「これからのインターネット社会を支える燃料だ」“投機”ではない仮想通貨の可能性を考える
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 まもなくコインチェックの「NEM」流出事件から2年。その後、「仮想通貨」の法令上の呼称は「暗号資産」に変わり、“バブル”当時は16社あった正規交換業者は22社(みなし業者から3社+新規で3社)に、同じく16社あった“みなし業者”は0社となった。

 そして街を行く人たちからは「昔は価値が上がっていたけど…」「株と同じで軽率に手を出したら怖いので買わない」「流出が相次ぎイメージが悪い」「やろうとしたが流出事件があり、やめた。以降していない」といった冷ややかな声も聞かれる。

 そこで22日のAbemaTV『AbemaPrime』では、改めて仮想通貨・暗号資産の可能性について、識者に話を聞いた。

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 まず、マネーパートナーズグループ代表の奥山泰全氏は現状について「良くも悪くも2年前の事件が日本の利用者に与えた影響は大きい。おかげで交換業者の管理体制や安全基準は飛躍的に高まったという面はあるが、一方で“オワコンなんじゃないか”と見られてしまうようになったのは非常に残念なことだ。取引されている量自体も、日本は2年前の30分の1になってしまっているが、世界の市場は拡大している。2年前は1700銘柄だったのが、今や5000銘柄もある」と話す。

 その上で、“投機”の対象と見られていることについては、「確かにブロックチェーン技術の付加価値として値上がりに期待している投資家、もっといえば投機する人がいらっしゃるのも事実だ。しかし社会実装が進んでいないものの、決済手段、ある種の交換券としての可能性もある。プルーフ・オブ・コンセプト(POC)といって、エンジニアたちが“こんなのどうだろう”と実験的に出してきていて、その中から実証実験ベースまで上がってきているものがちらほら出始めている。その大元にあるのが公共データベースとしてのビットコインやイーサリアムのネットワークで、これがデジタルのインターネット社会を支えるデータベース利用料や燃料だ。まだ出来上がっていないが、自動車が完成すればガソリン代が値上がりするかもしれない、だかから今のうちにガソリンを買っておいた方がいいんじゃないのと、そういう話だ」と説明。

 「トマトの値段でも何でも価値は変動する。ある程度の価値変動は正常な範囲で行われるべきだと思うし、買い占めや過剰投機を排除し、小さなところで適切に価値変動していくマーケットがたくさん出てくればデジタル化された社会は便利になっていく。もともと暗号資産、仮想通貨というものはダイバーシティを実現させるためのコミュニティ通貨のような価値観が根っこにあり、それが大規模になっていったもの。仮想通貨はLibraが目指すような、中央銀行の通貨のようなものでもないし、どちらかといえば株式とポイントの間、クラウドファンディングと株式の間にあるようなものだ。たとえばダイナミック・プライシングについても、価値変動の記録がブロックチェーンに残っていた方が公平性・透明性が高い。そういうイメージで見てほしい。そういう中で最初に沸いてしまったのがビットコインだった。だから日本の金融庁も“通貨”と言われたくないから暗号資産としている。デジタル上の一つの資産の形だ」。

 今後について奥山氏は「優先順位や人間の価値観など目に見えない変動する価値が仮想通貨によって管理される時代が来る」と話す。例えばアトラクションに並ばずに即時に乗ることができる仮想通貨が考えられるといい、待ち時間によって価格(価値)が変動するなど、時間的価値(待ち時間)が仮想通貨によって管理された、これまでにない経済活動ができるのだという。

 「ファストパスではなく、これを持ってきたら即、乗せてあげる、待ちなしというコインの価値があったとする。“2時間待つか?それとも今乗るか?”と言ったら、乗る人もいるだろう。逆に4時間待ちになったらもっと値段が上がってもおかしくない。家族4人で遊園地に行って、お父さんだけ4時間並ぶのはいいものではないので。価値が変換された方が、変動した方がいいものもある」。

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 奥山氏の話を受け、慶應義塾大学の坂井豊貴教授は「お金の概念が溶けてきていると思う。奥山氏のアトラクション即乗りコインは、お金とチケットの間のようなものだ。価格も日々、変動する。そういう意味ではお金っぽい。でもアトラクションに乗るチケットだと。ブロックチェーン技術は結局、“準お金”のようなものを世に生み出す技術だと思う」と話す。

 また、坂井教授は「日本が仮想通貨で遅れをとっていることには危機感を感じる。日本国内でも仮想通貨に関心を持ち続けている人と興味を失った人の差がすごく激しい」としつつ、“通貨”としての価値について、次のように説明する。

 「僕たちはゴールドやシルバーを使って買い物はしない。しかしゴールドやシルバーで価値の保存はできる。ビットコインはそういう存在になる過程にあると思うし、発行量を中央銀行や政府が勝手に変えられないという意味でも、意味では価値の保存手段として優れている。そこはもう少し評価してもいいのではないか。僕はデジタル人民元のことを聞いて、改めてビットコインの魅力を再確認した。なぜなら、政府発行のデジタル通貨の場合、何か反政府的なことをしたらアカウントを停止されるかもしれないし、私有財産が全額没収されるかもしれないので、すごく怖い。しかしビットコインに対し、そういうことはできない。歴史的に見ても、国家ではないところが発行する通貨は結構あった。日本でも江戸時代には藩札や村の有力者が発行した通貨もある。現代のビットコインも、国家リスクを回避する機能を持っていると思う。一度買って、取引やお金の移動をやってみたら分かると思う。触って欲しいと思う」。

 そして“投機”の問題についても、「ネガティブに語り過ぎだと思う。投機があるから取引量が増え、マーケットに厚みが出て、価格が形成される。そして投機する人がたくさんいるからこそ流動性が増し、ものの価値が上がる。金融庁もそうだが、投機の良さをもっと認めたらいいと思う」と訴えた。

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 『真相解説!仮想通貨ニュース!』という番組の司会者を務めていたジャーナリストの堀潤氏は「メディアも含め、海外に比べて通貨取引の話ばかりで、“儲かるぜ”、という狂想曲があった。それはやめなければいけないし、ブロックチェーン技術を育成し、実装するビジネスを育てる環境を作らなければならない。中国がデジタル人民元を作ろうとし、国家として仮想通貨を使おうとしているところが出てきている中、日本は規制のことばかりだ。国会議員にも話ができる人がいない。国益を考えて、これで大丈夫かと思う。IT企業が北米中心になってしまったのも、普及するかどうか分からないからと投資したり関わったりしようとしなかったからだ。そもそも新しいサービスをブロックチェーン技術で作る時に投資する、その対価として発行されているということを、みんなわかっていないと思う。企業への投資と一緒で、上手く行けば利益が返ってくるから面白い。資産を持つという感覚だ。消費者の感覚でいたらメリットはないと思う。通貨という概念に縛られるのではなく、幅の広いテクノロジー、インフラだと思ったほうが良い」とコメント。

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 スマートニュース社の松浦シゲキ氏は「日本円でも外貨とは交換できるが手間がかかる。ビットコインではそれが何も考えずに交換できる。そして、お金のやりとりもコミュニケーションだ。その担保を第三者の視点で守り、残してくれるのがブロックチェーン技術の価値だ。その価値はわかりづらいが、公文書偽造の問題もある。そのことをアピールしていかなければ」とした。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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