「児童ポルノが引き金に」「今でも“子”という字を見るとギクッとする」有罪判決を受けた当事者と考える、小児性愛障害と性犯罪予防
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 昨年5月に新潟市で小学2年生の少女が殺害された事件で、新潟地裁は4日、小林遼被告に無期懲役の判決を言い渡した。幼い子どもに性的欲求を抱いて犯行に及ぶ事件は、発覚しているだけで年間1000件以上。しかも逮捕者の多くに共通するのが、高い再犯率だ。

 彼らが罪に手を染める理由の一つに、「小児性愛障害」という精神疾患が影響しているといわれている。しかし、いくら障害といえど「二度と社会に出すな」「去勢すべき」といった声や、「雑だけども死刑にしてしまえと思う。それくらいされても文句を言えないことをやっている」「2度とやらないという保証がないのですごく心配だ。GPSなどマイクロチップを埋め込むなどしてほしい」といった意見は多い。

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 実際、米国では性犯罪者の個人情報などをネット上で公開する制度があるほか、韓国のように性犯罪者の身体にGPSを取り付けて監視する制度を導入している国もある。16日のAbemaTV『AbemaPrime』では、過ちを肯定する事なく、子どもの性犯罪被害者をなくすためには何をすればいいのか、当事者の協力も得て議論した。(本文内では具体的な描写も出てくるため、閲覧には注意が必要です。)

■「言いつけられにくいシチュエーションで…本当に卑劣だった」

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 「子どもが行列になって歩いて来ていたら、上を見たり、背を背けたりする」。公園のそばでは子どもが視界に入らないように顔をそむけながら歩くのは、加藤孝さん(57)。特に思春期前の男児が性の対象の小児性愛者で、およそ10人の子どもたちに性的行為を犯してしまった過去を持つ。

 今回、自らについて顔と名前を出して話すことを決めた理由を尋ねると、「視聴者としてこの番組を見ていた時に、当事者の方にモザイクが入ってることに対して“ちゃんと伝えればいいのに”と思っていたから。自分が出ることで、セカンドレイプ的な状況を作り出してしまう可能性も考えたし、主治医にも相談した。やっぱり子どもの心にどれだけの傷を残すのか、あの頃に知っていたらと思うので、過去の自分に語りかけるように、同様の問題を持つ人にメッセージを伝えたい」と説明。番組でも、その意向を踏まえて協力してもらった。

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 中高生時代には「海水浴で小学生男児とじゃれるふりをして性器を触る」「電車で女子高校生に自分の性器を押し当てる」といった痴漢行為をしていたという加藤さんは、大学に進学すると、児童を性の対象にしたコミックなどで強迫的な自慰行為に及ぶようになる。「中学時代に半裸の男の子が出ている映画を見て興奮したことを覚えている。遡ってみると、その時からそういった感情はあった。決定的だったのは、大学時代に男児を性虐待するポルノコミックを見たこと。“これが自分の世界だ”と思った。それからポルノで強化されていった」。

 以後、家庭教師先の男子中学生に射精させるなどしたほか、30代の頃には、ボランティア活動中に障害を持つ男子高校生の性器を触ったり、通りがかった小学生男児に痴漢行為をしたりするようになる。

 「下着を下ろして性器を見たり触ったり、中学生の男児にマスターベーションを教えてあげると言って性器に触ったり。(子どもたちは)気持ち良いと思っているだろうとも、逆に怯えているだろうとも思っていた。でも、自分に屈服しているというのが性的な興奮の大きなパターンの一つだった。罪悪感はあったが、被害者がどれだけ傷つくかということを全然理解していなかった。自分自身の幼少時のマスターベーションの経験などと混同し、“別にいいのではないか”と考えていた。それでも“言いつけられたら困る”という認識はあったので、言いつけられにくいシチュエーションで被害者を選んでしまっていた。とんでもない考えで、本当に卑劣だった」。

■「どうしていいか分からずに、警察に助けを求めた」

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 そして38歳の時、商業施設内で、ガムテープを使って子どもの口を塞ごうとした。「被害者の男の子が“やめて”と言ったので、騒がれても困ると思って解放した。自分はこのままだと子どもの命を奪ってしまうかもしれなと、ひどく怖くなった」。自分自身に恐怖を感じた加藤さんは自首することを決め、そのまま警察へと向かった。強制わいせつ未遂で起訴され、懲役2年・執行猶予4年の有罪判決を受けた。

 一連の加藤さんの行動の背景には、性癖ではなく「小児性愛障害(ペドフィリア)」という精神疾患が関係していると考えられる。主に13歳以下の子どもを性の対象とし、少なくとも半年にわたり、性的衝動や行動が継続するというものだ。空想のため、苦痛や対人関係の困難も引き起こす。

 「小児性愛障害以外にも、発達障害や双極性障害、アルコール依存症もある。身体的な疲れ、人間関係のストレス、いじめといったものをうまく解決できずに感じていた“生きづらさ”から解放されたい時の手段の一つだった。典型的な行動として、児童ポルノを買い込んで一人でラブホテルへ行き、当時は違法ではなかった“ラッシュ”という薬物を嗅ぎながら、ビール片手に強迫的マスターベーションを繰り返していた。事件の前年、小児性愛の問題を解決したいと初めて精神科を受診したが、その時の診断はアルコール依存症だけだった。性の問題については男女がベッドで抱き合うモデルを見て、“これは自分には当てはまらない”と思ってしまった。そして、やってしまった。こういう言い方は誤解を招くかもしれないが、どうしていいか分からずに、警察に助けを求めたのだと思う。自分の中に残っていた“良心のカケラ”というか、依存症治療で求められる正直さが必要だ、と思えたのだと思う。事件後、弁護士さんが差し入れてくれた再犯予防のための資料で初めて自分の性の問題とアルコールの問題が似ていること、そして解決可能だと思えた」。

■それから19年…「今も目に入ったら避けている」

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 それから19年間、子どもへの性的行為は行っていない。しかし元来の欲求や感情が無くなったわけではない。今も通院と自助グループの集いへの参加を続け、再犯防止プログラムに取り組んでいるが、「子どもの“子”という字や、小学校の“小”という字でもギクッとしてしまうことがあるので、目に入ったら避けている」。それでも、疲れやストレスが溜まると、子どものことを考えながら自慰行為に耽ることもあるという。

 「回復はしているが、治癒はしないと考えている。治療を続けていれば再犯はしないで済むが、“もう絶対に再犯はしない”と考えることが逆にないと思うので、そうは考えないようにしている。衝動がコントロールできて、マスターベーションをしているだけならいいのかもしれないが、僕の場合はその一線を越えてしまった。そうなると、いかに再犯しないかが今の至上命題だ」。

加藤さんの話を聞き、タレントの池澤あやかは「“あの時、殺されていたかもしれない”と思うと、今も怖い。ただ、“気持ち悪い”だけで切り捨てても、何も解決しないと思う。そういうことが起こる前に治療につながって欲しいと感じる」と小学生の時に男性に追いかけ回された経験を明かし、加藤さんに「自分が性的嗜好の対象が小児だということの辛さもあったと思う」と尋ねた。加藤さんは「誰にも相談できないし、どうしようもないことなんだと。それは辛かった」と話した。

■「常習性と衝動性は他の性倒錯に比べても別格の精神疾患」

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 小児性愛障害について、精神保健福祉士・社会福祉士の斉藤章佳氏には「ロリコン(ロリータ・コンプレックス)と似てはいるが、こちらは精神疾患の位置づけで、治療が必要になるものだ。“児童を見ると吸い込まれるように近づいてしまう”という表現があるが、常習性と衝動性は他の性倒錯に比べても別格であると話していた当事者もいる。実際、法務総合研究所のデータを見ると、子どもへの性加害を過去2回したことのある人は80%を超えていて、薬物事犯や窃盗とは比較にならない高い再犯率がある。背景には、加害者側が小1~小3くらいの年齢の子を狙い、口止めをするという傾向があるため、被害者数は暗数が非常に多い。それだけに問題行動がエスカレーションしやすく、かつ継続しやすい。また、当院のデータによれば、専門治療につながるまでに盗撮は7.2年、痴漢は8年かかっているが、小児性愛障害の14年に及ぶ。初診時に“逮捕されていなければずっと続けていましたか”と質問すると、必ず皆さんが“はい”と答える」と話す。

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 「当院に来る人はほぼ10割が男性で、そのうち小児性愛障害という診断がついた117名分のデータによれば、塾講師やインストラクターを含む教職員が16%になっているが、これは逮捕されて初診につながった時点での職業なので、無職とカウントされている方の中にも教職員はいるはず。おそらく全体の3割くらいを占めているだろう。そして彼らの多くが治療の過程で“自分の性嗜好が職業選択の基準になっていると”話す。痴漢や盗撮とは違って、小児性愛障害の問題には個別性があるので、個々に治療プログラムを組んでいかなければ難しい」。

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 斉藤氏によると、治療にはグループセッション、再発防止プログラム、薬物療法などがあるという。

 「認知行動療法が最もエビデンスがあると言われていたが、衝動性、反復性が非常に強いため、薬の薬理作用を使って抑えることも併せてやっていくことが有効だと言われている。当院は精神科なので、向精神薬と言われるものや、うつ病の治療で使われるSSRIと言われる抗うつ薬、ADHDなどを合併している方には衝動性を抑える薬を使うこともある。それらの副作用である勃起不全を逆手に取るという部分もあるので、患者さんの合意の上で、服用していただいている。また、“やってはいけない”“回避しなさい”というだけではモチベーションが続かないので、止めることでどうなっていきたいのか。性暴力ではない別の手段で自己実現していく方法を模索していくグッドライフ・モデルもある」。

■“犯罪行為のトリガーになりうる児童ポルノの規制を”

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 また、小児性愛障害を抱えた人が犯罪行為に及ぶことを未然に防ぐ方法については、「性暴力の防止では、一次予防と二次予防と三次予防がある。一次予防が性教育と啓発だ。一次予防の段階をまず強化していくことが重要だ。二次予防は早期発見、早期治療だ。ここは法制度が変わらなければいけない。初犯の時に治療を受けるなどの制度が必要だ。難しいが、自覚を促す意味では性教育の中で性暴力の問題をしっかり伝えていくことや、治療によって止め続けることが可能だというエビデンスを出していくことで、少しでも早くプログラムにつながってくれる可能性はある。そして三次予防が、我々のやっている再発防止だ」。

 その上で斉藤氏は「一部には遺伝的な要因があると主張している人もいるが、私は生まれながらの小児性愛はいないと思う。つまり、社会の中で学習し、小児性愛になっていくということになる。ヒアリングした結果では、加藤さんのように、児童ポルノが加害行為のトリガーになったと言っている人が95%もいる。確かに“見るだけ”で留まっているが、被害者が出ている以上、これは無視できない現実だ。薬物の場合、政策的にハームリダクションにも効果があると言われているが、性の加害の場合、それはないと思っている」と指摘した。

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 慶應義塾大学の夏野剛特別招聘教授は「性加害の問題を考えた時、女性から見ると“えっ?”と思うようなことでも、男性の間は“まあ、それくらい”という感覚がどこかにあると思う。その現れが児童ポルノだと思う。よく、“これも表現の自由だ”という人がいるが、漫画の世界には、そういうことをやる主人公が山ほど出てくるし、“やっても平気だ”と思ってしまう人も出てくるだろう。その意味では性加害の温床になっていることは紛れもない事実だし、それらが街中のコンビニなどにも反乱している日本社会は緩いと思う。もっと性犯罪に対しては、社会のルールを厳格にしなければ、煽られてしまう人たちが出やすい土壌のままだ」と厳しく指摘。

 加藤さんも、「僕自身も心理的虐待を受けていたので、子ども心に“大人になったら子どもをいじめるような大人にだけはならない”と誓っていた。それでも、なってしまった。僕が立ち直るきっかけとなったのが、サバイバーの方たちの手記だった。それを読んで、自分がどれだけ深く子どもたちを傷つけてきたかと思った。例えば思春期前に、そういうことについて学んでいたら違ったと思う。また、ゲイ雑誌の中にある男児小児性愛のポルノの広告を見て、自分の居場所というか、“自分は少年愛者だ”という考えが強化されてしまった。一般化することはできないが、やはり自分はすごく刺激を受けたし、妄想を強化して自己正当化してきたことは間違いない。今の法律、規制は、不十分だと思う。たとえフィクションであっても、子どもに性被害を与える表現への規制は必要だと思う」と語っていた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)