1月31日にフィリピンで開催されたONE Championship「ONE: FIRE & FURY」に修斗王者の佐藤将光(坂口道場)が参戦。クォン・ウォンイル(韓国)に1ラウンド、バックチョークで鮮やかな1本勝ちを収めた。ONE3連勝、自身のキャリアでも6試合連続フィニッシュ勝利と好調ぶりを遺憾なく発揮し、ONEバンタム級戦線での存在感を示した格好だ。
日本でも指折りのMMAファイターの佐藤だが、普段は工事現場の測量の仕事をする傍ら、格闘技に打ち込むストイックな生活を続けている。いわば会社員ファイターだ。会社の社長はDDTに所属するプロレスラーの坂口征夫。坂口もまた、格闘技と仕事を両立するファイターという共通点から、働きながら佐藤の格闘技に打ち込む環境をバックアップしている。
佐藤は世界的なデザイナー・佐藤孝信の息子という華やかな一面も持つが、横浜の坂口が提供しているプレハブの社宅暮らしをしながら、格闘技にのめり込むように頂点を目指している。
近年は修斗とONEで勝ち星を重ねてきた。特にここ3年はパンチやグランドでのパウンドで確実に相手を仕留めてきた。ONEの舞台でも善戦しながら、独特の判定ルールに泣く日本勢が多い中で確実に結果を残し、昨年10月の日本大会での「修斗vsパンクラス王者対決マッチ」でもパンクラス王者で下馬評が高かったハファエル・シウバをTKOで葬った。いわば名実ともに日本のバンタム級最強の名のもとで臨んだONEでの2020年初戦だ。
一方、クォンは長身のストライカーで、日本人の今成正和や松島こよみに一本負けを喫しているが、一発の打撃からのラッシュ力には定評がある。しかもフェザー級からバンタム級へ階級を下げての初陣、やはり一度当てたら猪突猛進で相手を徹底的潰す闘争心むき出しのスタイルは要注意。佐藤も「リーチがあって打撃がある苦手なタイプ」と警戒していた。
クォンのパンチに対して、佐藤は、ローでスネを狙うカーフキック。クォンのモーションからは、佐藤の蹴りの入り際にパンチを当てる戦術が透けてみえる。対する佐藤も単調ではなく、蹴りから組みでヒザを一発、距離を取りながらの右ストレート、強烈な左ローのコンビネーションと攻撃は多彩だ。
打撃戦の攻防でも、佐藤がクォンのパンチをフェイントでかわすなど相手が良く見えてる。相手にパンチを見せながら高速タックルで脇を刺すと一気にケージに追い込みテイクダウン。さらに右足を絡ませバックを取るが、ここはクォンもパンチなどを当てながら回避する。
再びスタンドの攻防。クォンの強い一発がかすめるヒヤリとする場面もあったが、強い左のアッパー、ストレートなど、佐藤はストライカーとしての強さも見せた。
この日の佐藤は一方的な打撃戦からタックルへと散らす戦術も的確だった。組みや寝技が得意ではないクォンに対して容易にバックを奪うことに成功すると、ねちっこく太腿へのヒザ攻撃で崩し、後ろに回ると背後からのパウンドでガードを解いてリアネイキドチョーク。一気に締め上げるとクォンからタップを奪った。
この日ゲスト出演したSKE48の松井珠理奈も佐藤の試合を観て「色々なことができるんですね。バックに行くのも締めに行くのも速いし、全部速い、スキがない」と、その戦い振りに驚いた様子だった。
ONEでは無傷の3連勝および3連続フィニッシュと結果を出したことで、次戦以降のタイトル戦も現実味を帯びてきた。長らく現王者に君臨するビビアーノ・フェルナンデス(ブラジル)、さらにケビン・ベリンゴン(フィリピン)の2強状態が続いたバンタム級戦線に登場した「第3の男」に期待したい。