた画像を投稿している。また、ブラジルのボルソナロ大統領も「あんなガキにマスコミが場所を与えるなんて」と厳しい口調で批判している。

 AbemaTV『AbemaPrime』では、各国の首脳まで巻き込み、世界中で激しく賛否の分かれるグレタさんの言動について議論した。

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 カンニング竹山は「なぜ16歳の子が矢面に立たされて、文句を言われないといけないのか。もっと大人たちが前に立ったが良いんじゃないのか。背景には何があるのかも気になる」とした上で、次のように指摘した。

 「日本も以前はCO2を削減しようといっていた。しかし福島第一原発事故の後、全国の原発を止めて石炭を燃やす火力発電に切り替えるようになって、あまり言われなくなった。それがグレタさんの登場によって、また言い出した。本当にちゃんと考えてるのかなって思う。やっぱりこういう問題って、感情論だけじゃ語れない。確かに原発は無いほうがいいし、それでエネルギーが賄えればいいんだけど、現状ではそうはいかない。CO2を減らそうとすれば、その先には僕たちが我慢しなければいけないこと、今まではできたけどできなかったことが出てくるし、洋服の問題、飛行機の問題、いろいろな問題が出てくる。そして、お金を持ってる国はいいけれど、貧乏している国は更に貧乏になるかもしれないし、いまの経済の仕組みの中では、それで死んでしまうひとも出てくるかもしれない。理想論を言えば、CO2は絶対に減らさなければいけなし、地球を守るためには必要なんだけど、何ができるのか、何からはじめたらいいの。減らしたらどうなるのということを、一つ一つ話し合わなければいけない」。

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 エッセイストの小島慶子氏は「国連のグテレス事務総長も“お題目だけ言う人は参加しないで。本当に行動する国のトップだけ来てくれ”というような、かなり強いメッセージを出している。感情が出た演説もあったが、普段は割と冷静なスピーチをする人で、感情論でものを言うわけではない。年齢や性別、親の職業などが注目されがちだが、グレタさん個人の是非ではなく、彼女の訴えている問題が私たちにとってどれくらい切羽詰まった出来事なのか、それを受け止めないと、単なる“グレタいじめ”みたいになってしまう」と問題提起。

 「私も住んでいるオーストラリアと日本の往復で大量のCO2を出しているので、乗る度に心苦しく思っている。でも、人間は吸った息を吐くだけでもCO2を出すし、一人ができることには限界がある。ただ、グレタさんがヨットで移動しているのは、人々の注目を集め、メッセージを伝えるためにやっていること。全員が同じことをできるわけではないことも分かっている。そして、“大企業や産業界のトップ、国のトップが決断して行動しないと、大規模な取り組みはできない。どうかあなたたちが動いてください”と言っている。これは決して感情的ではないし、合理的で現実的な提案だと思う」。

 また、グレタさんが学校の前で始めた「フライデー・フォー・フューチャー」運動についても、「選挙権のない子どもたちが“自分たちにも意見表明させてほしい。大人になった時の地球環境のために政治家の人に今動いてほしい”という意思表示として始めたものに大人たちが参加して広がっていった。若者が現実もわかってないのに声だけ挙げた、というより、それ以外に声をあげる方法がないから団結して声を届けようとしたということ。そこは応援してあげたいと思う」との考えを示した。

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 慶應義塾大学の夏野剛・特別招聘教授は「16歳の女の子が言っていることだからメッセージ性があって、あれを僕が言ったら“何も分かってない”で終わる。そして、グレタさんの主張の先にある問題は、地球上に人間が多すぎる、ということだ」と話す。

 「彼女の言うCO2の削減は、地球環境を守るためには非常に正しいが、その副作用も山ほどある。大人たちがすぐに行動を起こせないのは、そんな中でいきなり実行に移す有効な手立てがないからだ。つまり、民主主義である以上、人命優先、国民が豊かになることを考えれば、地球環境には悪いことをしなければならない。もし地球環境が大事だと言ってる国民が、今より貧しくなっても受け入れるかと言われれば、それは甚だ疑問だ。医療が進歩して人間がどんどん生き延びられるようになっている。人間が生き、文明を追求する以上、間違いなくエネルギー消費量は増えていく。これから発展途上国の一人あたりのエネルギー消費量も、先進国並みになっていくだろう。その代替エネルギーとして出てきたのが原発だが、その副作用は大きい。しかし残念ながら、自然エネルギーでは人間の文明は支えきれない。この、人間の数が多すぎるという問題を本当に解決できるのか、ということが問われている。日本社会が試されているのも、人命が大事なのか、地球環境が大事なのか。地球環境を優先するのであれば、人が放射線で死んだって原発にしなければいけない。でも、グレタさんのことを取り上げるメディアはそういう話はせずに、“彼女の言ってることは正しい。大人は何も行動しない”とばかり言う。それは違う」。

 さらに夏野氏は「世界中のメディアがちょっとはしゃぎすぎていると思う。取り上げるなら、対抗案をちゃんと示せと言いたい。実は今、すごく皮肉なことが起こっている。非難されている企業が“SDGs”を訴えていて、むしろ一般人の方が何も考えていない。実は移動距離あたりにCO2消費量は車が最も多い。それなら、なぜ車を停めろと言わないのか。CO2のことを言っている奴は、まず車に乗るのをやめろよと言いたいそれができないのは、いわゆるまともな一般庶民が“それは困る”と言い出すからだ。だからこそ、世界中の若者たちは“車に乗らない運動”をすべきだ。どこの国も自動車産業はものすごい付加価値を作っているので、そのインパクトは産業界にものすごく与える。そして同時に、すぐにはこの問題が解決しないことも考えなければいけない。それでも各国が協力して研究機関を作るようなことができるか、ということが問われている」と訴えた。

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 編集者・ライターの速水健朗氏は「もちろん彼女が言い出したことで“飛び恥”(CO2を大量に排出する飛行機を利用するのは恥ずべき行為だという考え)が広がったという側面はあるが、実はヨーロッパの若者の間では以前から鉄道旅行が流行っていた。環境負荷が低い乗り物だということもあるし、旅行代理店が組んだような旅行ではなく、もっと時間をかけて移動しようというような運動があったということだ。その代表として彼女が出てきて共感を呼び、言葉が付いてきた、という流れがある」と説明。

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 「企業に“生産しないで”と言ってしまうのは違うし、協力が得られなくなってしまうが、色んな産業で燃費を良くするという取り組みはできるはずだ。そこは消費者運動も進歩していて、みんな知識を共有しながら企業へ言いたいことを言っている。企業側も頑張っていて、それこそトヨタだってハイブリッドを作っているし、自動車メーカー全体がEV化に取り組むなどしている。今年9月に行われたニューヨークデモが面白かったのは、10代の子たちが古着を着ていた。彼らは毎年発表される新しい服を着るような状況に対して嫌悪感を感じていた。かつての環境運動は持たざる者と持つ者の対立だったから嫌われていた部分があるが、この運動はものすごく広がると思う。ファッション業界に行ったし、車にも行く、飛行機産業にも行く。彼らに理があるかどうかはともかく、すごく大きな消費者運動、しかもSNSで拡散するのでコストが低い。キャンセルカルチャーなど、今起こっている“何かをボイコットせよ”みたいなものを企業は無視できなくなると思う」。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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