27日、中国当局が厳戒態勢を敷いていたはずの北京でも新型肺炎による死者が出た。すでに中国本土の死者は132人に達しており、感染者も5974人、このうち重症者1239人が重症で、2002年から2003年に流行した重症急性呼吸器症候群=SARSの感染者を上回るレベルだ。
日本政府は28日午前に行われた閣議で新型コロナウイルスを「指定感染症」にすることを決定。指定は5例目で、患者の強制入院や就業制限、濃厚接触者の調査など厳重な法的措置が可能となり、医療費も公費で負担できるようになる。そんな中、奈良県に住む60代のバス運転手の感染も確認された。武漢の滞在歴は無いが、今月に入って武漢らのツアー客を2度乗せていたという。ついに国内でもヒトヒト感染が現れた格好だ。
感染症に詳しいナビタスクリニック院長の久住英二医師は「咳やくしゃみをした際に飛ぶ唾の中にウィルスが含まれているので、半径2mくらいのところで長い時間過ごした人を濃厚接触者と、見て、すでにご家族や仕事の同僚などのフォローアップを始めていると思う。だだ、乗客については濃厚接触とはされていないと思うし、運転手の方がたまたま診断されただけで、軽症だった方が診断もされずに終わっていることも考えられる。実態としては、感染は広がっていると見るべきだ」と話す。
「感染が分かっている方は指数関数的に増えていっているが、死亡者数はそれほど増えていないところを見ると、重症化する人はあまりおらず、毒性としては下がっているということだ。ウイルスはどんどん変異していくが、一般的には毒性が下がっていくのが普通だ。あるいは先週の金曜日に有名な医学雑誌に細かい報告があったが、初期に診ていたのは本当に重症の人たちで、実は死亡率は高くないということが見えてきているのかもしれない。実際、中国は退院されている方もたくさんいるようだ」(同)。
新型コロナウイルスの感染者はすでにカナダ、ドイツ、スリランカでも確認されており、拡大はとどまることを知らない。24日にはイギリスとアメリカの大学研究者が立ち上げた共同チームは、合わせて最大35万人超が感染する可能性があると発表。ピークは4~5月に来るのではないかとの見方もある。そんな中、羽田空港に帰国した人たちについて、フランスのように隔離すべきではないかとの意見もある。
「感染力の強さの指標で言えば、今流行っている季節性のインフルエンザがだいたい2で、今回の新型コロナウイルスは最大5.5くらいになるのではないかといわれている。これを封じ込めることはできないと思うし、感染者の数はこれから増えていくのではないか。それでも私は今回の東京都のやり方が現実的だと思っている。すでに国内に感染者がたくさんいるかもしれない今、この方々だけを特別扱いしても仕方がない。検疫に関しても、潜伏期や発病する手前の、症状のない方は当然スルーするし、症状がないまま終わってしまう方は引っかからない。ただ、中国がさすがだなと思ったのは、ウイルスの増殖を抑えるためにHIVの薬が臨床試験として患者さんの治療に使われている。今後、日本で患者さんが増えて重症化する方がいた場合に、中国で有効性が証明された薬でも、日本の当局は“日本でまだ安全性が確認されていないから使えません”と言う可能性はある。確かにリスクはあるかもしれないが、使うメリットの方が大きいと考えて使えるようにする、ワクチンも海外で開発されたらすぐに使えるようにすべきだ。発病した人を閉じ込めても意味がないし、たくさんの患者さんが出てくることを想定し、次のステップにいかなければいけない」(同)。
一方、感染者数に関しては、中国政府が正しい情報を隠蔽しているのではないかという見方もある。武漢市の周先旺市長がテレビのインタビューに「情報公開が遅れた点については皆さんに理解していただきたいのだが、これは伝染病なので伝染病防止法というものがあり、法に則って情報公開をしなければならない。地方政府なので、この情報を得た後も(国から)権限を与えられてからでないと公開できない」と答えた映像も、こうした見方を裏付けるものとして流布している。
2009年の新型インフルエンザの流行のときに北京にいたという戦略科学者の中川コージ氏は「中国政府としては対策をしている発表はしていた。しかし実際のところ、我々に対しては水銀の体温計が配るだけだった。また、中国人の感覚として、政府も信じられないし、医療費も高いしという感じがある。それが拡散する要因にもなっていると思う。今回、春節の期間を延ばしたり、人民解放軍まで入れて1200万人都市の武漢市を封鎖したりするというのは前代未聞だ。中央政府がそこまでするということは、発表されているレベルではないのではないか。10万床の作るという話にしても、最低でも10万人はいると言っているようなものだと思う」との見方を示す。
「北京中央としては、“武漢が隠蔽した”という世論を醸成したいので、武漢市長と書記、湖北省の省長と書記を『花より男子』の“F4”になぞらえ、馬鹿にしたような世論を形作ろうとしている。ただ、中央政府は情報を上げてほしいのに、地方が忖度をして隠蔽をしていた可能性もある。習近平以前にはフリージャーナリストを通してチェック機能が働いていたが、情報統制を進めた結果、そうした情報が出なくなってしまった。そこは北京中央の自業自得とも言える。その上で、反体制派は陰謀論を流そうとするし、中国側は宣伝工作をして美談にしていきたい。中国に関する情報は、そういう、両方のプロパガンダが入っているというイメージは持っておいたほうがいい」。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)
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