スリリングな展開だったからこそ価値がある。大晦日にRENAが見せた闘いは、本人の言葉を借りれば「精一杯」のものだった。

 対戦相手はリンジー・ヴァンザント。今年6月、RIZIN代表として出場したベラトールニューヨーク大会(マディソン・スクエア・ガーデン)で一本負けを喫した選手だ。

 再起戦での勝利を経て、RIZIN大晦日、超満員札止めのさいたまスーパーアリーナという最高の舞台での再戦。前回の敗戦後には、SNSで「やっぱりMMA向いてないわ」という悲痛な言葉を残した。このリマッチは、MMAファイターとしてのRENAの成長が問われる一戦、未来を切り開けるか否かの重要な分岐点と言えた。

 1ラウンドはテイクダウンを許し劣勢のスタート。しかし落ち着いて対処し、ポジションを入れ替えることに成功する。2ラウンドは後半にバックを奪われ腕十字から三角絞めでピンチ。しかしこれもラウンド終了まで耐えきった。

 RENAがMMAの練習をしているのはAACC。浜崎朱加が所属し、数々の女子強豪選手が集まる。その中で鍛えられたRENAは「下になっても焦らなくなりました。下からでも極められる選手になりたい」と自信をつけている。

 もちろん、スタンドではRENAが優位に試合を進めた。得意のボディブローは「研究されていた」と言うが、試合が進むにつれて的確にダメージを与えていった。

 3ラウンドもパンチで前進。リンジーのタックルを切るとアメリカーナ、キムラとグラウンドでのフィニッシュを狙っていく。最後はマウントポジションからパンチを連打してレフェリーストップ。グラウンドパンチ(パウンド)でのフィニッシュはキャリア初となる。

「ずっと暗闇の中にいて、どうやったら抜け出せるんだろうと。今日で少し光が見えました」

 MMAの難しさを体感しているだけに、勝っても決して大きなことは言えなかった。浜崎を下してチャンピオンになったハム・ソヒとの対戦も「まだ考えてないです」と言う。ただこの勝利で、RENAがさらに上を目指す権利を得たのは間違いない。

「強さを求めるのって果てしないですよね。どうなったら満足できるのか分からない。でもあきらめた時がファイターとしての終わり。満足することはないでしょうね」

 格闘技はどこまでも奥深い。どこまでいっても満足できないからこそ、闘っていくしかない。勝ち続けている時には忘れがちな感覚を自分のものにして、RENAは2020年を勝利で迎えた。

文・橋本宗洋

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