(欠場中も物販などでファンの前に姿を見せていた万喜。復帰アピールをした12.22は「クリスマス物販」でトナカイに)
東京女子プロレスの1.4後楽園ホール大会にインパクトのある対戦カードが追加された。
12月22日の北千住大会、オープニングでリングに登場した万喜なつみは「みなさんに見ていただきたいものがあります」と、入場時のパフォーマンスである「側宙」を披露。これができるかどうかが「一つの目印」、つまりバロメーターだったという。
万喜は今年からフリーとして東京女子に参戦。“リングの妖精”というキャッチフレーズを持ち、柔軟で華麗な動きが魅力の選手だ。8月の後楽園ホール大会では、新設王座インターナショナル・プリンセスの初代チャンピオンになった。
だが、9月の初防衛戦でヒザを負傷。試合中まともに立てなくなってしまうほどの大ケガで、ベルトを失うと長期欠場に。手術、リハビリを経て、12.22北千住で復帰を宣言した。3カ月半ぶりの復帰戦、舞台は団体最大のイベント「イッテンヨン」後楽園だ。欠場中、万喜はさまざまなプロレス団体を観戦。そのことで得たものも多かったようだ。
「客観的に試合を見ることで、プロレスの奥深さ、それぞれの団体の魅力に触れることができました。あらためて東京女子プロレスの強みも再確認しましたし、自分の理想像、ファン目線で見た時にどうありたいかというのも見つけたので。復帰したらまた初心に帰って頑張りたいです」
(万喜の代名詞であり入場ルーティンである側宙)
万喜のベルトはまなせゆうなに渡り、まなせは伊藤麻希に敗れた。現王者・伊藤に1.4後楽園で挑戦するのは乃蒼ヒカリ。万喜のタッグパートナーだ。ヒカリの狙いは、自分がベルトを巻いて復帰した万喜とタイトルマッチをすること。その流れの中で「ヒカリに負けてられないという気持ちもある」という万喜がベルトを取り戻す可能性もあるし、ヒカリがシングルプレイヤーとして大きく成長することもあるだろう。もちろん、伊藤が王座を盤石なものにする可能性も。
加えて、万喜の復帰戦自体もドラマティックな顔合わせになった。相手はディアナ所属のSareee。かつて対戦し、タッグも組んだ親友だ。万喜はディアナでの出稽古で“全日本女子プロレス直系”のプロレスを学ぶことで大きな成長を果たしている。万喜のプロレス人生において、ディアナとSareeeは欠かせない存在だ。11月のSareee自主興行では、欠場中だった万喜がリングアナを担当。12月は合同ファンイベントを開催してもいる。
東京女子プロレスは基本的に他団体との交流がないため、万喜とSareeeのリング上での関係はいったん途切れていた。その間、万喜はインター王者となり、Sareeeはディアナとセンダイガールズの2冠を達成。現在のSareeeは女子プロレス界を代表する選手の一人になった。
大きな意味を持つ、復帰戦での“再会”。相手がSareeeである以上、ケガからの回復だけでなく東京女子を主戦場にしてからの成長も問われることになる。エモーショナルな“友情マッチ”は、万喜にとって試練でもあると言っていいだろう。
文・橋本宗洋