モンゴルの豪腕が、中国のホープを右のぶん回しフックで一撃ノックアウト。その衝撃の大きさが、レフェリーを巻き込む“前代未聞”の珍事に発展した。
1月10日のONE Championship「ONE: A NEW TOMORROW」。シネチャツガ・ゼルトセトセグ(モンゴル)とマー・ジェイウェン(中国)の総合格闘技戦は、ONEにおけるアジア各国の次世代スター候補の潰しあいを象徴するような珍プレー的ハプニングで記憶に残る試合となった。
ゼルトセトセグはONEの登竜門リーグ「ウォリアーシリーズ」で、元UFC王者のレジェンドファイター、リッチ・フランクリンに見出されたアスリートの1人。モンゴルが国を挙げて英才教育を施し、散打やキックボクシング、ボクシングなど打撃系を中心にスキルを磨いた格闘エリートだ。ONEの下部リーグでは、ノーガードで打ち合い対戦相手を挑発する負けん気の強さで存在をアピール。棄権での1敗を除いて5戦4勝3TKOと、豪腕ぶりを遺憾なく発揮してきた。
一方のマー・ジェイウェンは中国のフリースタイル・レスリングで銀メダルの実績を持つ。「キャノン」のニックネーム通り打撃にも長けONEで4連勝中だ。近年唯一の敗戦が2016年、現在ONEで猛威を振るうザイード・フセイン・アサラナリエフのみということで、中国期待のホープの1人である。
1ラウンド序盤からキレのある右ロー、左右のフックを振り回すゼルトセトセグ、ボディへの一撃も強烈。マーが1歩、2歩と後退する。さらに飛び込むような独特のタイミングで左と見せかけての右フックが頭を捉え、効いたマーが足を着くフラッシュダウン。事なきを得たかのようにマーが再び打撃戦を挑むが、すでに足取りはおぼつかない様子だ。スイッチして狙い澄ましたオーバーハンド気味の右ストレートが鈍い音とともに炸裂すると、倒れたマーに追い打ちを掛けたところでレフェリーが割って入った。
わずか55秒のKO撃。試合直後、ゼルトセトセグのパンチのダメージを象徴する珍しいハプニングが起きた。パンチで完全に脳を揺らされたマーが、止めに入ったオリビエ・コスト・レフェリーに本能で足関節(膝十字)を決めた。マーは対戦相手を認識できないほど意識が飛んでいたのだ。
まさかの出来事に試合を中継したAbemaTVの視聴者は騒然。「レフェリーがwww」「膝十字」「審判に技をかけてて草」「もう意識が無くてww」などコメントが殺到していた。
そのスリリングなファイトスタイルは、さながら「モンゴルのイゴール・ボブチャンチン」。また一人、“ぶん回し系”豪腕パンチャーがONEのリングに登場した瞬間だった。