EXILEをはじめ数多くの人気アーティストが所属するLDHには“格闘技部門”の会社も存在する。その名もLDH martial arts。代表を務めるのは修斗やDREAMなどで活躍してきた高谷裕之だ。
これまでジム「EX FIGHT」の運営やサプリメントの販売などを行なってきたが、今年はさらなる展開として「LDH FIGHTER BATTLE AUDITION」を開催。ここで選ばれた新人選手はLDH所属のファイターとなり、その成長を追うリアリティショーも製作予定。さらにデビューの場として大会も開かれるという。これだけ大掛かりな企画を成立させることからも、LDHの“本気”が分かる。
十数年前から、LDHは高谷のマネジメントを担当。イベントで知人を介して知り合ったHIRO氏とジムで再会、意気投合したのがきっかけだったそうだ。2年ほど前にジムを設立。そのベースがあった上での今回のオーディション企画である。
「もともと、HIROさんが格闘技が大好きなんですよ。格闘技好きを自負するくらい(笑)」
LDHが手掛けるジムということで、オープン当初はLDHのファンである女性の会員が「9割くらい」だったという。プロの最前線でやってきた高谷としては「今でも探り探り」。そんな中で「格闘技に尖りすぎないようにダンスとかフィットネス系の練習も入れて。で、格闘技に興味が出てきた会員さんには、専門性の高いトレーナーに担当してもらいます」。
LDHの色を出した格闘技ジムを作ることで、格闘技に付きまとう“恐そう”というイメージを変えたいという狙いもあった。今回のオーディション企画も同じだ。高谷は「恩返し」という言葉も使った。
「僕が格闘技を始めた頃は、格闘技で飯が食えるようになるなんて思ってなかった。いい時代に格闘技に人生を作ってもらった感じがしますね。だからその魅力をもっと広く伝えて、格闘技で生きていく人間を増やしたい。恩返しの気持ちが強いです」
オーディションは身長体重、格闘技歴、スポーツ歴などは不問となっている。今現在のスキルではなく“素材”重視。その中で高谷個人としては、かつての自分のような存在に出てきてほしいという思いもあるようだ。
「僕自身、23歳でゼロから格闘技を始めたので。そういう子にも期待したいですよね。不良上がりだったら余計面白いなと。ベースがゼロでもいいので。いい素質のある子が地方にいると思うんですよね、九州とか(笑)。不良格闘技、地下格闘技イベントも一時期流行りましたけど、そこで満足しちゃう選手が多かったじゃないですか。そうじゃなくてより大きい舞台を目指してほしいし、僕らは格闘技のイメージを上げていきたい」
オーディションに合格すれば、各ジャンルの専門家が指導する本格的なトレーニングが待っている。
「僕はあんまり格闘技を習ってこなかったんですよ。最後のほうは専門的に習って、いろんな技術を取り入れることができたんですけど。今はそれが最初からできる環境がある。キックでも組技でも専門家のコーチがいるので。そこに新しい選手が入ったらどうなるのか楽しみです。やっぱり、独学としっかりしたコーチに習うのでは成長度合いが全然違うと思います。特にディフェンスが。僕はケガだらけでしたけど(笑)。習ってないとそうなっちゃうんですよね」
高谷は“一芸”での合格も考えているようだ。
「個人的には、技術があるとかじゃなくて持ってる雰囲気とかを見ていきたいですね。パンチ力も、習って身につくもんじゃないという人もいるじゃないですか。だから“とにかくパンチが強い”だけでもいい。めちゃくちゃ腕相撲が強いとか。“腕相撲強い人間はパンチも強い説”ってあるんですよ。僕はそれ、信じてますね」
そして多種多様な人材が磨かれていく様子が、リアリティショーで披露される。たとえば“人生を変えてみたいとくすぶっていた若者”が、LDHという環境で人間的にも洗練されていくということもあるだろう。番組では、LDH所属のアーティストと一緒に練習するなど“共演”の可能性もあるそうだ。LDHのアーティストが入場曲を作る、そんな展開もあり得るだろう。
「そうやって強くなるだけじゃなく、デビュー前から人気が出る選手も出てくるかもしれないですよね。そうなったら面白い。選手たちがデビューする大会は音楽もミックスしたものにしようと思ってます。そういう部分もLDHらしく」
LDHという“器”を使って、格闘技をより広くアピールするのがこの企画の目的だ。リアリティショーの視聴者、大会の観客もLDHのファンの割合が多くなるのではないか。
「会場にLDHのファンが来てくれたら、その人たちに本物の格闘技、本物の格闘家を見てほしいですね。オーディションから出てきた新人だけじゃなくて、今プロでやってる選手の試合も組んでいきます。今まで格闘技を見たことがない人に本物の格闘技を見てもらって、その魅力に気づいてもらえればと」
高谷が「恩返し」と言うのは、まさにその部分だ。『HiGH&LOW』シリーズではアクション映画ファンを唸らせたLDH。今回の“LDH所属ファイター”発掘企画も、先入観なしで見ていったほうがいいだろう。
文/橋本宗洋