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(白川を踏みつける“絵里奈様”。キャリアは浅いが柔軟性や身体能力はかなりのもの)

 昨年8月にプロレスラーとしてデビューして以来、グラビアアイドル・白川未奈の人生は一変した。グラビア用の肉体作りとして始めたウェイトトレーニングは、今や完全に“プロレス用”。体を美しくするより技を強化するためのものになった。ブラジリアン柔術の練習に励む姿も、SNSを通じてファンにおなじみだ。試合の中でテイクダウンしたりバックを奪ったり、関節技を極めにいく姿には説得力がある。

 プロレスで本気で取り組むうち、メディアに登場する際もレスラーのコスチュームを着ることが多くなったそうだ。今年9月には、デビューしたリングでもあるベストボディジャパンプロレスの初代女子王者となった。ベルトを巻いて人前に出ることで“プロレスラーでなおかつグラビアアイドル”のインパクトはさらに増した。

「今はすべてがプロレス中心。グラビアも、プロレスを広めるためにやりたいという感覚になってます」

 今年に入って、撮影会の仕事はしなくなったそうだ。「試合の翌日、アザを作ってお客さんに撮られるわけにもいかないので。撮影会も体力をかなり使いますし、コンディションを考えると難しいんです」と白川。もう一つの主戦場・東京女子プロレスには“可愛い系”というのか、白川の表現を借りれば「守ってあげたくなる」タイプの選手が多いが、白川はまなせゆうな、上福ゆきとともに大人でセクシーな路線。それが東京女子に合わないのではと考えたこともあったが、結局は自分の道を行くことにした。

「アメリカで、世界で一番大きい団体でプロレスがしたいという目標があるので。そこがゴールだと思っているからブレずにいられます。大人でセクシーっていうのはアメリカのほうが受け入れられやすいのかなって。海外では年齢を重ねて結婚したり子供ができてもレスラーとして輝いていられるという感じもありますね」

 東京女子では先輩レスラーが多く、立場としてはチャレンジャーだ。「なんでも必死で頑張る。お客さんにもそこを見てほしい」と白川自身も考えている。トップ選手たちは白川の全力を受け止めてくれるし、団体自体にバラエティ色がある。ラップでのタイトル挑戦表明も白川らしく、東京女子らしい場面だった。

 一方、ベストボディでは「より強さ、東京女子とは違う表情を魅せることを心がけてます」と白川。「2つの団体で違う自分が試合をしているよう」だという。

「そこは凄く難しいんです。単に自分が頑張ればいいというわけではなくて、ベストボディジャパンプロレスをもっとたくさんのプロレスファンに見てもらえるようにしたいので。引っ張るという言い方でいいのか分からないですけど、周りも意識しながら試合をする必要もあります」

 ベストボディジャパンプロレスの興行は月1回の開催ペース。所属選手の試合ペースも同じだから、東京女子にも出ている白川とは試合数、経験値で大きな差がある。その結果が白川のベルト奪取であり、現在の彼女がベストボディジャパンプロレス女子部門で頭抜けた力を持っていることは間違いない。

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(試合後にはダンカンも登場して白川を挑発)

 しかし、白川は12月19日の初防衛戦で黒星を喫してしまう。対戦相手は山中絵里奈。まだデビューしたばかりの新人で、デビュー戦の相手を務めたのは白川だった。実力では大きな差がある対戦だったが、山中は前回の大会でヒールユニット「ダンカンプロレス軍団」入り。このタイトルマッチも、大和ヒロシらセコンドの介入で勝利している。いわゆる“ベルト強奪”だ。

 白川としては消化不良、納得のいかない敗戦となった。気持ちの整理がつかないのか、すぐにベルトを奪回しようとも思えなかった。東京女子の試合でも、白川はベストボディのベルトを巻いてリングに上がっている。記者会見も当然、ベルト持参。それをやっているのは、団体の中で白川だけだ。そうしたところからレスラーとしての意識が違うから、自分以外の選手がベルトを巻くことに悔しさと違和感があるのだろう。

「愛着があったベルトなので悔しいですね……。彼女(山中)にチャンピオンとしてどれだけの技量があるのか、プロレスへの思い入れがあるのか。他の選手との対戦を見てみたいです。どんな闘いができるのか」

 本人にとっても、またファンにとってもショッキングだった王座陥落。だが白川の実力が頭抜けているだけに、正攻法でのタイトル移動はかなり難しい。今回のような“非合法”な形でなければ勢力図は変わらない。白川が実力をつけたからこそのジレンマだ。もちろん“月一ペース”の選手たちに歩調を合わせてもいられない。

「来年はいろいろ海外に行ってみたい。そこで力をつけて、ベルトに再挑戦するとしたら3段階くらい強くなってから。男子に介入されようが負けない自分になれれば」

 納得できない負けはエースの証。ベルトは失っても、トップの座を譲る気はまったくない。

文・橋本宗洋

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