壁一面に張り付くテレビに、AI搭載の料理手助けロボット。4500社以上が最新の技術を持ち寄る世界最大級の家電・ITの展示会「CES 2020」がアメリカ・ラスベガスで7日から開催され、様々な最新家電が披露された。
今回のCESで目立ったのが“分野を超えた出展”だ。1566年創業の寝具メーカー「西川」は、マットレスから得た睡眠データによってエアコンや照明などを自動制御するシステムを公開。スポーツ用品メーカー「アシックス」は、デジタル技術を駆使したスマートランニングシューズでCESに初めて本格出展した。他にもNTTやブリジストンなど、日本から多くの企業が初出展した。
分野を超えた発表で注目を集めたのが「ソニー」。提携する企業と開発した電気自動車は、各シートにスピーカーが搭載され、直感的に操作できるスクリーンを搭載するなど,ソニーが持つデジタル技術を生かした自動車となっている。
ソニーとは逆に、自動車メーカーにも関わらず驚きの構想を打ち出したのが「トヨタ」だ。「私たちは東富士にある約70万平方メートルの土地に“未来の実証都市”を作ることを決めた」。「Woven City」と名付けられたこの街では、住宅や家電、ロボットなどありとあらゆるものがインターネットでつながるという。街中にはトヨタが開発している自動運転の電気自動車が走り、家の中にもロボットの姿が。そして、地下では自動化された配達ネットワークが張り巡らされている。
トヨタは2018年、ソフトバンクとAI開発において提携を発表するなど、他業種との連携を進めている。背景にあるのは海外勢の存在だ。未来の都市開発を国レベルで進めている中国。北京中心部から車で1時間の場所にある雄安地区は、自動運転の実験場になっている。
今回のCESで目立っていた、業界の垣根を越えた技術の集約。しかし、あらゆるものがインターネットでつながる街は「トヨタだけでは実現できない」と豊田章男社長は話す。
「未来を創るにはトヨタだけ、自動車会社だけではなかなかできない。『トヨタとこれに参加してみたら面白い』とか『トヨタって官僚的で嫌な会社だと思っていたけど結構面白いじゃん』って思っていただければ非常にありがたいなと思うし、そういう方々と一緒に未来を創っていきたい」
トヨタが打ち出した未来の都市構想。CES 2020を実際に現地で取材した『WIRED』日本版編集長の松島倫明氏は次のように話す。
「トヨタのプレス発表はもともと1時間の枠があったが、冒頭から豊田社長が登壇しわずか18分で終わる簡潔なものだった。新車の発表などは一切せず、この実証都市の構想だけを発表したことで、逆にこの大きなプロジェクトにかける意気込みが伝わり、会場に詰めかけた世界中のメディアも驚きをもって受け止めていた。都市という物理的なプラットフォームの上に情報のプラットフォームをいかに重ね合わせるかという最先端の課題を、日本で真っ先に掲げた企業だと思う」
『WIRED』では、現実の世界がデジタル化され情報の世界と重ね合わさっていく「ミラーワールド」がWEB、SNSに続く“第3のプラットフォーム”になると提唱している。松島氏は「トヨタは織機から始まった会社で、『Woven』の名前もそこからきている。まさに人とモビリティ、情報を編み込むようなもの。業種に囚われたプロダクトを作るのではなく、そこをいかに横断して紡いでいくかという動きが加速していくと思う」と述べた。
(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)








