いわゆる“ブラック校則”や「夜9時以降はスマホ禁止」「1日1時間以上はゲーム禁止」を盛り込んだ条例案。さらには従業員のマスク着用禁止などの独自のマナー・ルールと、とかく共同体内のローカルルールや禁止事項があったり、“暗黙の了解”を求められがちな日本社会。
社会学者の橋爪大三郎・東京工業大学名誉教授は、人々の行動パターンを「世界の大文明の人々」と「日本人」とに整理してみると見えてくるものがあると話す。
「世界の多くの人々は、自分と他の人は違うと思っているので、自己主張するところから始める。ただ、お互いに主張するだけだとトラブルになるのでルールを作っている。ヨーロッパ、アメリカでいえば法律だ。イスラム世界だったらイスラム法。みんながそれに従うので大丈夫。これは逆に言うと、それ以外のものには従わなくていいということでもある。そのようにして社会が設計されている。一方、日本人には法律よりも周りやルールに従っていればいいという考え方が強い。そしてみんなが勝手にルールを作るので、禁止だらけになってしまう。こんな変な国は世界を探しても、おそらく日本しかない」。
橋爪氏によると、こうした日本人の特性には歴史が大きく関わっているという。
「平安時代、中国からせっかく立派な法律を入れたのに、藤原氏をはじめとして、政府の主要メンバーがそれに従わない。税金も払わず、国有地を私有地にしてしまう。そして政府を丸ごと私物化してしまう。こういう現象が起こってから、2、300年そのままになった。そうすると社会が壊れ、法律を制定する権限のない人が法律のようなもので従わせるようになる。辞めた天皇が政府を作る院政もそうだが、そんなことをしていいのか。さらに鎌倉幕府ができるが、すでに政府があるのに、もう一つ政府ができる。これもおかしい。農民たちは“これは政府なんだろうか。税金を払いたくない”と思う。そこで村のルールを作り、税金を負けてくださいという団体交渉をする。これが一揆で、江戸時代には村請になり、村の中のルールで分配していく。その結果、国全体の法律がどこから来ているか、どういう関係にあるのかは分からないが、自分がコミットしている集団のルールには従うようになる。それも明示的なものではなく、暗黙のもの含めてだ。校則がまさに典型的だ」。
ラッパーのKENが「特にSNSが始まってから、お金を稼ぐとか、自分の強い部分を世の中に公開していくようになったと思う。そういう自己主張していく態度は、欧米のヒップホップ的な部分と共通するような気がする」、宮澤エマは「ルールに対して反発してみせる若い人が多い気がする」と話すと、橋爪氏は「日本人の国民性は変化し、ヨーロッパ風になっている。にも関わらず、ルールの守り方という点では昔のままだ」と指摘する。
「人間にはひとりひとりに権利がある。違いがある。それを尊重し、みんなで法律を作る。それが300年前に始まる近代社会だ。憲法もまさにそうだ。日本人が下手なのは、このルールを作ること。まずは外国のことをよく知り、自分たちはそれと違うということを分かることだ。それができずに日本はたくさん失敗をした。戦争もそうだ。“日本は独特だ”という認識が表面的過ぎる。それを日本のうるわしい伝統だと言う人もいるかもしれないが、私はそうは思わない。自己主張するのは入り口で、このルールの代わりにこのルールはどうかと、みんなで作ることができてはじめて他者のことを考えることができる」。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)
▶映像:法律よりも周りに従う!?禁止大国日本
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