寝る時間もなく、バスに乗ることすら困難…多胎児の子育てに苦しむ親たちを救うためには?
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 今、新生児に占める多胎児(双子や3つ子など)の割合が50年前に比べ約2倍に増加していることをご存知だろうか。育児の中で感じる喜びも大きい一方、核家族が進む現代社会においては、親の大変さは2倍、3倍だ。

 愛知県豊田市で昨年起きた、生後11カ月の3つ子を育ていた母親が次男を床に叩きつけ死亡させた事件。公判で明らかになったのは過酷な育児の実態だった。「ミルクは3人合わせると、1日に24回、睡眠時間は1、2時間ほどだった…」。懲役3年6カ月の実刑判決が確定した母親に対し、多胎児を育てる親たちからは、同情の声も上がった。

寝る時間もなく、バスに乗ることすら困難…多胎児の子育てに苦しむ親たちを救うためには?

 NPO法人フローレンスのスタッフが立ち上げた「多胎育児のサポートを考える会」の調べによると、家計の負担のほか、「双子が交互に寝起きするため寝る時間がない」「家に引きこもりがちになり社会から孤立。育児ノイローゼになった」「子供や親、旦那にあたってしまうことがある」と、親たちの77%が睡眠不足・体調不良を訴えているという。

 フローレンス代表の駒崎弘樹氏は「今回、1591名に調査をして初めて浮かび上がったこともあり、自由回答では“子供を投げてしまったことがある”“気が狂いそうになる。助けてくれ”など、辛い心情が綴られていて、読む方が辛くなってしまうようなものだった。やはり社会の側に“双子ちゃん、3つ子ちゃん、かわいいね。幸せだよね”という認識があり、課題があるとは考えてこられなかったのだと思う」と分析する。

 また、調査によると、「双子用ベビーカーでは行ける場所が限られてくる」「準備も大変で公園に行くだけでも命がけ」と、実に9割近くの親が外出・移動の困難さを感じている。「外出できないということは、孤立しがちだということを意味する。何かあった時にSOSを発することができず、それが3つ子の虐待死のような事件につながっていってしまうということは認識しないといけないと思う」(駒崎氏)。実際、双子用ベビーカーに子どもを乗せたまま乗車を試みたところ、運転士に拒否されたという内容の投稿は波紋を呼んだこともある。

寝る時間もなく、バスに乗ることすら困難…多胎児の子育てに苦しむ親たちを救うためには?

 埼玉県で1歳9か月になる男の双子を育てるに住む笹森康樹さん・春菜さん夫妻を取材すると、日中の外遊び、帰宅後の食事など、あらゆる場面で苦労が絶えないことがわかる。それはどちらか一人で面倒を見なければならない状況ではなおのことだ。

 春菜さんは、過去には育児ストレスで追い詰められたこともあるという。「子どもが夜泣きした時は私も泣いて、3人で泣いたりもした。そういう時は何も考えられず、近い人に当たるしかない。旦那に辛くあたっていた。最近、はっきりとママと言えるようになって、“ママ”“はーい”と言い合っているのがすごくかわいくて幸せだ。双子のサポートのグループに入れさせてもらっているので、孤立はしていないと思う。それでも同時に泣いてしまうこともあるので、うるさいんじゃないか、周りに迷惑をかけているのではないかと、どこに行くにしても周りの視線が気になる」と明かす。

寝る時間もなく、バスに乗ることすら困難…多胎児の子育てに苦しむ親たちを救うためには?

 バスの乗車拒否問題について春菜さんは「うちは親が1人の時には絶対にバスは使わない。最初から諦めている。エレベーターも先に誰かが乗っていたりすると、私たちは乗れないので“先どうぞ”を何回も繰り返してようやく乗れる感じだ。街を歩いていると声をかけて頂けることもあるが、知らない人にそこまで頼っていいものなのか。“抱っこしていてください”と言っていいものなのかと」と話す。

 1歳の子どもを両腕に抱え、折りたたんだ双子用ベビーカー背負うと、荷物の合計は30kgにも達する。この状況を体験してみたタレントの高田秋は、子ども2人を抱えたままベビーカーを畳むことの難しさ、そして身体への負担に驚きの声を上げていた。

寝る時間もなく、バスに乗ることすら困難…多胎児の子育てに苦しむ親たちを救うためには?

 駒崎氏は「“ベビーカーを畳め”と言うのは、乗るなと言うことと同じだ。双子用のベビーカーは幅が70cmくらいのものが多いが、それは大人用の車椅子と同じくらいの幅だ。車椅子の方は乗っているので、畳まなくても乗っていいのではないかというのが我々の論点だ。また、バスに乗れないのであれば、タクシーの補助も有効だ。荒川区では多胎児のためにタクシーチケットを出したりしているが、そういうことは意識の高いごく一部の自治体だけの施策に留まっている」と指摘。「都心部では核家族が多いので、祖父母が近くに住んでいない場合も多い。一方、民間のベビーシッターを2人分依頼すれば料金は倍かかってしまうし、保育園も双子というだけでは優先されない。やはり社会や行政サービスがしっかりしないといけないが、支援を受けるにも基本的には役所に行って申請しなければならず、そもそも外出するのが難しい状況とは矛盾してしまっている。妊娠期、出産、そして出産後と切れ目ないサポートが必要だが、子どもの数が減っていることで、子育て世代がマイノリティーになり、政治的な関心が高齢層に行きがちになってしまう。だからこそ当事者だけではなく、周りがサポートのための世論を盛り上げていく必要がある」と訴えていた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

▶映像:「バス乗車は無理」双子の親が持つ苦悩

「バス乗車は無理」双子の親が持つ苦悩
「バス乗車は無理」双子の親が持つ苦悩